研究課題
基盤研究(C)
病院や医療機関などのサインにおけるピクトグラムやイラスト、色などの視覚情報と文字情報の相互作用に注目し、分析することを通して、継続して研究を進めている日本語特有のビジュアル・リテラシーの解明を更に進める。その上で、異なる文化的背景の人々や高齢者にとっても「わかりやすい医療サイン」のあり方について検討する。医療情報は、緊急時と平時の双方に関わる重要情報である。「やさしい日本語」と<やさしい日本語>の考え方に、新たにビジュアル・リテラシーの観点を加える必要性を提案し、その成果をもとに、「わかりやすい医療サイン」の開発を行い、「安心安全な多言語多文化共生社会日本」の構築に貢献することを目指す。
昨年度は、欧米圏での海外調査ができなかった。しかし、岩田氏による台湾での言語景観調査の情報が追加された。進捗状況としては、代表者は、継続して首都圏および地方自治体の「やさしい日本語」のコロナ関連情報のイラストやピクトグラムを収集した。特に昨年度は、新型コロナの位置付けが変更され、観光客が戻ってきたことを受け、外国人観光客が事故や災害にも対応できるよう、自治体の多言語表示の調査により得たデータと合わせ、空港や駅などのサインやピクトを収集した。それらを昨年から設置しているDropboxに格納しメンバー全員に活用できるようにした。これらをもとに、SDGsの観点から、「空間デザイン」をテーマに、6月の日本言語政策学会の大会でパネルを企画し発信した。続けて9月には、「オーバーツーリズム」の問題が顕在化する中、SDGsの「住み続けられるまちづくりを」との関連で、「空間デザイン」の公開シンポジウムを京都で行い研究を深めることができた。岩田一成氏は、医療従事者へのやさしい日本語研修を継続しており、さらに、自治体での防災に備えた「やさしい日本語」研修の講師も務めている。臼山氏は、「やさしい日本語」マインドを引き継ぎ、「やさしいロシア語」「やさしい中国語」など、多くの外国語の研究へと発展されている。多言語多文化教材開発リードしている横田和子氏とメンバーの岩坂泰子氏と共に、 マルチリテラシーの教育学の観点からことばに表せない思いを伝える身体表現の研究を進めており、ビデオ教材を開発中である。
2: おおむね順調に進展している
進歩状況は、やや遅れている。理由は、1年延長したことで、日本国内のデータは着実に集まっている。メンバー各自が多様な学会での発表や論文執筆を行なった。しかし、代表者が内外のタスクが増え多忙を極め、体調を崩したため、海外調査に出ることができず、メンバーそれぞれの研究成果を持ち寄り、全員での研究会や学会発表、意見交換などの機会を持つことができなかった。そのため、それぞれの成果の統合ができていない点があげられる。
コロナの影響で1年延長し、最終年度となる。集まったデータの分析を主に行い、日本語のビジュアルグラマーの解明を行い、医療現場と災害関連現場に還元したいと考えている。さらに、マルチリテラシーズ教育教材の開発と外国語教育、国語教育との連携という次のテーマに繋げたい。6月には、日本言語政策学会での大阪万博会場における多言語状況のパネルが採択されている。これらの日本言語政策学会のメンバーで執筆した本の校正が最終段階に入っている。国語科教育研究者との文字コミュニケーション研究も進めており、それらを国語科教育と日本語教育へと還元し、日本が多様性に拓かれた持続可能な多文化共生社会となるようなマルチリテラシー教育研究とコミュニケーション研究へとつなげたい。
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