研究課題/領域番号 |
20K00829
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
藤井 数馬 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (50413779)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 多読 / 語彙サイズ / 電子図書 / コーパス / 付随的語彙学習 / コア |
研究開始時の研究の概要 |
筆者による先行研究において、年間で5万語程度の多読では学習者の語彙サイズは多少の伸びを示したものの、その効果は限定的だった。先行研究では多読が語彙サイズ伸長のための効果的な学習方法と指摘されているが、その効果を高めるための指導を探究する必要性が示唆された。そこで本研究では、先行研究よりも読語数(量)を増やす、語彙サイズを伸ばした学習者に共通して見られる英語の読み方や選書傾向(質)を究明する、多読開始時の語彙サイズ(語彙力)による影響を分析することを通して、多読による付随的語彙学習効果を高める要因を多角的に究明し、指導指針を策定する。
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研究実績の概要 |
本研究3年目に当たる令和4年度は、新型コロナ感染症対策として勤務先の授業は週4日が対面、週1日がオンラインで行われることになった。対面授業で行った2クラスにおいて、多読を採り入れ学期の最初と最後に語彙サイズテストを実施した。令和3年度の実施時と同様、学期の最後に行った語彙サイズテストの後には英語の読み方などに関する質問紙調査を行い、英語の読み方の質の観点からも語彙サイズ伸長の要因を探れるようにデータ収集した。 授業での指導時間は令和3年度と同様とした。具体的には、1学期間(4月~7月)、筆者の英語授業内で週に1回、15分程度の多読の時間を取るとともに、学生には授業外でも自律的に英語を読むように繰り返し声をかけた。また、多読が語彙力をはじめとした英語力向上にどのようにつながるのかを説明することで動機づけを高めるようにした。 一方、授業内多読後の語彙指導方法のみ令和3年度と令和4年度で変えた。令和3年度の授業では、本の中で出会った気に入った語彙や表現、覚えたい語彙や表現を共有し合う活動を授業内多読後に毎回入れて語彙への意識を高める指導を組み合わせたのに対し、令和4年度の授業では、授業内多読後に語彙への注意を深めるような明示的指導は行わなかった。この指導方法の違いは、未知語に対して意味に注意を向ける学習者の方が、意味を気にせず読み進める(未知語を読み飛ばす)学習者よりも語彙サイズが大きく上昇した筆者の先行研究に基づくものである。すなわち、語彙への注意を向けさせる直接的な指導を行う場合と、そうでない場合の間で、語彙サイズ伸長に差があるのかを検証し、効果的な多読指導指針に導くためのものである。 研究期間を1年延長し、研究の最終年度となる令和5年度では、令和3年度、4年度に実施した語彙サイズテストの分析を行い、論文や学会発表を通して公表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画よりもやや遅れている理由は、研究1年目に新型コロナ感染症対策として授業がすべてオンラインで行われたことによる。学生は極力大学に来ないように指示され、当時は電子図書で多読ができる環境が整っておらず、紙媒体で整備されていた多読図書を利用できず、多読指導を行うことが不可能となった。本研究は、授業内外での多読指導を1セメスター間行う中で、語彙サイズや語彙力の変化を分析するものであり、1年間多読指導ができなかった分の進行が計画よりも遅れている。 しかし、令和2年度には研究計画を大幅に、且つ、本研究遂行に寄与するように柔軟に変更し、電子図書(Maruzen eBook Library)で多読が行える環境を整備するとともに、主に多読の初期段階に用いる多読図書をコーパス化することができた。この研究計画の変更により、オンライン授業やハイブリッド授業であっても多読指導ができるようになり、多読が付随的語彙習得に与える影響をコーパスから分析することができるようになった。実際、ハイブリッド授業形態となった令和3年度において多読を採り入れることができ、語彙サイズテストも実施することができた(語彙サイズテストは対面で実施)のは、この電子図書整備に依拠するところである。そして、この実践結果を当初予定とは異なる観点から分析して論文としてまとめることができ、令和5年度中に出版予定である。 本研究期間を1年間延長し、最終年度となった令和5年度では、令和3年度、4年度に実施した語彙サイズテストの結果分析を行うとともに、語彙への注意を向けさせる直接的な指導を行う場合と、そうでない場合の間で、語彙サイズ伸長に差があるのかを分析、考察し、学術論文および学会での口頭発表としてまとめる。この1年間の研究期間の延長により、当初の計画通りに研究が進む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度では、令和3年度の学生群と、4年度の学生群の間で、語彙サイズテストの結果に差があったのかに関して、学生の読書量、読み方の質、元々の語彙サイズの観点から分析し、考察を行う。同時に、多読が語彙習得に与える影響に関する学術論文を読み進め、本研究結果を国際的な多読研究の中で適切に位置づける。 また、本研究結果から、多読を通して語彙サイズを伸ばすための指導指針を探究し、その指針は論文、学会での発表、刊行物などを通して学界だけでなく一般市民にも届くように努める。
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