研究課題/領域番号 |
20K00911
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03010:史学一般関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黛 秋津 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00451980)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 黒海 / ロシア / オスマン帝国 / ウクライナ / 領事 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、黒海とその周辺を一つの地域ととらえ、従来の研究では個々の問題として主に各国史の文脈で研究がなされてきた、18世紀後半の黒海周辺で生じた様々な人の移動に関する問題を、この地域をめぐる大国間関係をの変容を踏まえながら、相互の関連を意識し、「黒海地域」という枠組の中で考察しようとするものである。西欧・ロシア・オスマンの複数の一次史料を用いて実証的に跡付けつつ、近代移行期の黒海地域の社会変動をマクロな視点で考察する点が本研究の特色である。
|
研究実績の概要 |
2022年度後半に、ウィーン、イスタンブル、ブカレストの3カ所で史料調査を実施した。ウィーンではHaus-, Hof- und Staatsarhivにおいて、ワラキア・モルドヴァ駐在ハプスブルク領事とイスタンブル駐在使節の報告を調査し、ワラキア・モルドヴァの社会や、ハプスブルク帝国の黒海通商に関する動きを具体的に示す史料を収集することが出来た。イスタンブルでは、総理府オスマン古文書館(Basbakanlik Osmanli Arsivi)において、18世紀半ば~後半の、黒海をめぐる対ロシア関係の帳簿や文書を調査し、往来する外交使節や商人などに関する史料を収集した。ブカレストでは、国立文書館(Arhiva nationala)で、オスマン政府とワラキア・モルドヴァ両公国関係に関するオスマン語史料の調査を実施した。
以上の調査により収集した史料の分析を進め、18世紀半ば以降のロシア・ハプスブルク帝国の黒海進出をめぐる外交関係、および、両帝国の進出の対象となったワラキア・モルドヴァ両公国とオスマン帝国との宗主・付庸関係について、成果の発表を準備しているところである。
一方、2022年にはロシアによるウクライナ侵攻という大きな問題が生じ、穀物輸出などの問題で黒海にも関心が高まった。こうしたアクチュアルな問題について、これまでの研究成果を踏まえ、歴史的観点からウクライナ戦争に関する論考を、論集『暴力から読み解く現代世界』などに発表し、本研究の成果の一端を社会へ還元することを試みた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究が開始された2020年4月より、新型コロナのため長らく海外の文書館・図書館における文献調査を実施できず、刊行史料やウェブ上で入手可能な史料を用いて何とか研究を進めてきたが、自ずと限界があり、当初の計画に比べ大幅な遅れが生じていた。そのため当初3年間を予定していた研究期間の1年延長を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
海外での史料調査が実施できなかったことから研究が大幅に遅れ、1年間の研究機関の延長を余儀なくされたが、昨年度に引き続き海外調査を実施し、遅れていた研究の挽回を試みる。今年度は、18世紀末以降、本格的に黒海通商への参入やバルカンへの勢力拡大を行ったフランスに注目し、その黒海地域進出政策や、オスマン帝国をはじめとする他の帝国との外交に関する調査をパリにおいて実施し、その解明を目指す。また、黒海地域の人の移動に関して、18世紀末のブルガリアのキリスト教徒の黒海北西沿岸地域への移住に関する調査をブルガリアとモルドヴァで実施する予定である。そして、最終年度であるので、これまでの研究をまとめ、成果を公表することを目指す。また、引き続き、現在進行中のウクライナ紛争についても、本研究を踏まえた歴史的観点からの論考を発表したい。
|