研究課題/領域番号 |
20K00920
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03010:史学一般関連
|
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
澤柳 奈々子 東洋大学, 文学部, 教授 (60647436)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | ギリシア / 難民 / 小アジア / 住民交換 / 日本船 / 記憶 / 日比左三 / アテネ / カヴァラ / 正教徒 / スミルナ / 語り / 聞き取り調査史料 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、難民の経験がどのように人類の記憶として残るのか、いかにして歴史として記述されるのかという大きな問いを、実例に即して明らかにする試みである。具体的には、第一次世界大戦直後にはじまったギリシア・トルコ戦争で発生した難民に焦点を当てる。彼らは国際連盟監視下のもと、世界史上初めて実施された「強制的」住民交換の対象となった人々である。本研究では、特に小アジアのギリシア系正教徒難民に注目する。彼らがみずからの体験――具体例として1922年の日本船による難民救済がある――をいかに記憶し、それがどのように歴史として再構成されていったのか、その過程を探ることを目指す。
|
研究成果の概要 |
口承に基づく歴史研究では、客観性が担保されるかが常に問題となる。1922年の小アジアからの脱出時に、日本船によって救助されたというギリシア系正教徒難民の記憶は、欧米の史料からは実際におこった出来事と判断されるが、日本側の史料の欠如から、歴史的「事実」として完全に実証されたとは言い難い。救助に直接従事した日本人の側の証言があってはじめて、彼らの記憶は、歴史的「事実」と見なすことができるだろう。一方で、この記憶を歴史的事実として語り継いでいる難民の子孫たちにとっての「歴史」のあり方を歴史学のなかでどのように扱うかは課題として残されている。
|
研究成果の学術的意義や社会的意義 |
第一次世界大戦直後に始まったギリシア・トルコ戦争時に発生した難民の記憶に注目して、。人々の共通の体験が記憶として定着し、歴史として記述されていく過程とその具体的な内容を検討した本研究は、バルカン戦争から1920年代末までの時期に東地中海で見られた人の大移動の全体像を解明する一歩となるだけでなく、今日の難民問題研究全般に対し興味深い事例を提供することになるだろう。さらに、ヨーロッパ史、オスマン帝国史、トルコ史、日本史、海運史を横断する本研究は、グローバル・ヒストリーの視野からこの時代を俯瞰する契機を与えるものとなる。
|