研究課題/領域番号 |
20K00928
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03010:史学一般関連
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研究機関 | 関西外国語大学 (2023) 京都大学 (2022) 国際日本文化研究センター (2020-2021) |
研究代表者 |
白石 恵理 関西外国語大学, 国際文化研究所, 研究員 (30816260)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 夷酋列像 / 松前藩 / 木村蒹葭堂 / 賢聖障子 / 松浦武四郎 / 平沢屏山 / ブラキストン / シーボルト / 蝦夷 / アイヌ / アイヌ絵図 / 松平定信 / 松浦静山 / 異人観 / 写本 / 蝦夷漫画 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、蝦夷/アイヌのイメージとして一世紀にわたって国内外に伝播した蠣崎波響筆〈夷酋列像〉を取り上げる。その謎に満ちた制作事情の裏側に迫り、一つのアイヌ表象が歴史にもたらした意味について再考することを目的とする。〈夷酋列像〉については従来、美術史的観点からの図像研究や、民族学的視点によるアイヌの具体的風俗慣習との比較研究など、原画を対象とした研究が主流であった。本研究ではこれまでと視点を変え、主に〈夷酋列像〉の「写し」を中心に調査研究を行う。図像を美術史的側面からだけではなく、当時の政治・社会・文化状況を俯瞰した総合的視点から検証したい。
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研究実績の概要 |
本研究の当初の目的の一つであった〈夷酋列像〉の制作意図とその背景については、拙論「見立てと写しのアイヌ戯画―メディアとしての〈夷酋列像〉」(稲賀繁美編著『映しと移ろい―文化伝播の器と蝕変の実相』花鳥社、2019年)、“Fictitious Images of the Ainu: Ishu Retsuzo and Its Back Story” (Japan Review, no. 36, 2021) につづく第3稿「松前藩の絵画戦略―〈夷酋列像〉と京都」(『近世京都』第5号、2022年9月)によって、ある程度解明できたのではないかと考えている。締めくくりに当たる後半2年間では、〈夷酋列像〉のその後の展開・派生として、主に以下の3つのテーマに絞って研究し、論文を執筆する予定である。①松浦武四郎による〈夷酋列像〉模写の展開と、シーボルトを介した海外伝播、すなわち〈夷酋列像〉の模写を含むアイヌ絵をオールカラーで取り上げた書籍Ainos(1892、ライデン)の解題。②同書の扉絵として大きく掲載されたアイヌ絵師・平沢屏山の作品をモデルケースに、当時のアイヌ表象に対する西洋側の評価と関心を分析(平澤屏山と、同時代に函館で活動していたブラキストンとの関係にも言及)、③幕府老中・松平定信や徳島藩主・蜂須賀治昭ら大名の周辺で〈夷酋列像〉の模写を行った御用絵師住吉広行とその弟子・渡辺広輝らの活動状況。その準備として、23年度は主に②に関連し、函館市中央図書館と市立函館博物館で、平沢屏山の作品を熟覧するとともに、ブラキストン関連の資料調査を行った。また、そのほかの文献も参照しながら、関係年表の作成等、執筆準備を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度から22年度のほぼ3年間についてはコロナの影響により調査活動が制限されたため、研究計画の変更を余儀なくされたが、当初からの大筋のアウトラインは維持できている。拙論「松前藩の絵画戦略―〈夷酋列像〉と京都」により〈夷酋列像〉ゆかりの人々の関係性や制作事情について一つの把握できたため、本作品の写し、ならびにその後のアイヌ表象の研究へとおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度においては、松浦武四郎記念館・北海道博物館・徳島県立博物館等で調査を行うとともに、学会誌または機関誌(査読誌)への投稿、研究発表を行う予定である。上記投稿を含め、最低でも論文3本をまとめる予定。それにより当初の実施計画はおおむねカバーできると考えているが、唯一、〈夷酋列像〉原本のフランス・ブザンソンへの流出経緯の探究については、時間的・予算的制約から別課題とする。
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