研究課題/領域番号 |
20K00940
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
前村 佳幸 琉球大学, 教育学部, 准教授 (10452955)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 近世琉球 / 廟制 / 寝廟 / 原廟 / 尚家文書 / 聞得大君 / 昭穆 / 五礼通考 / 廟議 / 宗廟 / 太廟 / 神主 / 円覚寺 / 崇元寺 / 料紙の顕微鏡分析 / 古文書修復 / 料紙から見た薩琉関係 / 近世琉球の文書と料紙 / 百田紙・芭蕉紙・竹紙 / 文書修復と顕微鏡分析 / 近世琉球文書の再現的抄造 / 琉球家譜と家統継承 |
研究開始時の研究の概要 |
近世琉球における文書・典籍の料紙について、未翻刻・翻刻を問わず原本を調査し、所蔵機関・所有者に提案して修復事業を実施する。簀目・糸目・板目・角筆など表面観察だけでなく、紙片を電子顕微鏡で観察し、原料植物や填料の有無を確認しデータとして蓄積する。さらに楮紙・芭蕉紙と竹紙を抄造し、近世の製法について検証する。楮紙については、首里や先島に加えて薩摩産も視野に入れることで、それぞれの地域性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度も新型コロナウィルス感染症拡大をめぐり実地調査については最小限の実施となった。九州南部から先島地方における古文書・古典籍類に対する料紙については、奄美市立奄美博物館にて調査を実施した。小湊東郷家寄託資料では和刻本『近思録』『史記評林』など、薩摩藩治下の与人層の教養を示す19世紀前半以降の蔵書であることを確認した。奄美大島など島内での和紙抄造については、民具や伝承の観点から支援を仰いだ。先島地方については、宮古島市立総合博物館と八重山博物館での調査について協議する機会を持ち、アオガンピを料紙とした文書検出の重要性、そして修復の機会を利用した料紙の科学的分析の意義について関係者の理解を得た。また、状態の比較的良好な資料について那覇市歴史博物館より図像データを取得し、家譜以外に士族層が所持・保管してきた文書・記録類を通して、王府との関係や士族社会における養子縁組や家内祭祀など事例研究を行う方向性を得た。 近世琉球の史的理解を深めるために文献史料の読解に取り組んだ。第一の課題として「琉球国要書抜粋」を主たる史料として宗廟祭祀制度をめぐる王府の議論について引き続き検討し、さらに『中山世譜』(沖縄県立博物館・美術館所蔵)における蔡鐸本・蔡温本の両系図を読み解くことにより、その認識の差異や変化について明らかにした。第二の課題として、王朝末期における宗廟祭祀をめぐり、前年度実施の「咸豊八年より同治元年迄 僉議」(尚家文書第四四七号)における「廟制求教」の検討を受けて、同史料における首里系の王府高官と久米村学識層による僉議部分(和文)を読解し、中国的な廟制を琉球の慣例や実態に整合させるための主張や論点を明らかにした。第三の課題として、「御廟制諸書并吟味書」(尚家文書第二四号)における『文献通考』『五礼通考』など中国の典拠を逐一確認し、習合的に活用しようとする基本的姿勢を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症拡大が持続し、研究代表者の勤務校も影響を受け、とりわけ先島地方での行動は自重すべき状況となり、料紙調査や各公蔵機関収蔵資料の調査も広範囲に行うことができなかった。ただし、近世琉球史の分野では、尚家文書など史料の読解が進展し、宗廟や家譜そして跡目継承手続きなど首里王府が整備してきた制度的側面について具体的かつ体系的な理解を叙述する展望が開けている。
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今後の研究の推進方策 |
近世琉球末期の国王祭祀をめぐる尚家文書第四三八号・四四三号・四四七号における僉議史料を翻刻読解する。首里系士族で官生として北京の国子監で学んだ東国興(津波古政正)に焦点を当てつつ典拠を含め総合的に検討し、その成果を論文として発表する。さらに尚家文書の四三二~四三六号「跡目僉議」は地頭職と知行高の継承に関する史料であり、全体の内容把握と読解を進める。また、新城家文書・小橋川家文書(那覇市歴史博物館提供)について家譜のみならず家伝の文書類を合わせ検討する。これらの史料の内容面を複合的に分析することにより、首里王府と士族層との関係について理解を深める。 料紙については、まずは首里王府が久米島・宮古島・石垣島に設置した蔵元の業務運営にあたった役人の「勤書」を調査対象として推進する。合わせて「位牌書付控」や「祭礼書」など士族層の祖先祭祀に関する文献を調査する。『沖縄の家譜―歴史資料調査報告書Ⅵ』(沖縄県教育委員会、一九八九年)著録の423部の家譜と付属資料についてリストを作成して所在調査を行う。研究代表者所属機関の琉球大学研究基盤センターの電子顕微鏡VFX-7000(キーエンス製)の操作習熟をはかる。その上で、承諾を得られた資料について、装丁直しや修復・副本作成による保存対策をはかり料紙サンプルを入手する。 奄美大島については、津島家文書や基家文書の「断簡」など情報収集に努めるとともに、19世紀後半の「大嶋之一条」原本が東京大学史料編纂所にあるとのことなので実物を閲覧する機会を得たい。
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