研究課題/領域番号 |
20K00962
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
伊藤 真実子 学習院大学, 文学部, 研究員 (40626579)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 在外日本関連文物 / 万国博覧会 / 博覧会 / 博物館 / 展覧会 / 日本展示 / 在外コレクション / 輸出工芸品 / 日本関連文物展示 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、20世紀前半までに海外で収取された日本関連文物と史資料、日本展示について調査研究を行なうことで、20世紀前半までに開催された欧米における日本の文物展示についての全体像を明らかにし、基盤情報として整備、公開すること課題とする。17世紀以降20世紀前半、すなわち「開国」以前も調査研究対象として19世紀前半以前の在外日本関連文物コレクションや史資料を活用することで、日本史の時代区分の影響により、近世/近代として分断され、これまで連続した研究が不十分であった「開国」以前からの欧米における日本に関する展示について長期的視野からの研究を最重要課題とする。
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研究実績の概要 |
本年度はこれまでの調査から作成した「幕末・明治初期の万国博覧会と佐賀藩ネットワーク -輸出陶磁器を中心に」(『1873年ウィーン万国博覧会』(思文閣出版、2022年)所収)が刊行され、2023年4月8日(土)のzoom開催によるハプスブルグ史研究会4月例会の書評でとりあげられた際には質疑応答にて拙稿の内容や着眼点、および着想に至った経緯を中心に報告した。 また『ハプスブルグ事典』(丸善出版、2023年1月)にも「ウィーン万国博覧会」の項目を執筆した。 2023年3月17日ボストン開催のAAS(Asosiation for Asian Studies)に永原宣准教授(MIT)がオーガナイズするパネルOrientalists, Peace Activists, and Diplomatic Wives: China and Japan's Informal Diplomats in Europe, 1870s-1950sに、 Xia Shi教授( New College of Florida)、Ke Ren,准教授(College of the Holy Cross) 、ディスカッサントのJessamyn Abel教授( Pennsylvania State University)と参加し、19世紀後半から20世紀にかけて形成された在外日本関連文物コレクションと携わった現地の収集家、彼らと知友を得ていた当時欧米に留学および仕事で派遣された日本人に関する報告The Extracurricular Activities of Japanese Students and Government Officials in Europeのため、原稿およびPPTを作成したが、参加直前に家庭の事情により渡航が困難となり、永原宣准教授に代読報告にて参加し、他の参加者へは事前にコメントを送った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度もコロナ禍により当初予定していた国内外(ドイツ・オランダ・長崎など)での調査ができなかったが、これまでに続けてきた各国に残る日本関連文物コレクションについて調査をおこない情報の収集につとめた。本年は昨年度に続き、南蛮貿易および江戸時代の輸出品、天正遣欧使節団をはじめとした江戸時代初期以前の使節団関連文物、そしてキリスト教の宣教および殉教を伝える情報としての文物を調査した。 また、AASの年次総会のパネルにて、The Extracurricular Activities of Japanese Students and Government Officials in Europeと題し、開国以後、とりわけ明治維新以降にヨーロッパを訪れた日本人学生や政府関係者が、自身の専門外の日本の事柄について英語で発信する機会を設けていたことに焦点をあて、そのような人物として、1878年パリ万博の日本側事務局長であり、かつ忠臣蔵の物語に基づいた「Yamato」という演劇を執筆した前田正名、1881 年から 1886 年までケンブリッジ大学で法律を学びつつ『源氏物語』を抄訳し、後に政治家、日露戦時下では広報外交を担った一人である末松謙澄に焦点を当てて報告した。この報告を作成するにあたり、19世紀後半に欧米で創作、上演された小説、音楽、劇、オペラなどについて調査し、基盤情報データを整理した。 近年、「殉教」をテーマにした日本関連オペラについての研究が盛んであるが、当該時期の日本関連演劇、オペラについて調査をおこなった。また、当該時期の人々にとっては、「本物」かどうかよりも、日本について何かしら触れる機会がありうるということが、日本関連オペラが多くつくられた遠因と考え、16世紀以降の日本からの陶磁器、漆器、着物などの文様や仕立てを模倣した品々の流行や広がりについても調査をすすめた。
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今後の研究の推進方策 |
「殉教」関連情報のヨーロッパへの伝播とその二次創作としての演劇、史劇や関連書籍などについての調査を中心に進めた。その結果について、関連する文物の展覧会の紹介と合わせてHPで随時報告しつつ、今後も研究会等で報告する予定である。 近年、17,18世紀における日本におけるキリスト教宣教者や信者の「殉教」に関する史劇・オペラへの研究がすすみ、その作品の内容や背景についての研究が充実している。一方で、少なくない数の演劇、オペラが上演された背景には、観客側の受容についても考察されるべきであるが、どれほど身近に日本関連の文物や情報があったのかという周辺状況への総合的見地への見解への視野は欠けている傾向がある。当該時期の日本からの輸出品の実際の数量は、確かに開国以後と比べて少ないが、当時は、陶磁器、着物、漆などの日本製品の現地生産(いわゆる模倣品)が作られていた。現在までの研究では、その由来、所蔵経緯などを含めて「本物の日本製」かどうかが注視されるが、本物の日本製かどうかよりも、日本のものを模倣品であっても手にしたいという当時の状況も考慮することが、当時の欧米における日本に関する意識や興味をより深く考察することができると考えるにいたった。そこで、本年度は、欧米における日本関連文物にくわえて、模造品に関しても調査対象として研究を広げることとする。 またこれまでの調査研究により、在外の日本関連文物コレクションの所蔵や、日本関連文物の欧米への渡った時期についての基盤情報がある程度完成しつつある。これを年表のようにみせたほうがわかり良いものと、国別のほうが良いもの、文物で分類した方が良いなど、さまざまな見せ方が考えられるが、どのようにすればより有意義に情報を公開できるか、多くの人が利用しやすいかなどを国内外の機関、個人のHPなどを参考にしつつ、本年度は更にすでに蓄積した情報の公開をすすめていく。
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