研究課題/領域番号 |
20K00974
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 (2022) 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構本部 (2020-2021) |
研究代表者 |
青山 宏夫 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 名誉教授 (00167222)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 地名 / 道 / 川 / 中世 / 歴史地理学 / 日本 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、実証的な地名研究を提示し、確かな歴史資料を獲得することを目的とする。そのために、地名が指し示す空間の自然的特徴・社会的機能・歴史的経緯に注意しながら、全国的に分布するカリヤドという地名を事例として、それらの個別的検討と全国的な比較によってその意味を追求する。これまでの研究によれば、関東地方及び東北地方では、カリヤドという地名は中世の幹線道路が河川を渡る地点に関係している。このことを全国的に検証し、中世日本における渡河のあり方や交通路の復元はもとより、交通ネットワークを基盤とする国家や地域社会を理解するための独自の資料を獲得する。
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研究実績の概要 |
地名辞典に掲載された小字一覧の網羅的な調査では、新資料が発見されるなど、これまでに大きな成果をあげることができたが、今年度は茨城県、福島県、宮城県、岩手県の4県について実施した。具体的には、『角川日本地名大辞典』に掲載された小字一覧から関係地名を抽出した。対象とした総頁数は361頁であり、1頁あたり約900件の小字が掲載されているので、概算で約32万件の小字を精査したことになる。 その結果、漢字表記では「仮宿」「狩宿」「借宿」「苅宿」と様々であるが、「カリヤド」と読む地名を福島県で7箇所、茨城県で4箇所、岩手県で2箇所、宮城県で1箇所の、合計14箇所を抽出することができた。このうち1箇所(茨城県)は新出資料である。限られた文献調査とはいえ、北関東から東北の4県にわたる広域において、約32万件の地名を検討することから得られた結果は、一定の信頼性を有するものと評価できる。 これまでの2論文で報告した関東・東北の諸事例、一昨年度の静岡県御前崎市の新出事例、昨年度の千葉県市原市の新出事例などの、東日本の事例での検討結果と比較するため、カリヤド地名分布域の西端にある三重県東員町の仮宿の現地を調査した。 当地は、員弁川左支流の戸上川(茶屋川)左岸の更新世段丘端に位置する。そこは、台地が川に向かってやや張り出した地点であり、対岸の更新世段丘と向き合って、戸上川河川敷の狭隘部を形成する。これまでの事例で指摘した、河川に向かって突き出た台地や微高地に位置するという「カリヤド」の地形的特徴を、この東員仮宿も有していることがわかった。また、この東員仮宿は、美濃・近江・桑名へ至る幹線道路の濃州道に沿い、戸上川の渡河点にもあたる(現在は茶屋橋が架かる)。これらの点を踏まえると、東員仮宿は地形的にみても交通路の点からみても、これまでの研究で指摘してきた「カリヤド」の特徴と一致することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に注意を払いつつも、遠隔地での現地調査を実施することができた。また、これと並行して、文献調査やオンライン等による情報収集およびそれらの検証等も引き続き進め、関連する小字の新資料を発見することができた。さらに、前年度に発見された新事例について引き続き調査を進め、学会での研究発表を可能とする段階に至っている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症への対応が緩和されつつある状況に鑑みて、遠隔地を含めた現地調査を実施するとともに、今年度に引き続き、文献調査とオンライン等での情報収集を進める。とくに、地名辞典等の小字一覧の網羅的な調査は有意義であることから、未調査地域の東日本および一部の西日本についても調査を進める計画である。あわせて、地形図、空中写真、各種文献・史資料等、オンラインで利用可能な資料等を積極的に活用して、「カリヤド」という地名の立地条件の検討を進める。これらの研究成果を取りまとめて学会等において発表する計画である。
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