研究課題/領域番号 |
20K01000
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
荒武 達朗 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 教授 (60314829)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 山東 / 宗族 / 僑郷 / 中国近代 / 台湾 / 同郷会誌 / 移民 / 国共内戦 |
研究開始時の研究の概要 |
広東・福建が華僑の故郷(僑郷)ということはよく知られている。これに対して近代華北の山東は、満洲・ロシア沿海州・朝鮮・日本に人びとを送り出した“北の僑郷”であった。その後、日中戦争・国共内戦を経て、国民政府の台湾移転に伴い台湾に移った人びとは一群の「山東人」という集団を形成した。本研究は20世紀後半における台湾に移った山東人と僑郷山東との関係を考察するものである。この研究を通じて漢民族が取り持つネットワークの姿が明らかになると考えられる。
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研究実績の概要 |
まずオンラインではあるが「大店莊氏與地域社會:一個北方宗族的構建與發展」(2022年7月28日、台湾漢学研究中心)で本研究課題の今年度に至る成果をまとめ、報告した。表面上は大きな宗族であっても実際の家族の規模は小さく、それぞれの構成要素の結びつきも中国南部に比べて弱いこと、また新たな結合を“血縁関係の再発見”という理屈で正当化していくプロセスについて紹介した。ほぼ同内容の日本語での講演を「清代華北の地域社会と宗族」というタイトルでも講演している(四国東洋学研究者会議、2022年12月3日)。 続いて「山東省地方志の氏族表について」という論文を発表した。氏族表とは主に清末民国期の一部の地方志資料に掲載されるもので、編纂の過程で地域社会の各所である程度名の知れた族姓に採訪を行い、彼らの来歴、族譜、祠堂、族産の有無などを調査し列挙したものである。本研究課題が対象とする山東省では2件確認されるが、ここでは山東省中部の氏族表に対して分析を加えた。これにより山東省の宗族が明初の移住伝説にアイデンティティを感じていることが再度確認された。ただしそれは史実ではなく、清代前半に紡ぎ出された「想像上の歴史記憶」であった。 最後に台湾の資料館より1980年代以降の外省人の大陸訪問“探親”に関する資料を入手することができた。これは国共内戦の結果台湾に逃れた人びとと、大陸の故郷に残った親族との間の再結合の模索を考察する上で貴重な情報を提供してくれた。2023年度に継続して分析を進めていく研究材料となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度もパンデミックの終熄が遅れたため上半期に予定していた中国での現地聞き取り調査ならびに香港中文大学での資料調査を実施できなかった。台湾での調査も資料館の長期閉鎖と開館時間の短縮により十全な調査は未実施である。それ故、これらの作業は2023年度へと回さざるを得なくなった。 ただし論文を1本、国内での発表を1本、台湾でのオンラインによる発表を1本行い、成果を還元している。 以上の点を考慮し、「やや遅れている」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は本研究課題の最終年度にあたるが、上述の通り進捗状況は「やや遅れている」。 この遅延を取り戻すために、2023年度前半に台湾の文献館(台湾図書館、中央研究院近代史研究所)にて法務部調査局資料、台湾居住の外省人関係資料、80年代後半以降の大陸訪問記録、眷村の歴史記憶に関わる文献などを調査、あわせて聞き取り調査を実施する。この台湾での調査によって、内戦期に中国山東省より台湾に逃れてきた山東人の台湾での実態、並びに山東本族との関係再構築についてより詳細な情況を知ることが出来ると考えられる。 続いて23年度後半では香港中文大学において中国大陸の1950年代の社会状況に関する文献(『中共重要歴史文獻資料彙編』『内部参考』)の調査を行う予定である。これらの資料は、台湾の法務部調査局資料とともに内戦期から中華人民共和国建国初期にかけての社会に関する詳細な情報を提供してくれる。 以上を総合することで20世紀後半の山東から台湾へ、そして再び山東へと環流する山東人の足跡を追跡することが可能となる。
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