研究課題/領域番号 |
20K01001
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小笠原 弘幸 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (40542626)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | トルコ共和国 / オスマン帝国 / ナショナリズム / ズィヤ・ギョカルプ / ケマル・アタテュルク / アタテュルク / 権威主義 / イスラム教 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、トルコ共和国建国期に焦点を当て、トルコ共和国に通底する政治文化である権威主義の性格を、国父アタテュルクを始めとした主要な政治アクターたちの言説から分析し、権威主義がトルコ社会にどのように浸透していったかを具体的政策を通じて検討する。分析に当たっては、オスマン帝国末期からの政治的・社会的連続性に留意し、かつ共和国政府の教化政策に対する民衆の受容と反発の事例にも着目する。それによって、従来の研究で主流であった「トルコ共和国期」の「政治指導者層」に限定された視点をのりこえ、権威主義がトルコの政治と社会に醸成されていった実相を明らかにするものである。
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研究実績の概要 |
2022年度は、オスマン帝国末期からトルコ共和国初期にかけて影響力を持った、トルコ民族主義のイデオローグであるズィヤ・ギョカルプの論考『トルコ化・イスラム化・近代化』の翻訳を進めた。この論考は、トルコ建国の父ケマル・アタテュルクに影響を与え、トルコ共和国初期の国家体制をつくる一つの理論的基礎を提示したものである。今回は、論考の第五章から第七章までを翻訳して訳注を付し、九州大学人文科学研究院の歴史学部門紀要である『史淵』160巻に投稿した(「ズィヤ・ギョカルプ著『トルコ化・イスラム化・近代化』翻訳(中)」93-112頁)。また、トルコ建国の父であるケマル・アタテュルクがトルコ独立戦争を通じて権力基盤を確立し、トルコ共和国初期に権威主義的体制を作り上げるまでの状況を、アリ・フアト・ジェベソイやキャーズム・カラベキルなど、独立戦争の元勲たちの手による回想録等の史料にもとづいて検討を進めた。彼らは後年アタテュルクと決裂し、冷遇されたことから、これら回想録の利用には慎重な比較検討が必要とされるが、複数の回想録の記述を比較し、当時の新聞などの同時代史料をあわせて検討することにより、可能な限り当時の状況を復元するように努めた。史料調査としては、研究代表者が指導する大学院生を夏期に二週間、トルコ共和国イスタンブルに派遣し、イスラーム研究センター等で史資料の収集を行った。その際、アタテュルクゆかりの地に開かれた博物館も調査し、アタテュルク表象や個人崇拝にかかわる検討材料を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、コロナウイルスによる渡航制限、および研究代表者の体調不良や育児等の私的な理由により、研究課題の進捗状況はやや遅れていると自己評価した。とはいえ、渡航制限も解かれ、また育児も成長に伴い負担が減りつつあることから、2023年度は十全なかたちで研究を進めることが可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、ズィヤ・ギョカルプ著『トルコ化・イスラム化・近代化』の翻訳を完成させる。そして、本研究課題の集大成として、ケマル・アタテュルクについての書籍刊行を目指す。
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