研究課題/領域番号 |
20K01007
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
川島 緑 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (50264700)
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研究分担者 |
菅原 由美 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 教授 (80376821)
久志本 裕子 (塩崎 裕子 / 久志本裕子) 上智大学, 総合グローバル学部, 准教授 (70834349)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | フィリピン / ムスリム / イスラーム / 東南アジア / 知識人 / キターブ / 思想 / ミンダナオ / ウラマー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は19世紀から1960年代までの南部フィリピン・ムスリム地域で読まれてきた現地語、マレー語、アラビア語のイスラーム書(写本、刊本)を主な資料とし、これらと関連する東南アジア他地域のイスラーム書と対照しつつその内容を分析し、南部フィリピンのイスラーム知識人の知的活動の実態と思想を明らかにする。さらに、彼らが東南アジア他地域や南アジア、中東のイスラーム知識人と直接、間接にどのような関係を取り結んでいたかを検討し、それを通じて南部フィリピンのイスラーム知識人の知的営為を植民地国家や国民国家の領域を越えて東南アジアから南アジア、中東に広がるイスラームの知的ネットワークの中に位置づける。
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研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、研究参加者が以下のテーマについて研究を進め、オンラインで進捗状況を報告し意見交換を行った。(1)19世紀から20世紀前半ミンダナオにおける存在一性論の伝来と受容(川島)、(2)18世紀ジャワにおける存在一性論(菅原)、(3)存在一性論の東南アジアでの広がり―ガザリとパレンバーニへの言及を中心に―(久志本)。 また、川島がフィリピンのマニラ、ミンダナオ島マラウィ市を訪問し(2月25日~3月8日、別財源)、国立ミンダナオ大学(マラウィ市)マミトゥア・サベール研究センター土着知識研究部元部長、ラビ・リワルン氏と共同で、マラナオ語アラビア文字表記のイスラーム神秘主義哲学書『天国の道』の講読、翻字、翻訳を行った。同書は19世紀初めにミンダナオに伝えられたマレー語イスラーム書2点を訳したものとされている。しかしそれらとの比較検討を通じて、同書がマレー語テキストを単に忠実に訳したものではなく、トピックの取捨選択や重点の置き方、説明の仕方に独自の工夫がなされていることがわかった。存在一性論がミンダナオでどのように理解され伝えられてきたかを示す資料として重要であり、次年度も同書の講読・分析を継続する。 また、同学歴史学科教員、アダム・アクマド氏らの現地研究者との研究打ち合わせ、意見交換を通じて研究ネットワークをさらに強化した。この協力関係に基づき、次年度、同学で国際セミナーを開催する予定であり、その準備を開始した。 さらに、上智大学「東南アジア・キターブ(イスラーム書)コレクション」第2期収集分(約500タイトル)の英文目録編集作業をほぼ完了した。同目録は次年度刊行の予定である。また、ダンサラン大学ガウィン研究センター図書室所蔵所蔵Maizie Van Vactorコレクションのマラナオ語イスラーム書を電子化した。今後はこれらの資料を活用してさらに活発に研究を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、存在一性論について各自で資料調査と文献講読を進め、オンラインでの意見交換や情報共有を行いつつ、研究を進めることができた。マラナオ語イスラーム書『天国の道』の講読は、海外の研究協力者との共同作業により丁寧に行っているため、多くの時間を要するが、着実に進んでいる。当初の予定より遅れていた東南アジアのイスラーム書約500点の英文目録の編集作業は、ほぼ完了し、次年度に刊行の運びである。研究参加者の海外出張は、都合により本年度中の実施が困難であったため、来年度前半に延期することにした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である次年度は、研究参加者の間でいっそう緊密に連絡を取り合いつつ、各自の研究課題に取り組み、その成果を研究会や国際セミナー等で報告してフィードバックを得るとともに、本研究の成果に基づく英文論文を執筆する。 具体的には、以下の活動を実施する。第一は、東南アジアの存在一性論に関して、各自のテーマにもとづいて研究を進め、研究会での報告や議論を通じて共同研究を深化させる(川島、菅原、久志本)。第二に、現地での文献調査、聞き取り調査、研究ネットワーク強化を目的として、8月にフィリピン、ミンダナオ島マラウィ市、イリガン市で海外調査を実施する(川島、久志本)。第三に、9月7日にミンダナオ国立大学歴史学科との共催により、同学で国際セミナーを開催し、研究成果の一部を現地の研究者に還元するとともに、議論を通じて研究を深める(川島、菅原、久志本)。第四に、上智大学東南アジアのイスラーム書コレクション目録(補遺)を刊行する。第五に、本研究の成果に基づき、英文論文を執筆し、上智大学イスラーム地域研究所より刊行する。
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