研究課題/領域番号 |
20K01010
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
森部 豊 関西大学, 文学部, 教授 (00411489)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 羈縻支配 / ソグド系武人 / 東ユーラシア帝国 / 契丹 / 羈縻州 / 唐朝 / 靺鞨 / 折衝府 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ユーラシアの東部地域に「世界帝国」として君臨した唐朝が、服属してきた周辺の種族・部族を支配したシステム(羈縻支配)を、墓誌などの石刻史料を分析して再検討する。唐朝の羈縻支配について、これまでは「緩やかに間接的に周辺の種族や部族を支配」していたと認識されていた。本研究は、唐朝の羈縻支配が、画一的なものではなく、地域・時代によって差異があり、多様なものであったことを解明していく。
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研究実績の概要 |
2022年度は、中国大陸において相次いで発見されている唐代(618~907 年)の石刻史料のうち、墓に死者とともに埋葬された墓誌の分析を通じ、編纂史料から構築された「唐代史」という歴史像を、新たに検討しなおした。 一つは唐朝の軍事力を支えた非漢人のうち、唐の中後期に活動したソグド系武人の系譜を、5 つの墓誌をとりあげ、分析した。その結果、当該時期に活動したソグド系武人には、唐朝の「羈縻支配」の中から登場してくるソグド系突厥の他、安史の乱の最中、唐朝の呼びかけによって中央アジア方面から中国へやって来たソグド系武人が含まれていること、また涼州に居住しつづけていたソグド人グループ(羈縻支配下にあったかは判然としない)の中から、武人として台頭してきた者たちもいることを明らかにした(「唐代中後期のソグド系武人に関する覚書」『文書・出土・石刻史料が語るユーラシアの歴史と文化』関西大学東西学術研究所)。 次に、帝京大学で開催された「シルクロード学研究会 2023 冬」において「唐の「羈縻」支配と契丹」と題して発表を行い、唐朝の「羈縻」支配は、普遍的なものではなく、支配地域や支配するエスニック集団についてそれぞれ異なっていたことを明らかにした。具体的には、唐代の営州(遼寧省朝陽市)に置かれた契丹集団を事例としてとりあげ、新出の石刻史料を分析することによって、この問題に対する見通しを述べた。 そして最後に、新たに得られた「唐朝の羈縻支配」像の再検討の結果も含め、『唐―東ユーラシアの大帝国』(中央公論新社)を執筆し、唐朝の通史を、編纂史料の他、石刻史料を用いて描き、従来の唐代史像を再構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、当初の予定では、中国大陸のうち、四川、雲南、広東、広西などの残る碑文を調査し、唐朝の南方地域への「羈縻支配」の実像を再検討するものであった。しかしながら、中国政府による渡航禁止の影響が長引き、現地調査を実施することは不可能であったため、当初の計画は大きくとん挫することとなった。 その一方、日本国内で情報の得られた新出の墓誌を利用し、新たな知見も得ることができた。唐朝の支配下にあったソグド人の動向を浮かび上がらせたのである。以下、次項目でこの点を含めた対応策を述べる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、中国における自由な調査は未だ望めないという前提に立ち、一部、研究計画を変更せざるを得ない。 一つは、研究期間を一年延ばし、中国調査を実施する計画を先送りすることである。ただし、この点、不透明さが残る。延長して調査が実行できない場合、唐朝南方地域における羈縻支配の実態調査の代わりに、現在、着手しつつある唐朝西方(現在の甘粛方面)からオルドス地域におけるエスニック集団に対する支配の実態解明を、墓誌を通じて分析する方向に転換する。
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