研究課題/領域番号 |
20K01021
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
倉本 尚徳 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (30598298)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 造像記 / 寺碑 / 地域社会 / 中央と地方 / 仏教石刻 / 中国仏教 / 隋唐 / 廃仏 / 隋文帝 / 善導 / 石刻 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は仏教石刻資料を主な研究対象として,隋・初唐時代(高宗期まで)の地域社会における造像活動や仏教信仰のあり方について,中央の政治や仏教界の動向との関係を重視しつつ研究しようとするものである。具体的には,隋代においては,各地域の仏教徒が仏像の修復事業をどのように実際行い,北周の廃仏や隋王朝の仏教の再興に対していかに評価していたかという問題,初唐においては,王朝の厳しい仏教統制政策のもとで地域社会においていかに造像活動が再開されたかという問題について,造像記や寺碑など仏教石刻の網羅的な収集と,個別事例の詳細な分析から明らかにする。
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研究実績の概要 |
2022年度は、唐初における王朝の厳しい仏教統制政策のもとで、地域社会においていかに集団での造像活動が行われたかという問題について,各地の唐最初期の造像記や寺碑など仏教石刻資料を当時の歴史的環境について個別事例の詳細な分析を行った。隋末唐初は各地に賊軍が割拠する状況であり、特に「偽乱地」と呼ばれる、賊軍が旧来統治していた土地において賊軍に加担した僧を厳しく取り締まるため、唐の支配下に入った地域では、かなり徹底した寺院・僧数の管理政策が採用された。その中で集団造像がなされた事例を分析すると、早期に唐に帰順した者や、唐の皇室と密接なつながりを有する地方長官が主導した場合にほぼ限定されていたことを明らかにした。また、北朝~隋に流行した義邑(邑義)とよばれる地域社会の宗教結社による造像が唐初期には見られないこともあわせて指摘した。本研究成果は印度学仏教学会で発表する予定であったが、台湾の華梵大学主催の国際学術会議に招待されたので、ここで発表することに変更し、その成果を会議論文として提出した。 本年度も中国で厳しいコロナ対応政策がとられたため、実地調査は断念し、文献研究をすすめた。具体的には、課題にあげた玄奘のもたらした新仏教の地域社会における影響の調査と関わり、玄奘と高宗・武則天についての関係を改めて調査した。特に仏光王に関わる資料を重点的に調査する過程で、両者の関係の変化をより詳細に跡付けることが可能となり、その成果を論考にまとめ、「玄奘と高宗ーー智首律師碑の再検討」と題し、氣賀澤保規編『論集隋唐仏教社会とその周辺』に掲載した。また仏像にかかわって行われる仏教儀礼の調査を継続し、隋・初唐の地域社会における『般舟三昧経』に基づく仏像を用いた修行法の伝統の存在を明らかにし、その成果を『儀礼と仏像』に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中国独自のcovid19政策や厳しい出入国管理のため、実施を予定していた中国における仏教遺跡や中国の石刻拓本所蔵機関の現地調査をいまだ一度も行うことができていないので、研究計画を予定どおりに進めることは困難な状況にある。その一方で、玄奘の影響力の変化に大きな意味を持つ、智首律師碑を再検討し、新たな見解を提示するなど、隋唐仏教石刻文献の研究を着実に進めることができている。 初唐仏教石刻の目録作成についても、近年出版された新たな石刻資料集を複数入手できたことから、着実に収録数を増やすことができた。また、次年度に向けてすでに収録したデータの点検・整理も進めることができた。 さらに京都大学人文科学研究所が所蔵する隋唐拓本未整理資料についても調査を行い、従来の京都大学人文科学研究所拓本資料データベースの目録に入っていなかった隋・初唐の仏教石刻拓本を数点新たに検出することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度から、京都大学人文科学研究所にて本課題と密接にかかわる「隋唐石刻資料の研究班」を2023年度から4年間の予定で開始する。この研究班は研究所が所蔵する隋唐石刻拓本を主な史料とし、詳細な訳注作成作業を共同で行うものである。本年度は龍蔵寺碑、信行禪師碑、隋詔州縣各立僧尼二寺碑記といった隋の重要な仏教石刻をとりあげて検討する予定である。よって本年度の研究計画をこれに連動したものに変更し、隋代仏教石刻文の詳細な分析から導き出される、仏教を通じた中央と地方の関係の見直しを改めて行うことにしたい。 作成中の初唐仏教石刻目録については、唐代史を専門とする研究者を非常勤職員として雇用し、どのような形にすれば最適かについて検討を重ね、出版に向け体裁を整え、誤字・脱字、データの重複チェックなどを行い、原稿にまとめることができるよう進めていく予定である。
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