研究課題/領域番号 |
20K01035
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
芦部 彰 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 講師 (00772667)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 西ドイツ / 領土 / ザールラント / カトリシズム / ナショナリズム / 欧州統合 / 西洋史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、1950年代の西ドイツ国内における、ザールラント帰属問題を巡る議論を分析する。50年代の西ドイツは、アデナウアーの西側結合政策を基本とし、国際組織に埋め込まれることで主権を回復していった。しかし、この時期には、フランスの管理下にあったザールラントが西ドイツに「復帰」し、例外的に第二次世界大戦後に失われた領土の一部が戻るという、ナショナリズムとの関係が注目される出来事があった。この状況をふまえて、①編入に至るまで西側結合との関係でどのような議論がなされたのか、②編入された領土にどのような意味付けがなされたのか、この二点を考察する。
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研究実績の概要 |
本年度は、昨年度にザールラントにおけるドイツ帰属派の主張を検討したことをふまえ、さらにザールラントの地域社会の動向とドイツ帰属派の主張の関係を探るため、フランスの政策に対する地域社会の反応を検討した。一般的にフランス文化に対し好意的な反応が見られた一方で、初等教育からフランス語教育を試みた教育政策、ドイツとは異なるザール・アイデンティティを形成しようとしたスポーツ政策、ドイツの教会の影響を遮断しようとした教会政策など、地域社会の日常に介入する政策の多くは反発をまねいていた。とくに教会政策の検討からは、カトリック住民の比率が高いザールラントにおけるカトリック教会の影響力の大きさが浮き彫りになった。なかでもトリーア司教ボルネヴァッサーは、1935年の住民投票時にもドイツ帰属を主張しており、昨年度に続いて1935年住民投票と戦後の動向の関連が明らかとなった。 本年度は本研究課題の三年目であり、過去二年の成果を踏まえつつ、最終年度となる令和5年度に向けて研究の焦点を絞り込むための検討も行った。一昨年度に西ドイツの全ドイツ問題相カイザーとザール自治政府首相ホフマンの「ヨーロッパ化」およびナショナリズムをめぐる考え方の相違に注目したが、両者はともに反ナチ抵抗活動家であり、それに加えてカトリック政治家という共通点があった。本年度の考察で明らかになったカトリック教会の役割とあわせ、カトリック政治家とナショナリズムとの関係の考察をより深めることが論点としてあらためて浮上した。具体的には、ザールラントのドイツ帰属派を支援した全ドイツ問題相カイザーに即して、その主張のロジックに注目する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題における最初の二年に比べ、大きな遅延をともなわず、日本から研究文献を購入したり、同時代刊行物などの史料を入手したりすることができたが、その一方で、ドイツの文書館での史料調査は行えなかったため、研究に利用できる史料は国内で入手可能か閲覧可能なものに限定されることになった。三年目をむかえた本年度は、昨年度までの考察をさらに深めることと、研究課題全体としての論点の絞り込みが中心となったが、その作業には未刊行の文書館史料の検討が不可欠であり、文書館史料の調査を実施できなかった点で、この作業の進展に限界が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に申請時の研究計画にしたがって研究を進める。令和5年度には、ここまで実施できていないドイツにおける文書館史料の調査を行う。この点について、日本から入手できた同時代刊行物などの史料を検討してえられた成果を活かし、考察の焦点を明確化し、文書館で調査する史料を絞りこむことで、ドイツでの史料調査を効果的に進める。さらに、未刊行の文書館史料の分析を進めることで、ここまでの研究期間で十分に詰め切れずにいた考察の空白を埋め、具体的な研究成果の公表につなげる。
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