研究課題/領域番号 |
20K01060
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 千葉商科大学 |
研究代表者 |
師尾 晶子 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (10296329)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ペルシア戦争 / 歴史叙述 / 記憶の場 / ローカル・アイデンティティ / 聖域 / ギリシア / 記憶 / アイデンティティ / ギリシア人 / 年代記 / inventory lists / 記憶の改竄 / 記憶と記録 / 受容史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は、ペルシア戦争の研究史そのものが内包する問題を問うことを目的とする。 まず、ペルシア戦争の体験が長い時間を経て、言説化され創作され、共通の文化的記憶として定着した過程を通時的に考察する。文学、歴史叙述、祭祀、政治演説を通じて《つくられた歴史》が再創造・再強化されていく過程を解明し、ペルシア戦争が後世の戦争の原体験として扱われてきた過程を明らかにする。そして、かかるペルシア戦争のイメージが、近代ヨーロッパにおける西洋対東洋のイメージと重なり合うことで研究の膠着をもたらしている現状のあることを明らかにする。
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研究実績の概要 |
2022年8月から9月にかけて、3年ぶりにギリシア、ロンドンでの資料閲覧・調査をおこなうことができた。11月の口頭報告の一部は在アテネフランス考古学研究所の写真アーカイブでの調査によるものである。 2022年度の研究成果としては、Keeping the Sacred Landscape Beautiful and Elaborate: Maintenance of Sanctuaries in Ancient Greeceが国際誌に掲載された。また周藤芳幸編著『古代地中海世界と文化的記憶』に「記憶の継承の場としてのエフェベイア」を寄稿した。前330年代に確立したと考えられるエフェベイアとよばれる若者教育の成立過程、およびこの若者教育を通して、ペルシア戦争の記憶がどのように統合されて画一化されてきたかについて考察するとともに、ヘレニズム時代、ローマ時代、そして近代欧米における受容を考察した。この論文で取り上げたアカルナイの碑について、11月に奉納碑の建立経緯について再検討を試みた。3月には、竹内一博氏、および大野普記氏との合同研究会にて、古代末期に再刻されたペルシア戦争でのメガラ人の活躍をうたった献詞を刻んだ石碑(IG VII 53)について報告した。これも昨夏の調査に端を発している。 そのほか、記憶の場に関わる報告として、京都大学で開催されたワークショップにおいてTombs for All to See: Mortuary Landscape and the Local Identity in the Hellenistic and Roman Lyciaを報告した。古い王国時代のモニュメントがヘレニズム時代・ローマ時代の公共空間にどのように配置しなおされ、記憶の風景をつくったかについて考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外調査が再開できたことで、現地にて開催が延期となったワークショップの計画の組み直しなどについても対面で議論することができた。当初とは異なる形での開催となろうが、時宜にかなった形での実施に向けて準備を進めていく見通しは立てられた。 口頭報告、論文発表ともに、ミクロな視点から、またより普遍的な視点から,古代地中海世界における記憶の継承について、またとりわけアテナイをはじめとするギリシア世界におけるペルシア戦争の記憶の継承について発表することができた。これらを総合していく作業については2023年度およびそれ以降にも継続される仕事となる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は最終年度となる。ただし、最初の2年間は十分な調査ができなかったこと,さまざまな企画が延期となったこともあり、当初の計画すべてを消化することは難しくなった。一方、2023年度も海外調査を実施し、必要な実見作業をおこなう。その成果を用いつつ、前4世紀からローマ時代にかけての長いタイムスパンを視野に、ペルシア戦争の記憶の継承について,個別資料を扱いつつ研究をまとめていく。 また、ペルシア戦争の記憶の継承に関心をもち研究を進めている若手研究者と合同研究会を継続的に開催するとともに、国内および海外研究者も含めたさまざまなレベルのワークショップやシンポジウムの企画をすすめていく。これらについては、一部は2023年度中におこなうが、最終的には2024年度,2025年度あたりに最終的なシンポジウムを開催できるように準備を進めていくことになりそうである。
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