研究課題/領域番号 |
20K01079
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
内山 幸子 東海大学, 国際文化学部, 教授 (20548739)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 毛皮資料 / 北海道 / 動物遺体 / イヌ / 剥製標本 / アイヌ文化期 / 毛皮 / 解体痕 / 出土遺体 / 古代 / 中世 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、以下に挙げるような、過去に毛皮が利用されたことを間接的に示す証拠、(1)当時利用された動物の種類や出土状況、(2)遺体に残された傷、(3)毛皮利用に関わる道具類、(4)毛皮を持つ動物の意匠、(5)文献に記載された毛皮に関する記述、にもとづき、北海道の古代・中世(オホーツク文化、擦文文化、アイヌ文化)における毛皮の利用状況について把握し、毛皮利用からみる地域性や時代的変遷について明らかにすることを目指すものである。 加えて、毛皮が美的価値を持つことから、毛皮獣に対して特別な精神的位置づけがなされていたか否かについて検討することも課題としている。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、古代・中世の毛皮利用について検討するため、実資料が観察できる近・現代の毛皮資料を北海道内の博物館で観察・計測する作業に従事した。調査に訪れた施設は延べ12に上り、このうち、礼文町郷土資料館では、イヌの可能性がある毛皮を内側に配したソデナシ(防寒チョッキ)を6点観察・計測することができた。さらに、同じくイヌとみられる毛皮を用いた、腰座布団(尻あて)や手甲も各1点観察・計測した。 礼文島では、オホーツク文化期を中心とする香深井1遺跡と浜中2遺跡の発掘調査を見学し、出土した動物遺体の実見も行った。実見した資料の中には、毛皮利用を示す解体痕は確認できなかったが、寒冷な地域であることを鑑みれば、毛皮が素材として利用された可能性は高い。 利尻町立博物館では、イヌの毛皮製のソデナシと、その可能性が高いソデナシ3点を観察・計測し、イヌと考えられる毛皮標本や海獣類の毛皮標本、イヌ頭部の剥製標本等の観察も行った。 礼文島・利尻島では、陸生哺乳類が限られることもあり、古くは続縄文時代からイヌへの依存度が高かったことで知られる。今年度の調査では、利尻島在住の古老2名から聞き取りも行い、少なくとも利尻島では、飼いイヌを殺して食べるだけでなく、その毛皮を剥いで鞣し、ソデナシの素材にしていたとの証言を得た。ソデナシは、北海道各地で漁や山仕事の際に着用されたことが明らかで、とくに利尻島では、イヌを橇曳き用としても利用するなど、近・現代の生活を広く支える重要な存在であったことがうかがい知れた。 礼文島・利尻島以外の博物館でも、毛皮資料の調査を行った。結果、数は多くないものの、イヌとみられる毛皮を用いたソデナシや皮手袋を数点確認した。いずれもイヌの毛皮の利用が北海道で連綿と続いていたことを示す資料である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出張を伴う資料調査は計画していたほどにはできなかったが、イヌの毛皮利用を明らかにする上で中心的な地域である礼文島・利尻島での現地調査を実施することはできた。両島では、イヌの毛皮を素材にしたとみられるソデナシをはじめとする毛皮資料の詳細な観察・計測を行うとともに、オホーツク文化期を中心とする香深井1遺跡と浜中2遺跡の発掘調査現場に立ち会い、出土した動物遺体を実見することもできた。さらに、古老の聞き取り調査が行えたことにより、先史時代から近・現代までの長きにわたり、両島におけるイヌの存在価値が他地域より高かったことを、より明確に証拠づけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに収集した資料やデータについてまとめる作業をおもに行う予定である。具体的には、動物の種ごと及び製品ごとに資料・データを整理し、過去における北海道内での毛皮利用の実態について、具体的に提示する作業に取り組んでいきたい。 これまで中心的に収集してきたのがイヌに関連した資料であるため、まずはイヌからまとめる予定である。さらに、地域的には、続縄文時代からイヌへの依存度が高いことで知られる、礼文島や利尻島を中心に整理していくこととする。このうち、礼文島では、近年、オホーツク文化期の代表的な遺跡である、香深井1遺跡と浜中2遺跡での発掘調査が継続的に行われているため、それらにもできる限り参加し、新たに出土する動物遺体の観察・分析をすることで、資料の増加にも努めたい。これらの観察・分析は、現地だけでなく、浜中2遺跡の調査主体者である北海道大学アイヌ・先住民研究センター(札幌市)や、借用可能な場合は東海大学札幌キャンパスでも実施したいと考えている。 また、イヌ以外には、キツネやクロテン、カワウソ、ウサギ、ラッコ、オットセイといった、毛皮がとくに良質とされる動物を中心に、順次、検討を進めていく計画である。
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