研究課題/領域番号 |
20K01108
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03060:文化財科学関連
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
山延 圭子 (高橋圭子) 東京工芸大学, 工学部, 教授 (00188004)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2020年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | カルサミンカリウム塩 / NMR / Nano ESI質量分析 / 伝統的精製法の化学翻訳 / 蛍光X線分析 / 原子吸光分析 / 分子軌道計算 / 緑色金属様光沢 / 核磁気共鳴 / カルサミン / 分子構造 / 超分子 / 笹紅 |
研究開始時の研究の概要 |
天然ベニバナに含まれる精製赤色色素、笹紅を得る伝統的方法を化学的に検証し、再現性良く精製ができる方法へと翻訳することと、得られた笹紅発色系の超分子化学構造を明らかにすることを目的とする。精製紅の元素分析および構造分析を様々なパルスシークエンスによる高分解能NMR、質量分析、円偏光二色性分散計、単結晶X線分析、蛍光X線分析、および原子吸光分析により解明するのが全体的戦略である。これまでの結果の蓄積により、詳細な解析展開の段階に達している。光特性も含め、分子(元素)レベルでの発信が可能であり、新素材化合物提案の可能性もある。
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研究実績の概要 |
申請者は金属光沢緑色「笹色紅」発現機構と紅色色素成分の分子構造を化学的に解明する目的で研究に着手するにいたった。笹紅の伝統的製法の化学的翻訳と笹色紅発色系の化学構造を明らかにすることを主目的とする。伝統的精製法で用いられる灰汁(アルカリ溶液)や烏梅抽出液(酸溶液)の化学成分をNMR、蛍光X線、原子吸光を用いて完了できた。さらに、精製紅の元素分析および構造分析を様々なパルスシークエンス(COSY, HMQC, HMBC, NOESY, ROESY, DOSY等)を駆使した高分解能NMR、質量分析、蛍光X線、原子吸光により行い、無機有機元素の全解明ができた。中でも、最新質量分析装置により、伝統的笹色紅がカリウム塩であることを、塩となっている位置と共に明らかにした。さらに安定化の因子を発見したことは今後の実験遂行においても、多大な有用点である。報文受理には至っていないが、本年度の研究計画はほぼ100%完了した。 笹色紅の金属光沢緑色は玉虫色のような構造色ではないことが判明し、色素の密度に依存する傾向があることが判明した。これは笹色紅の成分であるcarthaminと無機元素がある一定の構造を有していることが示唆されたが、具体的分子構造提示は検討中である。金属光沢を有する美しい固体ではあるがこのままでは結晶構造解析ができない。高分解能単結晶解析装置による解析を念頭に置き、可溶媒である、水、ピリジン、DMSO、DMFと非溶媒を組み合わせて単結晶形成を検討したが、単結晶形成は成功していない。 笹色紅の複合体の配位無機元素を含めた分子構造決定に関しては、分子構造からNMRスペクトル、UVスペクトルの推測ができるので、帰属終了したNMRスペクトルから、妥当な分子計算法を検討中である。著しく遮蔽を受けているカルサミン5, 5’水酸基シグナルに着目し、分子構造検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
笹紅の伝統的製法の化学的翻訳と笹色紅発色系の化学構造を明らかにすることを主目的としている。 伝統的精製法で用いられる灰汁(アルカリ溶液)とや烏梅抽出液(酸溶液)の化学成分をNMR、蛍光X線、原子吸光を用いて完了できた。さらに、精製紅の元素分析および構造分析を様々なパルスシークエンス(COSY, HMQC, HMBC, NOESY, ROESY, DOSY等)を駆使した高分解能NMR、質量分析、蛍光X線、原子吸光により行い、無機有機元素の全解明ができた。これまでの論文では不安定で機器分析に堪えないと言われてきたカルサミンとの矛盾を科学的に解明できたことは価値のある結果である。すなわち、伝統的紅は3位カルサミンカリウム塩であることを最新質量分析装置で証明できた。これまでの実験室実験法を精査し、その生成物の構造との比較も進行中である。報文受理には至っていないが、本年度の研究計画はほぼ100%完了した。 笹紅の金属光沢緑色は玉虫色のような構造色ではないことが判明し、色素の密度に依存する傾向があることが判明した。これは笹色紅の成分カルサミンと無機元素がある一定の構造を有していることに関係している。 具体的分子構造提示はやや遅れ気味である。金属光沢を有する美しい固体ではあるが単結晶ではない。高分解能単結晶解析装置による解析を念頭に置き、可溶媒である、水、ピリジン、DMSO、DMFと非溶媒を組み合わせて単結晶形成を検討したが、いまだ単結晶形成は成功していない。 笹色紅の複合体の配位無機元素を含めた分子構造決定に関しては、分子構造からNMRスペクトル、UVスペクトルの推測ができるので、帰属終了したNMRスペクトルから、妥当な分子計算法を模索中である。著しく遮蔽を受けているカルサミン分子5, 5’水酸基シグナルに着目し、シクロデキストリンなどを加えた水中での単結晶作成法も検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
単結晶形成とX線分析に苦戦している。笹紅の金属光沢緑色は構造色ではなく、色素の密度に依存する傾向がある。光学的結果は得られても分子構造と連結するには至っていない。分子レベルで解明するにはX線単結晶解析が有効である。固体NMR測定も行ったが結晶多型の有無も検出できていない。高分解能単結晶解析装置による解析を念頭に置き、可溶媒である水、ピリジン、DMSO、DMFと非溶媒を組み合わせて単結晶形成を検討する。pHにより水酸基解離状態が変化して、溶解性が変化するので、これを利用して、等電点付近、あるいは伝統的方法で紅の沈殿が生成するpHより高いpH条件下、結晶形成の詳細条件を検討し、確定する予定である。同時に分子構造計算による、分子構造推定も行う。分子構造からNMRスペクトル、UVスペクトルの推測ができることが判明したので、逆に、実際のスペクトルから無機元素も含めた分子構造計算に着手したい。カルサミン構造の5, 5’水酸基シグナルと7カルボニル基との水素結合の重要性が判明したので、この結合が存在する分子構造決定を検討したい。 新素材展開を目的としたシクロデキストリンとの複合体形成について:研究の初期からヒドロキシプロピルシクロデキストリンの添加が紅沈殿速度を促進することを見出している。さらに過剰の添加では水溶性が増加し、酸性条件下でも水に可溶であることも判明している。紅の光不安定性や溶解性が改良できる可能性がある。シクロデキストリン固体紅作成が最終目標であるが、前段階として、紅水溶液におけるシクロデキストリンの効果を検討する。NMR帰属が完了した今、特徴的16位水素が10 ppm付近に観測されることが判明しているので、このシグナルを追跡すればcarthamin分解状況がわかる。1Hのみならず13C NMRも測定条件を把握しているので、多面的に解析が可能である。
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