研究課題/領域番号 |
20K01113
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03060:文化財科学関連
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館 |
研究代表者 |
降幡 順子 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部保存科学室, 室長 (60372182)
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研究分担者 |
尾野 善裕 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部, 部長 (40280531)
降矢 哲男 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部調査・国際連携室, 主任研究員 (10747330)
吉川 聡 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 文化遺産部, 室長 (60321626)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 野々村仁清 / 御室窯 / 窯跡出土陶片 / 胎土分析 / 陶工必用 / 窯址出土陶片 / 色絵釘隠 / 材料学 / 窯業技術 |
研究開始時の研究の概要 |
京焼を代表する野々村仁清の御室窯は、「仁清」印が残る陶片が多数採集された、御室の仁和寺門前にその存在が比定されている。ここからの表採資料のうち、京都国立博物館に所蔵されている約900点の「御室仁清窯跡出土陶片」を主たる調査対象とし、胎土・釉薬・彩色材料それぞれに対して科学的特徴を明らかにしていく。 その成果から、尾形深省(乾山)が野々村仁清の影響を受けて晩年に書き残した技法書『陶工必用』等に伝承された材料の比較検討をおこない、17世紀中頃から後半の御室焼製陶技術について明らかにする。さらに材料学的な視点から、御室焼の窯業技術の受容の詳細、近世京焼と御室窯跡出土陶片の位置付けを検討する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、野々村仁清の御室窯跡出土陶片の材料学的な調査を新たに実施することにより、これまで形態学上の特徴から考察されてきた技法書に記載される項目と材料の配合等について、窯跡出土陶片の化学的な特徴との対応関係を明らかにすることである。 令和5年度の研究実施計画は、継続して御室窯跡出土陶片の胎土分析を実施するとともに、外部機関が所蔵する資料調査を積極的に実施することであった。5年度は、同時代の肥前産などの上絵付の彩色材料調査、京都市内から出土した同時代の京焼資料調査、京焼とも関連のある東海地方の土器類の調査など、他自治体や外部の博物館等の収蔵品を調査対象として分析することができた。 御室窯跡出土陶片の胎土分析結果では、陶工必用に記載されている粘土の名称や混合比、水簸・篩の別などと参考にして、化学的な特徴と形態学的な分類との相関を検討した。例えばSiO2が少ない特徴があることがわかった水指を含む厚手の素地資料は、記載のなかで、山科石(珪酸分が多い)を混合しないことを反映していると考えると、「大道具土」、「瀬戸くハんにう手土」が候補になるが、器種が茶碗ではなく、厚手の資料であることから「大道具土」の蓋然性が高い可能性がある。次にFeが多い資料群は、胎土色が暗褐色を呈し、器種は茶碗以外も含むことから、記載から胎土に赤土を混合する「加らつ手土」、もしくは「いらぼ土」、「白絵べに皿手土」が候補となりうる。これらの資料群はSiO2量によって、さらに大別できそうであり、配合比との関連性を今後検討しうる結果が得られたと考えている。 化学分析調査の結果は、学会発表、報告書・紀要に掲載するなど、情報公開を積極的におこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は、外部機関が所蔵する資料調査を積極的に再開することができた。併せて京都国立博物館所蔵の御室窯跡出陶片に関する調査も順調に進んでいる。しかし研究期間全体を通じてみると、これまで延期せざるをえなかった外部機関の所蔵する資料調査が不足していると言わざるを得ない。このため令和5年度の進捗状況はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
非破壊分析であっても、陶工必用記載内容と胎土の化学組成の傾向に、一定程度の特徴を示すことができることがわかった。より詳細な器種の検討が必要であると考えており、今後は、御室窯跡出土陶片のうち、碗類底部のような、詳細な分類が可能な陶片を精査し、陶工必用に記載されている名称と非破壊分析結果の相関を明らかにしていきたいと考えている。 このため、令和6年度は、外部機関が所属する仁清関連陶片の借用、非破壊分析調査をさらに進めていく。また継続して京都国立博物館所蔵の御室窯跡出土資料の胎土分析を実施し、結果については報告書などを通じて情報公開を行っていく予定である。
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