研究課題/領域番号 |
20K01138
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04010:地理学関連
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研究機関 | 茨城大学 (2021-2023) 筑波大学 (2020) |
研究代表者 |
松岡 憲知 茨城大学, 教育学部, 特任教授 (10209512)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 地形 / 周氷河 / 構造土 / 気候指標 / 凍結融解 / 国際ネットワーク / 相分離 |
研究開始時の研究の概要 |
周氷河地形や周氷河堆積物は温度環境を直接反映するので,気候指標として現在・過去の環境条件の推定に利用される。寒冷地に遍在する構造土は周氷河気候指標として高いポテンシャルをもつが,現状では物理的根拠を欠く曖昧な基準が適用されている。これは,構造土の形成機構が十分理解されていないこと,実験・観測手法が確立されていないためである。 本研究では,構造土形成プロセスを霜柱型,浅層凍結型,対流型,熱収縮破壊型に整理し,実験・観測研究に基づいて形態と温度条件の関係を解明する。そして,地温,表層物質,斜面傾斜,土壌水分の4条件の組合せで構造土の形態と分布条件を定量化し,気候指標としての利用法を確立する。
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研究実績の概要 |
周氷河地形を代表し,世界の寒冷地域に遍在する構造土を霜柱型,浅層凍結型,対流,熱収縮破壊型に分類し,分布・形態・構造・プロセスに関する現地調査・観測および室内実験に基づいて,構造土の形態と温度条件の関係を解明し,気候指標としての基準を確立することを目的とした。 コロナ禍のため先年度までは世界各地でのデ-タ取得が遅れていたが,2023年度は多くの国への渡航が可能になり,日本とスイスでの観測の継続に加えて,スペインと中国東北部の山地で短期的調査を実施した。主に浅層凍結型のデータを取得し,構造土の形態と気候条件に関する議論に進歩がみられた。しかし,時間的・予算的制約から高緯度地域や熱帯高山地域の調査ができなかったため,地球上の全気候型に対応したモデルを作成するためのデータ取得は不十分である。 日本の南アルプス(中緯度高山)での構造土の動態に関する長期観測結果について,礫径と移動速度の関係や気候変動の移動速度への影響を評価し,その解析結果を2023年6月にスペインでの国際学会で発表し,地形学の代表的国際誌にも公表した。また,北極のスバルバール諸島については,構造土を含めた永久凍土地形に関する長期観測結果に基づいて,分布・形態・成因そして今後の変動予測を総括する論文を国内誌に公表した, 以上のように,本計画の中核である野外データの取得と成果の公表については着実に進展した。当初計画の一つである「構造土研究の国際ネットワーク化」についても,各国の周氷河地形研究者と進めている。研究期間を延長し,最終年度となる2024年度には,最終的な目標である「気候条件と構造土の形態の関係の定量化」,そして「気候指標の高精度化」をさらに推進する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画では,世界各地の山地での現地調査・観測により,構造土の分布・規模・形態・形成プロセスと気候条件の関わりについて体系化することをめざしているが,コロナ禍により約2年間の遅れが生じた。2023年度にようやく調査対象地域への海外渡航が可能になり,日本とスイスの山地での調査・観測の継続に加えて,スペインと中国の山地での短期的調査を実施した。その結果,霜柱型と浅層凍結型構造土のデータが充実し,体系化に向けた分析が進展した。 成果公表については,日本アルプスでの長期観測結果に基づいて霜柱型構造土の礫径と移動速度の関係や気候変動の影響を評価し,その解析結果を2023年6月にスペインで開催された欧州永久凍土学会で発表するとともに,Earth Surface Processes and Landforms誌に公表した。また,対流型と熱収縮型構造土を含めた永久凍土地形に関する長期観測結果に基づいて,各永久凍土地形の現状と将来予測に関する論文を地学雑誌とEnvironmental Research Letters誌に公表した, 欧州永久凍土学会の際にはTanarro Garcia教授(マドリード・コンプルテンセ大)とともにスペインのシエラネバダ山脈とガダラマ山地の構造土調査を実施した。中国東北部では李安原教授(中国科学院)および金会軍教授(東北林業大学)とともに白頭山の周氷河地形を調査するとともに,東北林業大学で周氷河地形変動に関する招待講演を行った。 以上のように,本計画の中核である野外データの取得と成果公表は進展した。構造土研究の国際ネットワーク化についても,スペイン,アメリカ,中国,スロベニアの研究者と進めたことにより,今後の国際共同調査や国際共同論文執筆を進める基礎がつくられた。これらの状況から,2年間の海外調査の遅れを十分に埋め合わせることができたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究機関を2年延長したことにより,2023年度から研究対象予定地域への海外渡航が可能になり,国際学会も対面で開催されるようになった。最終年度となる2024年度は,スバルバールやスイスでの現地調査・観測を継続する一方で,ハワイ(熱帯高山)やスロベニア(カルスト山地),チベット高原(乾燥永久凍土)といった特徴的な気候・岩石条件をもつ山地での構造土の分布・形態・気候条件・形成プロセスに関わるデータ取得を行なう予定である。これらの多種多様な環境で得られたデータを組み込んで,気候指標としての質を高めていく。各国での現地調査は,本研究で構築した国際構造土研究ネットワークを通じて,現地に詳しい研究者と共同して実施する。共同研究者とは緊密な連絡をとり,情報交換と調査の打ち合わせを進めている。 また,同ネットワークを通じて,世界各地の構造土の分布・形態・構造・プロセスに関する情報提供を依頼し,多種多様な構造土のデータを取得する。これらのデータも組み込んで,気候条件と構造土の形態・形成プロセスとの関係を一般化し,気候指標としての質を高める。海外からの共同研究者の来日も計画しており,中国科学院の研究者らとの連携により室内実験とモデル化についても先端的研究を進めていく。
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