研究課題/領域番号 |
20K01152
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04010:地理学関連
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研究機関 | 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(機構本部施設等) |
研究代表者 |
市野 美夏 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(機構本部施設等), データサイエンス共同利用基盤施設, 特任助教 (40376968)
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研究分担者 |
三上 岳彦 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 客員教授 (10114662)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 気候復元 / 日記天候記録 / 日射量 / 気候変動 / 江戸時代 / 天候災害 / 飢饉 / 農業収量 / 冷夏 / 歴史気候学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、日記に記された天候情報を利用し、17世紀から19世紀にわたる全国各地の日射量を復元し、高い時空間分解能の気候変動解析を行う研究である。 ・200年を超える長期の日単位の天候情報を日射量という気象変数を用いて定量化し、空間的な時系列解析を可能とする気候復元を行う。 ・復元された日射量を時空間的に解析し、日本全国規模の天候パターンの数十日から数十年の時間スケールでの変動を明らかにする。 ・復元された日射量、農業に関する情報、米価等の経済情報を用いて、江戸時代における「人間社会が気候要因にどのように反応したか」について、統合的に解析する。
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研究実績の概要 |
本研究では、日記と天候記録を利用して日射量の推定方法を開発および改良し、長期の日射量の復元と解析を目指している。推定方法の改良と推定値の検証については、東京の日照時間を利用し、日記と気象庁の天気情報を比較・評価した。1960年以前の日照時間の日別値はデジタル化されておらず、気象庁のマイクロフィルムと出版物を使用して整備した。日記の記録は1900年前後、天気概況は1980年前後のデータを日照時間と比較し、相互の記録の違いを補正した。さらに、1897年から1912年の日照率を利用して日射量を推定し、日記からの推定精度を検証した。そして、日記と日照率から得られた推定値と観測値を合わせ、1720年から2022年までの300年を超える長期の日射量データを作成し、解析した。これらは、国内外の学会で報告し、議論した。有益な助言や評価も得られ、データの公開も期待されている。 複数地点への展開については、パラメータ算出データの期間を30年に延長し、18地点の日記から1820年から1850年の日射量を推定した。これらの結果については、人文社会科学分野の研究者と協力し、パネルセッションを企画し発表した。また、経済史研究者の協力による米価変動と日射量変動の解析や、夏季以外の天候の影響を受ける大麦などの作物との解析結果も紹介した。当時の人々は米よりも雑穀を主食としており、大麦の解析は歴史学の観点でも注目された。さらに、復元された日射量分布を議論するため、1900年代から現在までの月別日照時間を利用して日照分布の解析を開始した。 研究データの整備については、日記の収集およびデジタル化を行っている。また、1960年以前の気象観測データの日別値、時別値はデジタル化されていない要素も多く、日照時間のほか、雲量、降水量についても、マイクロフィルムからのデジタル化およびそのデータの整備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究が開始した2020年度からコロナ禍が続いており、2020年度の計画では、前半に予定していた資料調査・収集を延期し、2年目と3年目の研究計画を前倒しすることで対応した。「研究実績の概要」のとおり、日射量の推定方法の改善、推定結果の検証、人文社会科学分野との連携は進んでいる。また、研究発表については、研究者との交流が困難な中においても、国内外での学会発表、論文の投稿を行った。特に、2023年3月末には人文社会科学系の国際会議で発表し、多分野の研究者と意見交換を行うなど、幅広く成果の公表に努めた。 一方、2020年度および2021年度の想定よりも、コロナの影響は長引き、資料収集・整備の遅れだけではなく、研究成果の創出や学会発表、投稿論文など、研究計画全体に影響を及ぼしている。2022年度には、本プロジェクトの計画の大部分を完了する予定だったが、計画の順序変更と遅れに伴い、予定外の作業も増えた。 以上のことから、総合的に判断して、わずかだが遅れていると結論した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、資料の調査および収集、整備を行う。仙台、新潟、秋田などの情報を活用し、史料の少ない東北および日本海側を重点的に進める。 推定方法の改善と日射量の推定値およびその精度検証については、2022年度に進めた気象データのデジタル化により、研究成果の公表の準備が整ってきた。2023年度は、論文および国内外の学会発表とともに、国内外の研究者との議論や連携を促進する。 これまで広げてきた多分野連携において、農業収量、経済変動、人口変動、災害などの具体的な協働研究を進めるため、成果の共有と協働の体制を模索する。研究成果やデータの公開のためのシステムだけでなく、分野横断的な理解を深めるための「場」も検討する。なぜなら、データや結果の伝達において、分野を超えた議論や情報共有が重要と考えるからである。 そこで、18世紀から19世紀に起こったさまざまな気候変動と社会変動の連関解析をケーススタディとし、推定した日射量やその変動・分布を活用し、江戸時代の飢饉の分析や議論を試みる。例えば、2022年度までに進めた夏季の日射分布の変動と米価の分析、大麦の収量との比較に加え、夏季以外の天候が作物の収量や価格、食糧に与える影響に着目し議論する。そのための気候変動解析を検討し、実施する。
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