研究課題/領域番号 |
20K01164
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04020:人文地理学関連
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
荒井 良雄 帝京大学, 経済学部, 教授 (50134408)
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研究分担者 |
箸本 健二 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10269607)
上村 博昭 尚美学園大学, 総合政策学部, 講師(移行) (70835850)
乗川 聡 帝京大学, 経済学部, 講師 (30339668)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 離島 / 離島活性化 / ネットスーパー / 九州地域 / 隠岐諸島 / 飛島 / スマートアイランド / EU / フランス / 改正離島振興法 / 物流 / インターネット / 特産品 / ブランド化 / 地域計画・地域政策 / 離島振興法 / 生活インフラ / 生活サービス |
研究開始時の研究の概要 |
日本の離島の生活インフラは,離島振興法等の政策によって,交通・通信インフラ等の整備が進み,行政制度,事業枠組み,住民組織等の面でも新しい取り組みが行われている.一方,日本の流通システムの全般的な水準は,輸送・物流技術や先端的なICT技術の導入に伴って画期的に向上している.本課題では,新しい離島振興政策と流通システムの発達の下での,離島の流通・消費面を中心とした生活インフラの変容を,商業・物流施設の運営状況等に関する実態調査を中心として明らかにする.さらに,人口減少や少子高齢化にともなう生活サービス需要の縮減に対して,既存の生活インフラをどのように再編・活用しているのかを明らかにする.
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研究実績の概要 |
離島における流通・消費インフラの現状を把握するために,ネットスーパー事業やスマートアイランド事業等について,現地での聞き取り調査やアンケート調査等を実施した結果,以下のような点が判明した. (1) 鹿児島県に含まれる有人離島にネットスーパーのサービスを提供しているスーパーでは,物流業者(ヤマト運輸)が商品を集荷し,フェリーでそれぞれの島へ輸送した後,ヤマト運輸と提携する島内の配送業者によって戸別配送されている.離島を対象とするネットスーパー事業において,ICTは,ピッキングを行う店舗における正確な在庫状況の把握と温度帯別配送商品数情報の共有という重要な役割を果たしている. (2) 流通関係でネット利用の盛んな島根県隠岐諸島の小売業全事業所を対象としたアンケート調査結果から,小売事業者は,島内の過疎化や高齢化による市場の縮小に直面するとともに,安価かつ幅広い商品を取扱うネット通販,島内に進出したチェーンストアとの競合を強く意識していることを確認できた. (3)山形県酒田市の飛島は,高齢化が著しく進み,定期船の欠航が多い冬期には,島内の商店もほとんど営業していないが,最近では,島外からの移住者らによって,島内の活性化に向けた様々な活動が行われている.2022年2月に国の「高度無線環境整備推進事業」によって海底光ケーブルが開通したことを受けて,スマートフォン等を利用して島内での商品配送サービスシステムを構築するフィールド実験等を行っている. (4) 外国での離島の事例では,文献調査の結果,EU加盟国における離島の経済振興政策として, EUによるPOSEI(離島特別選択プログラム)が運営されている.それ以外の小規模な島嶼については、各国が主体となって独自の政策を実施しているが,特にフランス国内では,離島に関する様々な問題の解決は今なお不十分な状況にあることが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までは,新型コロナ感染拡大のために,当初予定していたような離島に対する現地調査を実施することができなかったが.今年度に入って,小規模離島でも,現地調査がある程度可能になったため,ネットスーパー事業やスマートアイランド事業等について,現地での聞き取り調査等を実施した.ネットスーパー事業については,鹿児島県に含まれる有人離島にネットスーパーのサービスを提供している4つのスーパーマーケット(イオン九州、Aコープ、タイヨー、山形屋)の事業内容を分析したが,そのうち,イオン九州については,同社のネットスーパー事業の詳細について,現地での聞き取り調査を行った.隠岐諸島については,諸島内の卸売業・小売業全事業所を対象としたアンケート調査を実施して,近年の本土からの流通事業者の進出や電子商取引の浸透等の影響について分析し,さらに,現地での聞き取り調査を実施して,実態の把握に努めた.一方,最近,本土までの海底光ケーブルが整備され,それを前提に2021年度および2022 年度の「スマートアイランド実証実験事業」(国土交通省)にも採択された山形県酒田市飛島については,季節の異なる時期に複数回の現地調査を実施し,本土までの交通条件の非常に厳しい小規模離島での生活に対して,高度情報化がどのような可能性を持ちうるのかを検討した.さらに,外国での離島における流通・消費インフラの事例の把握のために,EUおよびフランスに関する予備的な文献調査を継続した.このように,新型コロナ禍の影響がまだ払拭されていない状況下でも,今年度はある程度の調査実績を上げことができたが,渡航条件が限られる離島を対象とする研究であるために,実質1年間では,現地調査等がまだ不足しているので,研究期間を1年間延長し,さらに現地調査・資料分析等を継続することとした.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに新型コロナワクチン接種がかなり進んだことから,小規模離島等へ研究目的で渡航することの制約が概ね解消されたため,今年度は,これまで文献やネットでの情報収集を行ってきた離島での現地調査を本格的に開始し,これまで準備を進めてきた隠岐諸島での現地調査,および,すでに予備的な現地調査を行った酒田市・飛島での追加の現地調査を進めた.今後は,事例調査の幅を広げるために,たとえば,飛島に類似した条件下にある新潟県粟島の現地調査などを検討したい.一方,離島でのネットスーパーの状況については,すでに実施した現地調査に加えた事例の検討を進める.さらに,EU等の離島地域振興の実情把握のために,文献調査を継続する.
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