研究課題/領域番号 |
20K01186
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小谷 真吾 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (90375600)
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研究分担者 |
河合 文 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (30818571)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 人口人類学 / 狩猟採集民 / マレーシア / オラン・アスリ / 小集団人口学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、現代東南アジアの狩猟採集民における人口学的現象を人類学的に研究するための理論的、方法論的枠組みを確立し、生起する問題を考察していくことを目的とする。主な対象は、マレーシア半島部に居住するオラン・アスリ集団とする。現在、対象集団で観察される人口学的現象は爆発的人口増加である。この現象に対して、長期のフィールドワークにもとづいたミクロな民族誌的記述を行なうことによって、対象集団および世界の狩猟採集民における人口増加の社会文化的要因、および人口増加の問題性を明らかにしていく。
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研究実績の概要 |
本研究は、現代東南アジアの狩猟採集民における人口学的現象を人類学的に研究するための理論的、方法論的枠組みを確立し、生起する問題を考察していくことを目的とする。主な対象は、マレーシア・クランタン州のポス・ルビルとクアラ・コ、およびトレンガヌ州のスンガイ・ブルアの互いに隣接する3つの定住村落に居住するオラン・アスリ集団である。 2022年度は、新型コロナウイルスの影響がやや少なくなったとはいえ、依然対象村落におけるフィールドワークの実施は困難であった。一方、ようやくマレーシアへの渡航制限が緩和されたことにより、代表者、分担者ともに、カウンターパートとの対面状況での研究連携は積極的に展開できた。具体的にはまず、カウンターパートであるスルタンザイナルアビディン大学が企画した国際会議(Roundtable Discussion on Orang Asli Research Faculty of Applied Social Sciences)の講演者・参加者として、オラン・アスリ集団の直面する様々な問題にかんする情報交換を行った。その過程で、マレーシアに滞在することにより、都市に居住するオラン・アスリ集団およびその研究者とのネットワーク構築に努めた。また、分担者が別のプロジェクトとして企画した東京外国語大学における国際会議(Changes in Orang Asli Lives in Malaysia: Engaged Vidual Ethnography)に主催者・講演者として参画した。この会議では、内外の研究者、およびオラン・アスリ本人たちが参加し、オラン・アスリをとりまく状況の変化と問題について情報の共有を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度も、新型コロナウイルスの影響により前年度から引き続きフィールドワークが一切実施できない状況であった。人類学的研究を第一の目的とする本研究においてフィールドワークの実施は研究遂行に必須であり、本研究が成果を出していくためにこのような状況が大きな困難であることは間違いない。研究計画では、2022年度も対象集団における人口動態に関するフィールドデータを収集する予定であったが、前年度に引き続きその計画は進捗していない。 一方、オラン・アスリ集団およびカウンターパートとの関係の醸成は進捗しており、スルタンザイナルアビディン大学が企画した、対面でのオラン・アスリ集団に関する国際会議に講演者として参加した。また、国際会議を分担者が主催し、オラン・アスリ集団全般に関する情報共有を行うととも、本研究の今後の展開を模索することを試みた。それらの国際会議も含め、本研究に関連したこれまでの調査データを用いて、代表者、分担者共に、狩猟採集という生業の再検討、あるいは人口人類学という枠組みの検討について論考を発表することにも注力した。最新のフィールドデータではなくとも、研究目的の学術的位置づけをはかる試みは継続して行っている。 次年度に向け、フィールド調査実施の方策を探るとともに、オンラインで成果を出す手段を引き続き検討していく予定である。具体的には、電話あるいはSNSによるコミュニケーションを通じて、定性的な情報を収集できることを確認する一方、活動調査、人口動態の把握、あるいは参与観察的情報収集が困難であることを再確認した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、これまでに構築したネットワークを最大限に活用して、現地フィールド調査を集中的に実施する。具体的には、参与観察とインタビューにより、人々が直面する問題群を記述していく。生活時間調査および食餌調査を平行して実施することにより、定住の状況、資源の枯渇の状況、教育・就業の状況、貧困の程度、集団成員間の格差にかんするデータを収集する。収集した民族誌的データを統計データと比較し、また状況の異なる3村落を比較することにより、人口増加、定住化と社会経済的問題群の関係性を分析する。 また、マレーシア統計局およびオラン・アスリ開発局の発行、所有する統計データを、調査許可をとった上で入手し、センサスの基礎とする。オラン・アスリにかんする統計は欠損が極めて多く、定住村落に「居住」する人々に対するインタビューによってセンサスを補完する。社会経済的状態にかんする統計も補完した上で、センサスとの関係を分析する。 また、カウンターパートであるスルタンザイナルアビディン大学を通じて、マレーシア統計局およびオラン・アスリ開発局との協力関係を継続し、信頼できる統計データを入手する。また、前年度までにある程度可能性が見えてきたオンラインを用いた人類学的方法論を引き続き精緻にしていく。具体的には、カウンターパートを通じて、対象集団の日常生活にかんする情報をオンラインで収集する方法、人々の生の声を電話やSNS等で聞き取る方法論を精緻化していく。
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