研究課題/領域番号 |
20K01209
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
菅野 美佐子 青山学院大学, 地球社会共生学部, 助教 (80774322)
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研究分担者 |
押川 文子 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 名誉教授 (30280605)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | インド / ジェンダー / 文化人類学 / 高齢者 / 地域研究 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、北インド地域を対象に、高齢女性たちがグローバル化や経済成長の著しい現代インド社会がもたらす新しいテクノロジーやライフスタイル、ネットワーク等にアクセスする機会から排除されたり周縁化されるはばかりでなく、それらに自らアクセスし、社会や家族と能動的かつ戦略的につながろうとする生活実践の諸相を文化人類学的見地から明らかにする。同時に、ジェンダーの視点を取り入れ、家父長構造やジェンダー規範の再生産を担ってきた高齢の女性たちが、老いを生き抜くために自ら家父長制を解体し、規範や家族を再編していくプロセスにも着目し、インドにおける従来のジェンダー論を超えた理論的枠組みの構築を試みる。
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研究実績の概要 |
本研究は、社会や家族と能動的につながろうとする高齢者の生活実践の諸相を解明することを目的としている。これらを明らかにするために、本研究ではインド農村および都市社会を対象とした人類学的調査を基礎とし、社会学や統計学的研究も有機的に関連づけながら、高齢女性の実態をモビリティ、消費、行政サービスの利用状況、身体的・知的感覚や感情への対処などの多角的な観点から分析する手法をとっている。 令和5年度は、研究代表者(菅野美佐子)が健康上の理由により、1年のほとんどを病気療養に費やしたため、現地調査や研究会、学会活動などの実施が叶わなかった。そのため、療養期間中に可能な研究作業として、前年度に実施した現地調査にて収集したデータなどの整理や文献・資料の分析や検討などを中心に進めた。これらの作業を通じて特に注目したのが、社会経済的変化が高齢者に及ぼす影響についてである。良好な経済成長が見られるインドにおいて、インフラの整備や、生体認証機能を備えた身分証明カードの発行が進み、これまで滞りがちであった高齢者への年金支給が潤滑化するなどの変化がもたらされている。 それに加え、医療の発達や栄養の改善などにより、インドにおける寿命は健康寿命を含めて大幅に伸びてきている。前年度に実施した現地調査では健康かつ経済的に良好な高齢者が増加している中で、充実したシニアライフを過ごそうとする積極的な行動も散見された。また、既存の研究では、老齢期にある女性の息子などの家族への依存度がきわめて高く、高齢女性のモビリティはきわめて限定的であるとされてきたが、調査の中ではヨガ教室への参加や旅行など、老後に楽しみを見出そうとする女性の状況も見えてきた。このような調査結果を鑑みて、女性規範にこだわらずにシニアライフを積極的に楽しもうとするインド女性を扱った人類学的文献を中心に、議論の分析・検討を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は当初の計画として、前年度に実施した現地調査の結果をさらに深く追求するために、現地の研究者との交流を図り、意見交換をしつつ追加調査を実施し、調査対象者からのより多くの情報収集を進める予定であった。しかし、研究代表者に健康上の問題が発生し、長期間の病気療養を強いられたため、現地調査を実施することが不可能であった。また、調査結果に基づき国内学会での発表や、国内外から同様の研究を進める研究者を収集し、所属大学にて国際シンポジウムを開催することを計画していたが、同様の理由により断念せざるをえない状況となった。 当初の研究が困難になったことを受け、病気療養中に可能な作業として資料の収集および前年度の現地調査結果の分析検討を進めたが、体調に問題を抱えながらの作業は難航し、十分に成果を得られたとは言い難い状況がある。本研究の当初の目的を達成するために、研究機関を延長した令和6年度には、令和5年度に実施予定であった現地調査および国際シンポジウムを実施し、インドの高齢女性研究に資する成果を出したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、前年度に体調不良のために断念した現地調査を可能な限り進める予定だが、健康状況によって渡航が難しい場合は、現地のインド政府が公開する全国家族健康調査や国勢調査を含む入手可能な統計データや、'India Today'、'Times of India'、 'The Hindu'といったオンライン出版の現地新聞などでの情報収集とその分析を進める。インド渡航が可能な場合は8月および2月に現地調査を実施し、デリーなどの首都圏や地方都市の高齢者コミュニティを訪問し、シニアライフへの向き合い方として、家族やコミュニティメンバーとの関係性、健康維持への取り組み、経済的なやりくりなど、様々な側面で何をどのように選択し、実践しているのかについて聞き取り調査や参与観察を実施する予定である。 また、研究議論に関する洞察を深めるために、研究分担者や関連の研究を行う国内外の研究者と連絡をとり、対面及びオンラインでの積極的な交流を通じて議論を行ったうえで、「インドにおける高齢女性の生き方、あり方」を基本的なテーマとした国際シンポジウムを開催する予定である。 以上を通じて到達した成果は、日本南アジア学会で学会報告を行うほか、同学会が発行する『南アジア研究』などの学会誌への執筆および投稿を進めたいと考えている。
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