研究課題/領域番号 |
20K01222
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
三尾 裕子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (20195192)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 台湾系移民 / 八重山諸島 / 文化人類学 / 移民 / 農業開拓民 / 石垣島 / 土地 / 宗教 |
研究開始時の研究の概要 |
「華僑・華人」と言われる人々は、現在グローバル経済の中で躍動している。また歴史的にも、移住先社会で刻苦精励して労働者や小商人からビジネスの世界で成功を勝ち取って世界を股にかけて活躍してきたといわれている。しかし、そうしたイメージゆえに、それ以外の「華僑・華人」の存在は捨象されてきた。本研究では、日本の八重山諸島に定着した台湾系の農業開拓民を主たる研究対象にし、海外の同様な移民(例えばハワイの中国系移民など)を視野に入れながら、現地に定住して現地社会に根付いていった「華僑・華人」の社会や文化の全体像を明らかにし、ステレオタイプ化した「華僑・華人」研究を刷新したい。
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研究実績の概要 |
農業開拓民として沖縄県の八重山諸島に入植した中国系移民(台湾出身の漢族移民)を対象にすることによって見えてくる「華僑・華人」像が、従来の労働者・商人型の「華僑・華人」とどのように異なり、それによって、旧来型の「華僑・華人」像をどのように相対化できるのかが、本研究の「問い」である。このため、石垣島を中心とする八重山諸島の台湾系移民を対象に、彼らがどのように現地に入植し、定着していったのかを歴史史料とインタビュー、参与観察を通して明らかにすることを目的とした。具体的には、台湾系移民の多くが参加する4月初旬の清明節や、新築した石垣島福徳廟(土地公廟)に神像を安座する儀礼の時期を利用して、集中的に参与観察やインタビューを行った。また、彼らが石垣島でどのように土地を開拓し、所有していったのか(または、できなかったのか)についても調査を行う予定であった。しかし、土地所有については、かつては資料の取得が比較的簡単だったようだが、現在は役所において個人情報保護の壁が厚くなったため、当初の計画通りには進まなかった。この他、2022年6月には、アメリカ合衆国シアトルで行われた世界台湾研究大会(World Congress of Taiwan Studies: WCTS)に参加し、日本の植民地主義と台湾人の宗教について論じる研究発表を行った。また、シアトルにおける日系人社会、中国系移民社会についての初歩的なサーベイも実施した。シアトルにおいても、日系人にはイチゴ栽培などの農場経営に携わった移民が多かったが、中国系にはそうした農業民は非常に少なかったことが対照的であった。更に、帰途においてハワイにおける調査も現地の研究者などと連絡を取りつつ探っていったが、コロナの流行状況をかんがみて、今回は回避した。 なお、研究協力者の松田良孝氏は、8月、10月に旧盆の施餓鬼に関する調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、コロナの流行状況も次第に落ち着きを見せたため、現地での研究も比較的スムーズに進むようになった。これまであまり接点がなかった方々にもインタビューを行えるようになったが、他方で、高齢者の中には2年余り外部社会と疎遠になったために、心身の衰えなどを見せる人も出てきた点が心配である。12月の新廟における神像安座儀礼調査においては、台湾式の宗教儀礼における慣習に沿った形で儀礼を挙行する台湾人職能者と石垣在住の台湾系住民との間の相互作用を観察することができ、台湾系住民の現地化が進行していることを確認することができた点は興味深かった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に向けて、コロナ禍の中で遅れがちであった調査を加速させる必要がある。特にまだアクセスすることができていない住民に対するインタビューを集中的に進めたい。また、公的な資料の取得が難しい中、新聞記事の収集や存命の高齢者に対して開拓に関する記憶などを早急に聞き取っていくことが急務であろう。
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