研究課題/領域番号 |
20K01229
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
青木 恵理子 龍谷大学, その他部局等, 研究員 (40180244)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 儀礼 / モノコトつくり / 詩的言語 / グローバル観光市場 / 現代的フェティシズム / 不可知の力 / 社会的構築としての芸術 / 物自体としての芸術 / 身=心 / もの―こと / 自明性からの解放 / re-presentation / 市場 / アート / 人類学 / フェティッシュ / モノ / 想像力 / 創造力 / 捏造力 / 人類 |
研究開始時の研究の概要 |
現代社会において、特に都市部にくらす中産階級以上の人たちにとっては、世界中どこでも、アートあるいは芸術は、無条件に「善きこと」とみなされている。この現象を指して社会人類学者ジェルは、「アート・カルト」と呼んでいる。この現象は18世紀に西洋で始まり、1990年以降世界各地に広まり、益々盛んになっている。しかし、発信力のある都会に著しい現象であり、現在でもこの現象と無縁の地域が世界中に散見される。つまり、これは歴史的に形成された、普遍的ではない現象である。本研究は、様々なアート現象を追うことにより、大都市に中心をもつ現代社会を人類学的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
2023年には世界各国でCOVID19の危険性が低下したと位置づけられるようになり、国内外の移動がより容易になった。感染の危険に注意を払いながらインドネシア南東部に位置するフローレス島での約一か月の調査を実施したことが、2023年度の特筆すべき点である。フローレス島では1979年以来、儀礼、現地の「伝統」宗教、贈与交換、社会生活のなかの詩的言語などを中心に調査をしてきた。4年ぶりとなる、2023年10月から11月の調査では、観光振興や国家的事象と相関することによって引き起こされた、彼らの生活にとって重要な儀礼と贈与交換における「もの」と「こと(振る舞い)」の変化を間近に見聞した。 以下のような国内調査も実施した。障害者アート作品調査三件を山口県と山梨県において実施し報告書にまとめた。山梨県では、八ヶ岳アーツアンドクラフツ・ネットワークの調査も行った。インドネシアの現代作家の来訪に合わせて福岡県九州芸文館を訪れ、展覧会設置と現代版ワヤン(ジャワ伝統影絵)上演の参与観察を行った。在熊本県国立療養所恵楓園絵画クラブ金陽会の作品調査に合わせ、同園及び関連施設で調査を行い、金陽会作品展示をライフワークとするキュレーターの方にインタヴューを行った。和歌山県で紀南アートプロジェクトの参与観察を行った。 本研究に基づく知見を包摂しながら、共著者11人からなる著書『生の芸術』の編集を遂行するために、理論的な考察を深めた。学会発表「生命の技術/生(せい)の技法/生活の芸術:2022年のフィールドワークに基づく考察」(日本文化人類学会)、「現代におけるアート現象の人類学的考察」(白山人類学研究会)、「フローレス島の村の「大儀礼」:儀礼のアクチュアリティから芸術と環世界論をみる」(インドネシア研究懇話会)及び論文(歴史的現在における『炭鉱の記憶と関西 三池炭鉱閉山20年展』)発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究に費やす時間が確保でき、同時に世界各国でCOVID19による交通制限が緩和されたため、インドネシアおよび国内でのフィールドワークを実施することにより、研究を推進することができた。障害者アート(アール・ブリュット)の国内調査も二年目を迎え、昨年度より深化した調査及び報告書作成が可能になった。11人の執筆者による著書『生の芸術』の編集に携わることにより、理論的探究を推進できた。東南アジア島嶼部及び大陸部の現代アート研究に従事する研究者達のネットワークづくりに着手できた。以上のような理由から、本研究は概ね順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、総括を見据えて、概ね以下の三つの柱に沿って推進してゆく。 ①アート的制作を生の一般的あり方のなかに位置付ける。中心となるのはインドネシアと日本の生である。 ②芸術に関する理論の批判的検討を行う。検討の対象とする理論は、具体的には以下のとおり。(文化・社会)人類学および社会学の芸術研究理論(T.インゴルト、A.ジェル、J.クリフォード、など)、哲学的芸術理論(E.カント、G.ドゥルーズ、F.ガタリ、T.アドルノ、W.ベンヤミンなど)、美術批評(A.ダントー、C.ビショップ、N.ブリオーなど)、アート&クラフト関係理論(W.モリス、J.ラスキンなど)等、その視野がほぼ西洋近現代に限定されているもの。西洋近代との出会いを契機として起こった日本東南アジアにおける「芸術」の誕生を対象にした議論(柳宗悦、近藤啓太郎、北澤憲昭、スジョヨノ、二村淳子、服部正など)。現代芸術を対象にした議論。近代以前のモノコトつくりを対象とした議論。 ③現代におけるアート現象を、フィールドワークおよび文献・オンライン情報から把握する。
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