研究課題/領域番号 |
20K01251
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05010:基礎法学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
桑原 朝子 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (10292814)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 信用 / 意識構造 / 近松門左衛門 / 『冥途の飛脚』 / 飛脚問屋 / 西洋喜劇 / 放蕩息子 / 連帯 / 共同体 / 樋口一葉 / 井原西鶴 / 大坂 / 意識 / 幕藩権力 / 両替商 / 大坂商人 / 相互扶助 / 隔地間取引 / 為替 / 江戸 / 文芸 / 近世日本 / 為替制度 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、①近世日本における隔地間取引と結びついた為替制度の具体的発展の様相、②その発展の背後にある、信用をめぐる人々の意識構造とその変容、③17~18世紀のフランスなどの他の社会と比較した場合の、近世日本の信用体系とそれを支える意識構造の特徴と問題点、という3点の解明を目指す。研究方法の柱はテクスト分析であり、主に初年度に法制・経済関係史料を用いて①を解明し、2~3年目に近世日本とフランスの文学史料とその関連史料の分析により②・③を明らかにし、最終年度に史料分析の結果を総合する議論を構築して成果を発信する。また、全期間を通じて信用に関する研究会に参加し、議論の構築に役立てる。
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研究実績の概要 |
今年度は、前年度までに明らかにした、近世日本の信用に関する制度の多様性や通時的変化を踏まえ、これとの関連において、信用をめぐる人々の意識構造を、より精緻に明らかにすることを試みた。 具体的には、主に近松門左衛門『冥途の飛脚』のテクストを、関連する文芸テクスト等とも比較しつつ、見直した。その結果、近松が、現実とも同じ題材の他の文芸とも異なる描き方をしている点が浮き彫りになり、近松が現実のいかなる部分に問題を感じていたかが、より明確になった。例えば、預金を運用して利益を上げることが認められている両替商と比べて、飛脚問屋は寄託物について制約が大きかったが、京・大坂の飛脚問屋の中には小口融資や手形決済などに関わるものもあった。しかし、近松は、飛脚問屋のそのような面は描かず、同業者仲間の結束とこれによる統制を強調し、敢えて自由の乏しい窮屈な面を示したといえる。 また、『冥途の飛脚』をはじめとする近松の世話物のテクストと西洋喜劇とを比較し、近世日本社会の問題点や特徴を解明することにも取り組んだ。西洋喜劇においては、放蕩息子に友人や従者がいてこれを助ける重要な役割を果たすが、近松のテクストでは、放蕩息子と連帯しようとする友人や従者がおらず、西洋喜劇と違ってむしろ父親が息子を助けようとするものの、権力に対しては無力である。特に放蕩息子同士の連帯が働かないという点は、特に町人の間で新たな自律的な商業信用のあり方が求められていながらなかなか上手くいかないことと深く関わっていると考えられ、今後さらなる検討を続ける予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、主として所属機関の仕事や依頼された原稿の執筆による多忙のため、出張が難しく、大阪とパリにおける資料収集・史跡調査を行えなかった。よって、比較対象としての17~18世紀のフランスについての研究と、近世の大坂に関する細かい論点の調査・考察が先延ばしになったが、史料・研究文献の検討と、信用に関する研究会やローマ喜劇に関する講演会への参加を通じて、多様な論点や視角についての示唆を得られたため、研究全体の進展としては、大幅な遅れは回避できた。
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今後の研究の推進方策 |
研究の中核となる資料は既に収集を終えているため、次年度は、今年度実施できなかった現地調査を行い、また新たに刊行された研究文献をはじめとする追加の資料の収集・分析と考察の補完に努める。 年度後半には、研究成果を口頭の報告と論文の形にまとめる予定であるが、英語論文については、謝金を利用してネイティヴ・チェックを受ける。信用に関する研究会については、引き続きオンラインで行われることが予定されているため、参加を続けて考察に役立てる。
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