研究課題/領域番号 |
20K01264
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05010:基礎法学関連
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
松島 裕一 摂南大学, 法学部, 准教授 (70582782)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | フランシスコ・スアレス / 法解釈理論 / 法思想史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、フランシスコ・スアレスの著作『法律および立法者たる神についての論究』をおもな素材として、西欧中世後期から初期近代に至るまで(おおよそ1300年から1650年頃まで)の法解釈理論の特色と変遷を明らかにしようとする思想史的研究である。 具体的には同書第6巻「人定法の解釈、廃止、改変について」の読解を通じて当時の解釈概念の解明に努める。その際、スアレスそのひとの著作にとどまらず、その周辺に位置する法学者たちの文献(註釈書など)を網羅的に参照することにより、スアレスを基点とした法解釈理論の歴史を描き出すとともに、その視角から現代の法律学では見失われている論点や概念に新たな光を当てる。
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研究実績の概要 |
本研究では一貫してフランシスコ・スアレス『法律および立法者たる神についての論究』(以下、『法律論』)第6巻に依拠して当時の法解釈理論の解明に取り組んでおり、今年度は「拡張解釈(interpretatio extensiva)」にかんして、拙稿「包摂と拡張について:スアレス『法律論』第6巻第3章を中心に」摂南法学61号(2023年)を公表した。この論文は前年度の研究成果を活字化したものであり、そこで明らかにしたことは大きく次の2点である。 ①スアレスに先立つ15~16世紀の法学者たちは、学説彙纂などの註解を踏まえつつ、法解釈における「包摂(comprehensio)」と「拡張(extensio)」を明確に区別していた。その際、前者は「法律の根拠(ratio legis)」の「同一性(identitas)」に基づいて当該規範に個々の事案を〝包摂〟すること、後者は「類似性(similitudo)」に基づいて法文を〝拡張〟することを意味していた。 ②他方、立法者の意思を重視するスアレスにとって、「根拠の類似性」に基づく拡張は、立法者の意思を超えるものであり、原則として認めらない。それゆえ、「包摂」の意味も「個々の事案を立法者の意思に包摂する」というように読み替えられており、このことは、「包摂的拡張」という、(前時代の法学者たちには形容矛盾に思われるような)用語法に象徴されている。 以上の研究成果に加え、今年度はスアレスの「縮小解釈(interpretatio restrictiva)」概念(『法律論』第6巻第5章)の解明に努めた。後述するように研究が遅れているため、いまだ活字化されていないが、ドイツの法学者フォルスターの『解釈者、あるいは法の解釈について』第2巻第3章「縮小解釈について」と比較しつつ、次年度においてその研究成果を公表したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度と同様、邦訳の存在しないラテン語資料(スアレス『法律論』の該当箇所および註解学派の文献)を多数読み解いたため、想像以上にその解読に時間がかかり、昨年度取り組んでいた「拡張解釈」にかんする論攷しか公表できなかった。研究期間を延長したので、「縮小解釈」にかんしては、次年度にその成果を公表する計画である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度も記したように、当初の計画では海外出張が予定されていたが、新型コロナウイルス感染症が完全には終息しなかったことに鑑みて、今年度も海外出張を見送った。また、ラテン語文献の読解が本研究の中心的作業であるため、今年度と同じく次年度も着実に関連文献を読み進めていき、研究成果の公表に努めたいと考えている。
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