研究課題/領域番号 |
20K01266
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西村 裕一 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (60376390)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 天皇制 / 国体論 / 憲法史 / 政教分離 / 国家神道 |
研究開始時の研究の概要 |
日本社会に立憲主義の「諸前提」が存在するのかという問いは、日本で憲法学に従事する者にとって避けては通れないアポリアであるところ、とりわけ日本における立憲主義への脅威として指摘されてきたのが、象徴天皇制であった。それゆえ、天皇制に関する解釈論的検討を行うためには、日本社会の現実において天皇制がどのような意義を有し、どのような役割を果たしているのかを理解する必要がある。そこで本研究では、戦前の国体論が戦後の日本社会にどのような影響を及ぼしているのかを検討することを通じて、日本社会に属する人々が天皇ないし天皇制をどのように理解し、どのようなものとして捉えているのかを探究したいと考えている。
|
研究実績の概要 |
今年度は、前年度に引き続き資料収集およびその分析を行った上で、戦前の国体論がはたして戦後の日本に引き継がれているのか否かについて、憲法学説や憲法判例に加えて、社会における言説をも対象として検証することを、主たる課題として研究を進めた。その結果として、かかる課題に関連する研究成果を執筆し、以下に見るように、その内のいくつかを公表することができた。 まず一つ目は、戦前の日本憲法学説史を取り扱った、「日本憲法学説史(戦前編)」である。この論考では、美濃部達吉と上杉慎吉の国体論を比較し、一般には対比的に語られる両者の議論における共通点を析出することを試みた。その上で、両者の国体論に共通して見られる普遍性への志向の弱さが、「人類普遍の原理」に基づくとされる日本国憲法の制定によってどのように変化したのか、あるいはしなかったのかを検討することが、今後の課題となろう。 二つ目は、近代日本に係る政治学的・社会学的研究に関連する論考であり、「改革・階級・憲法――日本社会の歴史的条件」がこれに該当する。これは、戦前と戦後を通貫する近代日本の「土壌」を探ろうと試みたものであるが、憲法解釈論を展開するために近代日本の思想史的前提を解明することを主たる目的としている本研究の観点からは、この論考で得られた「土壌」としての通俗道徳という観点からどのように日本国憲法の解釈論を組み立てることができるのかが、今後の課題となろう。 三つ目は、日本社会についての知見と憲法解釈論との架橋を試みたものであり、その中でも、憲法学における「国民国家的なるもの」に焦点を当てたものとして、「〈声〉の憲法学――包摂と排除」および「「外国人の人権」についての雑感」がある。それに対し、「元首相の「国葬」」は、小論ながらも、日本社会における政教分離のあり方を扱ったものであり、本研究の進展にとって重要な論考であると言えよう。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度も、「研究発表」に列挙したように、研究成果については順調に公表することができたと考えている。しかし他方で、「次年度使用額が生じた理由」で述べるように、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い遠方への出張が依然として困難であったため、前年度に引き続き、海外を含む道外における資料収集や打ち合わせについては、当初の予定通りに行うことができなかった。そのため、当初の研究目的からはやや遅れていると評価するものである。
|
今後の研究の推進方策 |
感染拡大に伴う行動制限も緩和されてきたことから、今年度は海外を含めた道外への出張を積極的に行い、資料収集や打ち合わせを進めることで3年目の遅れを取り戻すことを考えている。
|