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権威主義的憲法体制と違憲審査―中国の「憲法・法律委員会」の検討を中心に―

研究課題

研究課題/領域番号 20K01292
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分05020:公法学関連
研究機関山梨大学

研究代表者

石塚 迅  山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (00434233)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
キーワード比較憲法 / 中国憲法 / 違憲審査制 / 憲法・法律委員会 / 立憲主義 / 憲政 / 法治 / 緊急事態 / 権威主義 / 違憲審査
研究開始時の研究の概要

中国では、近代以降今日に至るまで、折に触れて「憲法あって憲政なし」という(嘆きの)言い回しが、政府指導者、知識人、一般大衆を問わず口にされてきた。憲法が国家権力に対する制限規範ではなく国民の行為規範として存在し機能してきたのである。権威主義的な憲法体制をとる中国において、2018年3月の憲法部分改正において、全国人民代表大会の下に設けられる専門委員会の一つである「法律委員会」の名称が「憲法・法律委員会」に変更され、その業務・職責に「合憲性審査の推進」が加えられた。「憲法・法律委員会」への名称変更は、中国が西欧立憲主義への接近を試みていることを意味しているのだろうか。

研究実績の概要

本研究では、(1)中国における「憲法・法律委員会」への名称変更に至る憲法規定・法制度の変遷、政府・共産党の公式見解、学界の議論について詳細に整理・検討し、(2)同委員会が違憲審査(合憲性審査)機構として機能するための諸課題を考察する。かかる研究を通じて、権威主義憲法体制における違憲審査機構設置の意味、中国憲法と西欧近代立憲主義との矛盾および接合可能性について思索を深めていく。
2023年度は、二度にわたり台湾を訪問し、現地での調査・資料収集、研究者との研究学術交流を実施した。中国への訪問はかなわなかったが、2024年3月に訪日中の中国の人権派弁護士と懇談する機会をもつことができた。
中国における法を用いた国権強化と自由抑圧はますますエスカレートしており、中国の法、司法、法治が西欧のそれらとは異質のものではないか、という問題意識が西欧諸国の研究者の中であらためて急速に高まりつつある。本研究課題である「憲法・法律委員会」の意義と問題点についてもこの文脈、すなわち、中国の「法治」は異質なのかという問いにおいて考察する必要がある。この点、中国において、「憲法・法律委員会」および同委員会が担う合憲性審査に関する研究論文は漸増しており、また、中国当局は「憲法・法律委員会」の業務の法定化・活性化をアピールしているものの、中国の自賛と西欧諸国の問題意識との間には大きなギャップがあることも確かである。
小論「中国におけるCOVID-19への「法的対応」―「武漢封城」を事例として―」と小論「Rule of Law と依法治国のあいだ―中国法の予見可能性から考える―」は、そうした中国の「法治」の異質性についてそれぞれ検討している。また、異質な中国の「法治」はとうとう香港にも延伸したが、その論理について少考したのが、小論「香港人留学生逮捕の衝撃―香港国安法の域外適用と言論抑圧―」である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究の目的は、(1)中国憲法に規定された「憲法・法律委員会」をめぐる制度・学説について詳細に整理・検討し、(2)同委員会が違憲審査(合憲性審査)機構として機能するための諸課題を考察することである。2020年度と2021年度を文献・資料の収集・整理・解読の年に、2022年度を前2年間で得られた知見の総括的分析、研究成果の公表の年にそれぞれあてて、3年間で研究の完成を目指していた。
しかしながら、COVID-19の世界的流行に伴う海外渡航・国内移動の禁止・制限、中国の研究学術環境の急速な峻厳化、人権をめぐる中国と西欧諸国の対立の先鋭化に基づく中国人研究者との研究学術交流の不能という二大要因によって、研究は一定の停滞を余儀なくされた。
研究の期間を一年間延長することで、COVID-19収束(終息)後の台湾への渡航が可能となり、現地での調査・資料収集、研究者との研究学術交流を実施することができた。しかしながら、中国では研究者やジャーナリスト(日本在住の者を含む)の拘束が続き、中国での調査・資料収集・研究学術交流の見通しは立たない。2023年度も、中国で発行される雑誌論文の全文データベースであるCNKI(中国知識資源総庫)のコンテンツ別の購入を行い、雑誌論文の収集・整理・解読を続けた。しかしながら、研究学術環境の峻厳化は研究論文の内容にも少なからず影響を与えており、研究論文の字面を追うだけで制度の実相に迫ることには自ずと限界がある。研究の不十分さを認識し、もどかしさを抱きつつ、得られた知見の総括的分析、研究成果の公表へと歩みを進めることになる。

今後の研究の推進方策

本研究については、期間再延長を申請しその承認を得た。
中国、台湾、香港および日本において、COVID-19の収束(終息)が公的に宣言されたものの、中国での研究学術交流が冬の時代を迎えている中で、今後の研究の推進方法については、特段の奇策があるわけではない。
中国での調査・資料収集が絶望的であり、中国人研究者との研究学術交流が相当困難になっているという現状を確認した上で、所属研究機関での文献・資料の収集・整理・解読を引き続き推進する。また、台湾への渡航はすでに可能となっているため、台湾での調査・資料収集、研究者との研究学術交流を実施し、可能な限り研究の不足部分を補う。中国の外から中国を観察すること、かつて権威主義体制であった台湾の経験を中国の現在と比較すること、これら作業は本研究の発展に有意義なものとなるはずである。
中国を訪問できない状況の中、中国の憲法体制をどのように研究するのか。この数年の新しい研究方法の模索は、本研究課題終了後の研究の展開にあたっても、貴重な経験となるであろうことを信じている。

報告書

(4件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 研究成果

    (20件)

すべて 2024 2023 2022 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (12件) (うちオープンアクセス 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 図書 (2件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] (書評)川島真・小嶋華津子編『習近平の中国』(東京大学出版会)2022年10月2024

    • 著者名/発表者名
      石塚迅
    • 雑誌名

      中国研究月報

      巻: 第911号 ページ: 23-26

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Rule of Law と依法治国のあいだ―中国法の予見可能性から考える―2023

    • 著者名/発表者名
      石塚迅
    • 雑誌名

      『習近平政権の羅針盤―ポスト/ウィズコロナ時代の諸問題とそれへの対処―(報告書)』(一般社団法人日本経済団体連合会21世紀政策研究所)

      巻: ー ページ: 85-98

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 中国におけるCOVID-19への「法的対応」―「武漢封城」を事例として―2023

    • 著者名/発表者名
      石塚迅
    • 雑誌名

      石村修・稲正樹・植野妙実子・永山茂樹編著『世界と日本のCOVID-19対応―立憲主義の視点から考える―』(敬文堂)

      巻: ― ページ: 177-188

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 香港人留学生逮捕の衝撃―香港国安法の域外適用と言論抑圧―2023

    • 著者名/発表者名
      石塚迅
    • 雑誌名

      外交

      巻: Vol.80 ページ: 126-131

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 中国における緊急事態と憲法・憲法学2022

    • 著者名/発表者名
      石塚迅
    • 雑誌名

      憲法問題

      巻: 33 ページ: 34-45

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 法律―中国が目指す「法治」―2022

    • 著者名/発表者名
      石塚迅
    • 雑誌名

      川島真編『ようこそ中華世界へ』(昭和堂)

      巻: ー ページ: 87-105

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 立憲主義を選びなおす2022

    • 著者名/発表者名
      石塚迅
    • 雑誌名

      季報・唯物論研究

      巻: 第161号 ページ: 2-5

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 「憲法あって憲政なし」の国で、あるいは中国の憲法と人権について2021

    • 著者名/発表者名
      石塚迅
    • 雑誌名

      法と民主主義

      巻: 第562号 ページ: 7-9

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] (書評)金子肇『近代中国の国会と憲政―議会専制の系譜―』(有志舎)2019年3月2021

    • 著者名/発表者名
      石塚迅
    • 雑誌名

      歴史学研究

      巻: 第1010号 ページ: 73-76

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] (書評)小口彦太『中国法―「依法治国」の公法と私法―』(集英社新書)2020年11月2021

    • 著者名/発表者名
      石塚迅
    • 雑誌名

      中国研究月報

      巻: 第886号 ページ: 35-38

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 「公然と憲法に違反」―立憲主義、違憲審査制、中国憲法2020

    • 著者名/発表者名
      石塚 迅
    • 雑誌名

      アジア研究

      巻: 66 号: 3 ページ: 103-118

    • DOI

      10.11479/asianstudies.66.3_103

    • NAID

      130007903749

    • ISSN
      0044-9237, 2188-2444
    • 年月日
      2020-07-31
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「小康社会」と「生存権」の論理2020

    • 著者名/発表者名
      石塚迅
    • 雑誌名

      研究中国

      巻: 第11号 ページ: 4-12

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [学会発表] 中国と法治について対話ができた頃―湖南省の行政(法)改革2007-2011―2023

    • 著者名/発表者名
      石塚迅
    • 学会等名
      日本現代中国学会第73回全国学術大会、自由論題3:歴史
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 中国における緊急事態と憲法・憲法学2021

    • 著者名/発表者名
      石塚迅
    • 学会等名
      全国憲法研究会2021年度春季研究集会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Rule of Lawと依法治国のあいだ―中国法の予見可能性から考える―2021

    • 著者名/発表者名
      石塚迅
    • 学会等名
      日本経済団体連合会21世紀政策研究所主催中国セミナー「中国の統治強化がビジネスに及ぼす影響」
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 現代中国における「はん立憲主義」2020

    • 著者名/発表者名
      石塚迅
    • 学会等名
      日本平和学会2020年度秋季研究集会、分科会②憲法と平和、テーマ:中国における立憲主義
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [図書] 世界と日本のCOVID-19対応―立憲主義の視点から考える―2023

    • 著者名/発表者名
      石村修・稲正樹・植野妙実子・永山茂樹(編著)、成澤孝人、高橋利安、小森田秋夫、竹森正孝、長岡徹、石塚迅、他15名
    • 総ページ数
      382
    • 出版者
      敬文堂
    • ISBN
      9784767002552
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] ようこそ中華世界へ2022

    • 著者名/発表者名
      川島真(編)、鈴木隆、山口信治、石塚迅、森路未央、他11名
    • 総ページ数
      342
    • 出版者
      昭和堂
    • ISBN
      9784812221303
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [備考] 国立大学法人山梨大学研究者総覧

    • URL

      https://eradb-ref.yamanashi.ac.jp/html/100007963_ja.html

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] 国立大学法人山梨大学研究者総覧

    • URL

      http://nerdb-re.yamanashi.ac.jp/Profiles/337/0033653/profile.html

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書 2021 実施状況報告書 2020 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2020-04-28   更新日: 2024-12-25  

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