研究課題/領域番号 |
20K01293
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
赤川 理 信州大学, 学術研究院社会科学系, 准教授 (50404950)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | 憲法 / 親の権利 / 子どもの福祉 / 里親 / 里子 / 愛着 / 親の概念 / 子どもの権利 / 憲法上の親の権利 |
研究開始時の研究の概要 |
児童虐待問題における課題のひとつとして,児童福祉施設の長・里親の権限と親権の関係に不明確な点が残されていることがある。この問題は,児童福祉法と民法の関係が理論的に整理されていないことに由来する。この問題を解決する手がかりを得るために,憲法が「子ども」および「親」をどのように捉えているかを明らかにすることが必要である。その際,ドイツにおける「子どもの福祉」の議論と「憲法上の親の権利」の議論を参照することが有益である。「子どもの福祉」と「憲法上の親の権利」の観点の導入により,児童福祉法と民法の関係を適切に整理することができると考えられるからである。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「子どもの福祉」概念と「憲法上の親の権利」の観点から、児童福祉施設の長・里親の権限と親権の関係を整理することであり、ドイツにおける議論を参照してわが国の憲法学にも「子どもの福祉」概念と「憲法上の親の権利」の観点を導入することが有益であることを明らかにしようとするものである。 この研究目的達成のために、2023年度は、里親と親の関係を愛着形成という観点から検討した。ドイツでは里親の法的地位の保護の必要性が議論され、その際に愛着形成の重要性が法律家の間でも共通認識とされてきたので、ドイツの議論を参照した。 里親との愛着形成は、親からの虐待により親元を離れた里子の成長発達にとって非常に重要である。子どもを里子に出すことにより、親の権利は制約を受ける。里親は親より弱い法的保護しか受けないが、全く法的保護を受けないわけではない。 親が行動をあらためたなどの理由で、子どもを親から分離する必要がなくなることはありうる。子どもを親から分離する必要がないのであれば、里子は親元に復帰するのが原則である。つまり、里親里子関係は永続的なものではなく、期限つきのものである。これをドイツの議論では期限のドグマと呼ぶ。期限のドグマは、親の教育能力が回復すれば、里子は里親のもとを離れなければならないということであり、里子と里親の間に構築された愛着関係を大きく損うものである。そこで、里子の愛着の保護のためには、期限のドグマは緩和される必要がある。ドイツの議論を参照した検討の結果、次の成果を得た。里子と里親の間に愛着関係が形成されているかどうかの判断は容易ではないので、里親里子関係が継続しているということはそこに愛着関係が形成されていると強く推定される、ということにせざるを得ない。法的に保護されるべきであるのは、里親里子関係の継続であり、一定の場合には親による子どもの復帰請求を制限する必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、「子どもの福祉」概念と「憲法上の親の権利」の観点から、児童福祉施設の長・里親の権限と親権の関係を整理することであり、ドイツにおける議論を参照してわが国の憲法学にも「子どもの福祉」概念と「憲法上の親の権利」の観点を導入することが有益であることを明らかにしようとするものである。研究1年目にあたる2020年度において、「子どもの福祉」について研究を進め、研究2年目にあたる2021年度において、「憲法上の親の権利」について研究を進めることができた。これにより、ドイツ連邦共和国基本法6条について理解を深めることができた。研究3年目にあたる2022年度は、ドイツの議論における憲法上の「親の概念」と民法上の「親の概念」の関係について、この問題に関する比較的最近のドイツの文献を中心に検討を行った。 2023年度は、これまでの研究を踏まえて、本研究の目的である里親の権限と親権の関係の整理について、ドイツにおける議論を参照しながら、里親と親の関係を愛着形成という観点から検討して一定の成果を得ることができた。したがって、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は、これまでの研究成果を踏まえて、児童福祉施設の長・里親の権限と親権の関係は、憲法の観点からどのようにとらえられるべきかという本研究の課題に対して、現時点での答えを明らかにすることを目標とする。2023年度の研究によって里親の権限と親権の関係についてある程度考察が進んだので、2024年度は、里親の権限と親権の関係についての考察を継続しつつ、児童福祉施設の長の権限と親権の関係についても検討する予定である。その際に、児童福祉施設の長と親の関係がどのようにとらえられるべきか、里親と親の関係がどのようにとらえられるべきかということだけではなくて、児童福祉施設の長と国家の関係はどのようにとらえられるべきか、里親と国家の関係はどのようにとらえられるべきかという視点が必要になってくると考えられるので、そのような視点からも研究を推進する予定である。
|