研究課題/領域番号 |
20K01296
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大脇 成昭 九州大学, 法学研究院, 教授 (30336200)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 災害対応 / 官民交錯領域 / 災害ボランティア / 連邦技術支援庁 / 私有財産と公費 |
研究開始時の研究の概要 |
防災の取組みや大規模災害時の緊急対応においては行政と民間、すなわち官民が相補的に活動する。ところがそのような局面における両者の役割や義務などの分担に関する法原則は、未確立のままである。また後の復旧・復興段階においても官民の間で様々な問題が生じる。とりわけ、租税等を原資とする公費でまかなうべき領域と、民間が自己資金でなすべき領域との区分がしばしば問題となるが、意外にもその法的指針について、学説上も実務上も確たるものは存在しない。 本研究は、民営化論および公財政の統制にかかる知見の蓄積を用いて、災害対応における官・公・民の責任および役割を整序し、規範的な枠組みを構築しようとするものである。
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研究実績の概要 |
本研究における4年間の補助事業期間の3年目となる本年度(令和4年度)においては、これまでの研究活動の中間的な成果を、論文1件(共著の図書)、学会等の口頭報告2件という形で公開することができた。 まず論文である。本研究が対象とするところの、災害対策における「官民交錯領域」では、基盤をなす情報のコントロールが重要となる。すなわち、災害発生時における避難や、その後の公的な支援活動(広義の救助)にかかる情報提供の枠組みをいかに設定するかが、災害対策の成否を左右する。そのような問題関心から、災害にかかる情報にまつわる法領域全体を整序するために書き上げたのが、「避難・救助と法」である。同論考では、現行法制度の内容や過去の経緯、現在の課題などを、多角的に検討した。 次に学会報告では、枠組みをやや広く、感染症の蔓延をも含めた広義の災害・非常事態における経済的支援の全貌について分析した。これが日本公法学会における「感染症対策としての経済的助成等」である。非常事態時に事業者や個人を支えるための経済的助成を、国家(公共セクター)が行うことは現在において当然と考えられている。しかし公費を「官民交錯領域」へと投入するこの助成については、そもそもいかなる観点から正当化されうるのかという点や、その限界が論じられるべきである。この点について報告では、詳細な検討を行うことができた。加えてもう1件の報告は、被災者公的救済研究会でのものである。「『公費投入禁止原則』の部分的修正」と題して、給水装置の修繕費用負担の官民区分に関する地方公共団体レベルの様々なルールや、それらの問題点について検討を行なった。いずれの報告においても、参加者より有益なアドバイスを得ることができた。 総じて今年度は、実り多い研究活動をすることができたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、本年度も新型コロナウイルス感染症による影響があった。しかしながら過去2年間と比較するとその制限の度合いは低くなり、研究活動に対する制約も小さくなった。 その最たる現れは、日本公法学会に参加して報告ができたことである。同学会の会員に対する報告それ自体はオンライン形式で行われたものの、報告者はほぼ全員が開催校の会場に参集し、そこに設置された簡易スタジオから配信が行われた。そのため、報告者は相互に顔を合わせ、報告の打ち合わせや質問に対する応答の分担などの話し合いをすることができた。これは久しぶりの対面での研究活動上のやりとりであり、丸2日間の長時間にわたり、きわめて有意義な意見交換や討議を行うことができた。 またそれ以外の研究会等は、コロナによる制限が厳しかった頃と同じく、オンラインで開催されることが多かった。そこでは遠隔地に居住する多数の研究者や実務家などが高い頻度で報告や質問をする機会を得られ、対面では不可能な交流の機会が数多く確保された。 結果的にコロナの「余波」により、今では対面・オンラインが恒常的に混在する状況が出来上がり、それぞれの方式の利点を享受できるようになっている。本研究の開始時には予想していなかったこのような状況が幸いし、研究の進捗状況は、良好な状態を維持することができている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究の補助事業機関の最終年(4年目)となる。これまで3年間で、コロナによる影響はあったものの、当初予定したいたとおりの研究を進めることができ、昨年度は成果も公表することができた。同時に研究のための資料収集なども進めることができ、資料等の蓄積も満足のいくレベルのものとなった。 また本研究の開始時からは対面のみならず、オンラインによるコミュニケーションのツールを手に入れることができ、以前にも増して迅速かつ安価に様々な人々と交流ですることができるようになった。今後は厳しい外出制限などがなくとも、これら手に入れることができたオンラインのツールを継続的に活用し、研究会参加やヒアリングなどを、円滑かつ効率的に実施してゆきたいと考えている。そして過去3年間にわたって蓄積してきた様々な積み重ねを元にして、本研究の成果をさらにまとめて公表することができるよう、努力を重ねてゆく予定である。
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