研究課題/領域番号 |
20K01338
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05040:社会法学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石田 眞 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 名誉教授 (80114370)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 労働法 / 労務供給契約 / 雇用によらない働き方 / 民事判決原本 / フリーランス / 雇用 / 企業組織 / 歴史法社会学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、<企業組織の変動>と<就業形態の多様化>という二つの視角から導かれる「労務供給契約に対する労働法的規制の3段階モデル」を使用し、現在問題となっている「雇用によらない働き方」の歴史的位置を検討するとともに、それを踏まえて、民法において雇用・請負・委任という名称が与えられている労務供給契約に対する労働法的規制の今後のあり方を検討するものである。
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研究実績の概要 |
本研究は、<企業組織の変動>と<就業形態の多様化>という2つの視角から導かれる「労務供給契約に対する労働法的規制の3段階モデル」を使用し、現在問題となっている「雇用によらない働き方」の歴史的位置を検討するとともに、それを踏まえて、民法において雇用・請負・委任という名称が与えられている労務供給契約に対する労働法的規制の今後のあり方を検討するものである。 2022(令和4)年度においては、主として、第1段階(19世紀)のうちでも、民法制定以前の明治前期における労務供給契約に対する法規制がどのようなものであったのかを、民事判決原本の事件名「雇人」の中の「雇人取戻」に関する裁判例を素材に検討した。その結果、①労務供給契約における雇人取戻の約束の効力が、「条理」などの契約に関する一般法理によってだけでなく「人身の自由」「心身の自由」などを「天賦の自由権」と観念した上で、かかる自由権によって否定されたこと、②労務供給契約を「労力」の「賃貸の契約」とみることによって雇人取戻を否定する裁判例が存在したこと、③明治前期の裁判所は、当時の労務供給契約を規制する実定法規である1872(明治5)年の太政官第295号布告における奉公人の契約期間の上限規制を雇人の取戻を認めない理由として最大限活用したこと、を明らかにした。 さらに、第3段階(21世紀)における労務供給契約に対する労働法的規制のあり方の検討としては、「雇用によらない働き方」の象徴であるフリーランスの法的保護について、労働法的規制と競争法(独占禁止法や下請法)による法的保護の関係についての検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「遅れ」の生じた理由は以下のとおりである。 本年度の当初においては、「労務供給契約に対する労働法的規制の3段階モデル」により、第1段階(19世紀)から第2段階(20世紀)の初期にかけての労務供給契約に対する法規制の検討を、①明治前期における「雇人」をめぐる労働紛争に対する裁判所の判断(裁判例)の実相、②鉱業法における労務供給契約に対する労働法的規制の実相、③工場法における労務供給契約に対する労働法的規制の実相、の三つの実相場面で行うことを予定していた。しかし、研究代表者(石田)が本研究以外にかかえる研究課題の遂行との関係もあり、上記予定のうちの①しか完遂できなかった。②と③についても、資料収集等は行ったが、残念ながら本格的な検討としてまとめることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、2つのことを課題とする。 1つは、前年度やり残した、第1段階(19世紀)から第2段階(20世紀)初頭にかけての労務供給契約に対する労働法的規制である鉱業法と工場法の検討を完成させることである。 もう1つは、第1段階(19世紀)から第3段階(21世紀)にかけての「雇用」に関する法概念の変遷を歴史的に明らかにし、それを踏まえて、「雇用によらない働き方」の歴史的位置を明らかにすることである。
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