研究課題/領域番号 |
20K01346
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宮木 康博 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50453858)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 欧州人権条約6条 / おとり捜査 / 量刑解決 / 手続打切り / 証拠排除 / 公正な裁判を受ける権利 / 欧州人権条約 / Akbay v. Germany / Furcht v. Germany / 捜査 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、捜査活動と欧州人権条約6条1項の定める公正な裁判を受ける権利との関係性を分析・検討し、いかなる捜査活動が公正な裁判を受ける権利を侵害するのか、侵害があった場合の法的帰結はいかなるものになるのかについて、理論構造の解明を目的としている。そこで、欧州人権裁判所の判例の動向、EU諸国の判例・学説において議論されている捜査活動との関係を正面から取り上げる研究は未だなされていない。欧州人権条約6条の公正な裁判を受ける権利とほぼ同内容を定める国際人権規約(14条)を批准しているわが国において、本研究を実施する意義は小さくないと考えられる。
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研究実績の概要 |
2022年度は、仕上げの段階として、捜査活動と公正な裁判を受ける権利の保障の観点から、欧州人権条約6条をめぐるEU諸国の対応について、欧州人権裁判所に係属したドイツの事案を取り扱った。この点の研究成果は、すでに、拙稿「ドイツにおけるおとり捜査をめぐる新たな動向」山口厚=酒巻匡=大澤裕=川出敏裕編『寺崎嘉博先生古稀祝賀論文集[上巻]』(成文堂、2021年)137~158頁において、その一部を公表している。そこでは、これまでの量刑による対応が、公正な裁判を受ける権利の保障に違反し、全面的に排斥されることになったことを明らかにした。 他方で、残された課題として、2020年10月15日のAkbay and Others v. Germany判決を踏まえた、その後のドイツの議論のフォローが残ることになった。そこで、2022年は、その後のドイツの議論をフォローすべく、主要文献であるEsserの"Vbm endgultigen Ende der Strafzumessungslosung bei der Tatprvokation - und der Notwendigkeit einer gesetziichen Regelung ihres Verbots"を中心に検討を進めた(ウムラウトはエラー)。その際に重要な視点は、そもそもなぜドイツが公正な裁判を受ける権利との関係でも量刑による対応を是としてきたのか、その前提となるおとり捜査が刑事手続上、いかなる手続段階のいかなる問題として取り扱われるべきか、また、欧州人権条約6条の公正な裁判を受ける権利の保障がどのような権利として位置付けられるのか、その内実の理解である。2022年は、他の学説とともにこの点の分析・整理を行うことに終始した。そうした研究の成果は、2023年6月に『人権判例報』(信山社)において論文を公表することとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、論文としての公表は、拙稿「ドイツにおけるおとり捜査をめぐる新たな動向」山口厚=酒巻匡=大澤裕=川出敏裕編『寺崎嘉博先生古稀祝賀論文集[上巻]』(成文堂、2021年)137~158頁の1つにとどまっているが、2023年6月に論文の掲載が決定ているほか、最終的な示唆を示す前提となる、わが国の議論状況については、2023年度中に公刊予定の著書等において、分析・整理を示すことができる見込みとなっている。 その意味で、おおむね順調に進展しているといえるが、文献上では、踏み込み切れないそもそものおとり捜査の前提ともいうべき背景にある考え方ないし法的位置づけについては、対象国の研究者とのディスカッションはできていない状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
欧州人権裁判所の判例の展開を跡付けるとともに、ドイツのこれまでの議論を整理・分析してきたが、おとり捜査をめぐる他の欧州人権裁判所の判決を正確に理解するためには、ドイツ以外の対象国の議論状況を整理検討する必要がある。 また、論文等では把握しきれない部分については、現地の研究者との意見交換ないしディスカッションが必要となる。 コロナ禍が収束傾向に向かう中で、今後は、上記方策を積極的に活用し、これまでの分析・整理をブラッシュアップさせながら、日本への示唆に繋げていけるように研究を進めていきたいと考えている。 その中で、ドイツ以外の研究者との意見交換も、おとり捜査がボーダレスに展開される現状においても必要な方法論であると考えている。
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