研究課題/領域番号 |
20K01356
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
只木 誠 中央大学, 法学部, 教授 (90222108)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 終末期医療 / 治療中止 / 患者の事前指示 / 自己決定(権) / 承諾(同意) / 承諾(同意)能力 / 高齢者患者の承諾 / 自殺幇助 / 承諾(同意) / 承諾(同意)能力 / 終末期 / 事前指示 |
研究開始時の研究の概要 |
生命倫理と法の問題について、従来より、ドイツでは先進的な議論が活発に交わされ、スイスでも多くの関連論稿が著されており、社会環境や死生観を含めた文化的背景は異なるものの、その内容は、これまでもわが国の議論に大いに参照されてきたところである。 本研究では、そのようなドイツ、スイスにおいて第一線にある研究者陣の協力のもと、終末期における患者の自己決定、事前指示に関する彼の地の最新理論状況の調査ならびに日欧の立法、法運用状況の比較法的検討を行い、現代における医療の進歩と人の死の様相の変容との相関において求められる医療と法のあり方について、今後のわが国の議論醸成に向けた方向性の提示を目指すものである。
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研究実績の概要 |
課題研究「終末期における治療中止と患者の事前指示」の第3年度にあたる2022年度にあっては、2020年春以降の新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、芸術文化活動全般に支障が生じるという状況のもと、本課題研究においても、同様に、大幅に活動を縮小せざるを得ない状況であった。 そのようななかではあったが、代表を務める日本比較法研究所共同研究グループ主催のドイツ・ハレ大学のロゼナウ教授による講演会「自殺幇助の基本権―ドイツ法における議論―」で、対面形式で同教授、会場参加者との間で充実した意見交換を行うことができたことは有意義であった(10月19日)。一方、年が明けた2023年3月、コロナ感染症に対する規制が緩和の方向となったことから、3年ぶりにドイツへ向かい、ゲッティンゲン大学のデュトゥゲ教授の協力のもと研究活動を行うとともに、3月9日には、ハレ大学でのシンポジウムにおいて"Behandlungsabbruch und Selbstbestimmungsrecht des Patienten"(「治療中止と患者の自己決定権」)と題する講演を行った。また、帰国後、大杉一之氏(北九州市立大学准教授)、秋山紘範氏(大東文化大学法学部非常勤講師)とともに北九州市立病院機構臨床研究推進センター臨床研究推進係長・稲田実枝子へのインタビューを行い、事前指示、ACP(家族会議)、臓器移植と承諾の現状など、臨床現場における医療上の倫理問題の諸問題について話を伺い、成果を得ることができた。 なお、2019年10月に開催された生命倫理と法・日独国際シンポジウムについて、日本語版報告集が一昨年3月に日本比較法研究所叢書として刊行されたのに続き、ドイツ語版についても、その後、ドイツ側事務局・執筆者陣との連絡・調整を重ねた結果、2022年4月、現地にて刊行に至っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度、講演会やドイツのシンポジウムにおける報告、医療関係者へのインタビューなどにおいて対面形式での活動を行うことができたことは、ここ3年間の研究活動において特筆すべき事柄であったと言えよう。しかしながら、標題の研究課題にかかるわが国の現今の状況を考察し、今後に向けた対応の方向性を探るにあたって、当該研究の先端を行くドイツやスイス等、ヨーロッパを中心とした諸外国の状況やその法制度の検証において得られた成果をわが国の議論の場にたたき台として提供することに本研究課題の大きな意義があると考えるところ、上記のとおり、コロナウイルス感染症のもたらした影響は大きく、自粛、制限の状況が続いたことから、実質的に、内外研究者との電子メールのやり取りやオンライン上での限られた調査・作業が中心となったことから、全般的には、やはり、必ずしも活発でスムーズな研究活動が行えたとは言いがたいところであった。 とはいえ、そのようななかでも、2019年秋の生命倫理国際シンポジウムのドイツ語版報告集が無事に刊行されたことは喜ばしく、また、オンラインというツールの活用に研究手法の幅が広がったことはコロナ禍においてのひとつの収穫であった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年5月、WHOにより発せられていた新型コロナの感染拡大に対する「緊急事態宣言」の終了が発表され、およそ3年3か月にわたって続いた世界のコロナ感染症への特別対策は大きな節目を迎えたことになる。今後も、新たな変異株発生の可能性やそれによる再度の流行拡大の懸念も消し去れないところではあるが、社会は、いま、「with コロナ」から「コロナ後」に向けて動き出したといえるであろう。 そのような社会状況のもと、この期間ほぼ停滞していたといってよい本研究活動については、先般承認をいただいた補助事業期間の延長を受けて、2023年度においては、海外での研究活動など、過去の年度において見送っていた諸活動を本格的に再開し、一刻も早く通常の研究活動体制に立ち戻るべく、そのスムーズな再開に向けた準備を整えたい。 具体的には、まず、国内活動としては、比較法的研究の実践という見地から、ドイツなどの法理論や立法・制度内容、先進的な議論状況の精査に力を入れ、また、国内研究者との共同研究を通してわが国における法整備の可能性とその射程に対する試論の形成に取り組みたいと考えている。これには、『終末期医療、安楽死・尊厳死に関する総合的研究』中に、また、同書のドイツ語版中に新たに起こされた各論者の論稿が大いに参考になるであろう。 国外活動としては、上記の通り、海外での調査・研究活動を再開し、意見交換や共同研究やを行うとともに、海外から研究者を招聘し日本側研究者との共同研究を行うことで、試論の形成につながるより有益な成果を得るられるものと考えている。
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