研究課題/領域番号 |
20K01365
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
杉山 悦子 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (20313059)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 電子文書 / 文書の真正 / 電子署名 / 専門知識の調査 / 電子証拠 / IT化 / 民事訴訟 / 民事裁判のIT化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、高度に先進化・巨大化・複雑化したデジタル証拠が民事訴訟手続において重要な役割を果たすようになっていることにかんがみ、これを訴訟手続上どのように取扱うのかという問題について、諸外国の制度と比較検討するとともに、その背景にある証拠法の体系の見直しを試みるものである。併せて、国内で検討が進められている民事裁判のIT化によって、デジタル証拠の位置づけにどのような影響があるのかについても考察をする。
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研究実績の概要 |
2022年度は、2021年度に調査に着手した、電子文書における電子署名とその証拠力についての研究成果をまとめて発表した。現在の民事訴訟法では、押印又は署名のある文書については文書が真正に成立したものとみなされ、押印については印象と印影の一致があれば本人による押印が推定される(二段の推定)が、その利用には限界もあった。他方でコロナ禍以降特にニーズが高まった電子文書で用いられる電子署名については、電子署名法3条により成立の真正を推定する規定が置かれている。そこで同条が多様な電子署名のうちどの類型の署名に適用されるか、本人確認が求められるか、従来の意味の二段の推定が機能するかについて検討を行った。その結果、推定の及ぶ場合は流動的であり、反証の余地もあるため、紙媒体の文書の場合と同様、成立の真正を立証する証拠を保管することが重要であることを明らかにした。また、付随する問題として、電子文書の証拠としての位置づけをめぐる見解の対立を再確認する一方で、近時ではデータそのものを準文書として取り扱う見解も有力になっており、改正民事訴訟法に反映されているがさらなる検討の余地もあることを確認した。 さらに、裁判官が民事訴訟において専門知識を入手する様々な方法のうち、インターネットを通じて情報を入手する場合の手続的な位置づけ、適法性、限界、手続規律について、ドイツやアメリカ、イギリスの議論を参照して検討した成果を、日本民事訴訟法学会大会で報告し、研究者や実務家と意見交換を行ったうえで結果を公表した。 加えて、民事訴訟法のIT化に向けた改正に関して実務家や研究者との対談を行い、理論的な課題について分析をしたり、民事訴訟以外の手続におけるIT化とそこにおける電子文書等の取扱いについても同様に検討を行い、それぞれの検討結果を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内における電子的な証拠や電子文書、電子的な情報の民事訴訟手続及びその他の類似する手続における取扱いについては、近時の立法の動向や実務、解釈論の整理をすることにより、ある程度は全体像を把握することができている。しかしながら、改正法を基礎とした解釈論の展開をめぐってはまだ国内でも十分に検討が始まっておらず、調査に遅れが生じている。 また、、国内外の現地調査については、渡航の制限等により十分に行えておらず、特に海外の情勢については文献調査は継続的に行ってきたものの、入手できていない文献もあるため、調査に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
日本国内の問題については、改正民事訴訟法に関連した文献調査を引き続き行う一方で、改正前の実務や理論の状況と、改正後に予測される状況の比較検討を行い、検討した結果を研究会等の場で報告したり公表するなどして、実務家や研究者と意見交換を行ったり、さらに分析を深める。 海外の状況について、文献収集と調査の作業を引き続き行うとともに、渡航の制限が解除された法域を中心に現地調査を行い、日本国内の状況との比較検討を行う。
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