研究課題/領域番号 |
20K01376
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
青木 則幸 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (30350416)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 担保法 / 動産 / 物権変動 / アメリカ法 / 比較法 / UCC第9編 / 対抗要件 / ファイル登記 / 譲渡担保 / 所有権留保 / シークレットリーエン / ファイリング / 担保 / 動産物権変動 / UCC第9編 / モーゲージ |
研究開始時の研究の概要 |
わが国の動産非占有担保で主流を占める動産譲渡担保では,公示機能を持たない占有改定が対抗要件として利用されてきた。わが国の学説や実務にみられる,これを容認する考え方には,米法の影響のもとに展開されてきている担保取引法の国際水準との著しい乖離がみられる。このような考え方の違いは、いかなる要因に起因するのか。本研究は,米国の動産担保法の対抗関係規範の歴史的分析からこの問題を解明し,わが国の議論への示唆を求める。
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研究実績の概要 |
結果的にコロナ禍による、海外調査等の制限により、延長を余儀なくされたものの、本年度は当初予定した本研究の最終年度にあたる。それゆえ、3年間の研究を踏まえ、アメリカ法における担保権の対抗関係における公示の要請の史的展開を整理する検討を行い、その成果を日本登記法学会において発表するとともに、登記情報誌において公表した。その骨子は次の点にある。 米国法の動産物権変動の対抗関係の規律は「公示のない物権変動は、譲渡人の債権者、および、目的物の善意有償取得者に対する詐欺を推定する」とする理論に始まる。物権変動は(一定額以上の動産については書面による)意思表示のみによって有効に生じる。それゆえ、最初の譲受人(担保権者も同様に処遇される)が優先するのが原則である(nemo dat理論)。しかし、その物権変動が公示(現実の引渡し・登記)を伴わない場合、譲渡人(売主・担保権設定者)の債権者および善意有償取得者に対する秘匿行為として詐欺にあたるものと推定する、という物権変動のいわば一般ルールが被占有担保権に典型的に妥当すると考えられたのである。東部の主要法域では、1829年以降主要法域の制定法によって動産登記制度が導入され、対抗関係の規律に一定の役割を果たすようになるが、その規範は、上記の詐欺の防止によるものであり、登記の先後を優劣基準とする規範ではなかった。 UCC第9編による登記制度の導入は、公示のない担保権を詐欺の徴憑とする問題意識を低コストの登記制度で解消しつつ、一面において、登記の時間的な順序を優先規範とする制度を導入する機能を果たし、他面において、物権変動の公示という物権理論を克服するプレファイリング制度を導入する機能を果たしたものといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究期間の最終年度として、研究期間の研究内容の総括的な実績を出すことができ、また、年度末には3年間実施できなかった米国への調査出張を実施でき、上記の実績に関する意見交換を行うことができた。もっとも、3年間の海外調査の停滞により、未消化の部分があり、期間の延長を申請するに至ったが、その理由は本年度の停滞というよりも、昨年度までのコロナ禍による社会停滞が厳しい時期に由来する停滞である。その意味で、おおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度末に実施した米国出張による現地研究者との意見交換を踏まえ、申請時に予定していた研究期間の実績によって得られた知見につき、修正のうえで総括を行う。
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