研究課題/領域番号 |
20K01381
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
松本 克美 立命館大学, 法務研究科, 教授 (40309084)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 性的被害 / 損害賠償請求権 / 消滅時効 / 起算点論 / 援用制限論 / 児童期性虐待被害 / 性暴力 / PTSD / トラウマ / 児童期性的虐待被害 / 損害賠償請求権の消滅時効 / 児童期性的虐待 / セクシュアル・ハラスメント |
研究開始時の研究の概要 |
性的被害に対する損害賠償請求権の消滅時効論について、先行して法改正を実現してきたドイツ法での法改正の契機、理論的・実務的な視点からの法改正の評価、法改正後の実務上の成果と課題について調査研究を行う。また、現在、この分野での法改正論議を行なっている韓国での法改正の契機、理論的評価、実務上の課題などについて調査研究を行う。 これらの研究成果も踏まえて、性的被害の損害賠償請求権の消滅時効の解釈論(特に起算点論、時効の援用制限論)、立法論(特に期間論、停止論)につき具体的提言を行う。
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研究実績の概要 |
本科研費の研究テーマである性的被害に対する損害賠償請求権のうち、とりわけ児童期の性的虐待被害は、加害者による被害者の権利行使が阻害される類型の損害賠償請求権である。そこで、権利行使阻害型不法行為という観点からの消滅時効起算点論、援用制限論をテーマにした論文を執筆し、公表した(松本克美「『権利行使阻害型』不法行為による損害賠償請求権と消滅時効」立命館法学409号(2023年12月)1745-1760頁)。権利行使阻害型不法行為には、殺害して死体遺棄などの「不法行為隠蔽型」、被害者が損害を被ってもそれは不法行為ではないと信頼させる「不法行為不存在信頼惹起型」、冤罪で有罪判決が確定した場合のような「不法性潜在型」、支配ー従属関係の中で被害者の権利行使を直接間接に抑圧する「権利行使抑圧型」の不法行為がある。特に実父や養父。その他、親族による児童期の性的虐待被害は、被害を他の家族にも訴えられない「権利行使抑圧型」不法行為の側面が強いので、その特性に即した消滅時効論の深化が必要でああることを論じた。 また、性的被害時にPTSD等の被害が発症したが、その後、鎮静化した被害が、長期間を経て再発する場合もある。このような再発被害については、当初の損害とは別個の損害として時効起算点を別途起算すべきであることを論じた(松本克美「再発損害の消滅時効・20年期間の起算点―別個損害別途起算点論―」立命館法学407号(2023年6月)266-289頁)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
性的被害に固有な消滅時効の起算点論、援用制限論の検討を順調に進めている。上述したように、前者については、権利行使阻害型不法行為類型の一つとして、時効起算点論をその加害と被害の特性に即して深化させるべきことを明らかにしてきた。後者については、そもそも時効の起算点を論じる前に、当該事案において加害者が消滅時効を援用すること自体が信義に反し、権利の濫用として許されないという立論を展開すべきという問題提起を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
性的虐待被害の損害賠償請求権については、消滅時効起算点を論ずる前に、そもそも消滅時効を援用すること自体が権利の濫用として許されない場合があることを検討する。そのために、性的虐待被害以外の事案も含め、消滅時効の援用が信義則違反、権利濫用として許されないとした裁判例で、時効起算点の解釈と、援用制限論の関係を事案に即して分析し、時効期間が経過していることを明確にした上で、援用制限を認めたのか、それとも時効が経過しているかはともかく、そもそも時効の援用が信義則違反、権利濫用として許されないと判断しているのかについて分析する。その分析結果を踏まえて、さらに、後者の観点の重要性についての問題提起を行う予定である。
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