研究課題/領域番号 |
20K01386
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
川村 力 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (70401015)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | マネー / 市場 / 歴史学 / ガバナンス / 金融 / デモクラシー / 貨幣 / 市民社会 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、政治社会や市民社会に対して、市場をはじめとする経済がどのような関係に立つかという問いを立て、この問題の根本的な検討として歴史研究を行うものである。問題の過度の抽象化も細分化も避けるため、一方で現代の市場とガバナンスの関係を巡り世界的に分岐する2つのモデルそのものの対抗を入り口であると同時に出口とし、他方で古代の政治社会と経済の関係における歴史上の大きな転換点に登場した貨幣に着目した分析を出発点として、冒頭に示されたごとく射程の長い問題に、個別の精度を追求しつつ全体構造を把握することを目指し、もって現代社会の問題把握と分析を行うものである。
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研究実績の概要 |
本年度は研究計画において中核を構成する3年目であり、これに対応して本研究の実体面での中心となる作業、(a)現代の金融およびその市場と組織の関係をめぐる問題の分析と、(b)歴史社会において金融を結節点としてその社会構造を複層的に分析する作業とを継続する中で、とりわけこれらを統合するための方法論の検討により比重を移した。 具体的には、(a)については、第一に、2008年の金融危機を契機として20世紀全体のマクロ経済学の前提を批判的に問い直す作業に着目し(吉川洋『マクロ経済学の再構築』(2020年)等)、既存の体系の数理的解体と再構築、市場経済の構成要素の再統合といった新たな基礎を構築する試みの進展を確認しつつ、第二に、中でも経済社会全体の鍵となる要素として金融に着目する経済学法学の議論のリサーチを行い、国家と市場の間の金融の位置を複層的に捉えつつ、rational choice modelとsocially embedded approachを包摂した金融理論を追求する2010年代以降の議論を広く検討した。 他方(b)として、emporionに着目した。政治・デモクラシーの構造的な変動とemporionの語のフィロロジカルな展開と取引形態との変遷の関係を跡付け、新たな地平を切り拓いたかに見えた1980年代の議論は、1990年代以降emporionの外縁を広く構えて普遍的かつ多元的な文化の結節点と見る比較人類学的関心に埋没し混乱しつつあったが、改めてフィロロジカルにemporionの射程を区分けして紀元前6~5世紀のフェーズを取り出し、その意義を、鋳造貨幣の登場、韻律と文字の登場等、海上交易をギリシャ世界の構造変動の重要な鍵として位置付ける研究の系譜を特定し、この研究の系譜を基礎として交易や貨幣―商業と金融の諸層―をトータルな社会変動の中に位置づける着想を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由としては、大きく以下の2点を挙げることができる。 第一に、本研究では、現代および歴史社会の双方で、金融を政治経済社会の全体を分析する軸とし、その双方の全体像を突き合わせて検討することを目的とするところ、その切り口として構える金融はその定義自体が既に視角を要し、現在進行形で生起する問題ないし問題関心を整理してその構造に十分に自覚的に問題を立てることは不可欠のステップであった。この点、2008年の金融危機を少なからず梃子として進展した学説史・理論史を踏まえた2010年代の金融学説のサーベイを実行し、かつこれに対し歴史社会についてもひとまず分析視角を特定して多少なりとも並置することができたことは、不可欠のステップを少なからず立体的にし得たと考えられる。 第二に、現代の金融と古代社会における問題整理から、双方に具体的な個別のリサーチの課題が特定されると共に、中間の歴史社会である中世と手形取引の意義について、分析に加えるための若干の構想を得つつある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究の最終年度にあたり、第一に、現代の金融及びこれを通じた政治経済社会に関する議論の蓄積につき、本年度までに行ってきた分析を元に、理論的見通しをまとめて公表する作業を行う。 第二に、紀元前6~5世紀のemporionに関する学説のアスペクトを比較して問題のアプローチの構造を整理すると共に、とりわけエトルリアのemporionに近年蓄積されている考古学データを通じた、個別事例の分析を進めることを予定しており、可能な範囲で成果としてまとめることを想定している。 第三に、2010年代の金融研究では、イングランドの銀行と商業貸付、国庫との「共犯関係」も少なからず注目を集めているが、これを中世イタリアと比較する動きも出つつあり、これら研究動向を参照しつつ、イタリアとフランスの銀行及び手形の金融システムにおける位置付けについても、検討を行うこととしたい。
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