研究課題/領域番号 |
20K01390
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
デ.アウカンタラ マルセロ お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (20565676)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 家族法 / 比較法 / 親子関係 / 非伝統的家族 / 複数の実親 / ヨーロッパ人権裁判所 / 非伝統的な家族 / 国際家族法学会 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、家族形態の多様化が進み、従来の家族モデルに当てはまらない家族が増えている。しかし、子連れ再婚家族やLGBT家族のような非伝統的な家族において、子と育ての親との間で長期間にわたり実親子と同様の生活実体を形成してきたのにもかかわらず、法律上の実親子関係は認められないことが多い。一方で、育ての親に愛着を抱いている子の最善の利益を考慮すれば、法律上の複数の実親が認められる余地があり、諸外国では実際に立法や判例の動きがみられる。本研究では、従来の実親子関係を比較法的な観点から再検討し、法律上の複数的な実親子関係について解釈論・立法論的な動向を分析し、日本法における議論への示唆を得ることを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究課題の第四年度にあたる2023年度においては、ベルギー・アントワープ大学にて行われた第18回国際家族法学会大会に参加し、日本において非伝統的家族が直面する法的問題やヨーロッパ人権裁判所の非伝統的家族の法的保護に関する判例法から得られる日本法への示唆等について発表を行った。また、同セッションの座長(Chair)として司会・進行役を務め、他の報告者及び参加者とともに議論を行った。さらに、その研究発表の内容を取りまとめたLegal Protection of Nontraditional Families in Japan: Lessons from Europeと題する査読付き論文が、お茶の水女子大学人文科学研究第20巻に掲載された。 伝統的家族形態に該当しないとされる家族の法的保護に関するヨーロッパ人権裁判所の判例法が、近年発展している。同裁判所は、積極的義務や比例性原則、評価の余地理論、締約国間のコンセンサス理論等の様々な法的メカニズム・解釈ツールを用いることにより、対立する利益を衡量し、多様な家族形態を法的に均等に取り扱うことを保障しているため、人権保障制度を柔軟に運用できていると考えられる。このようなヨーロッパ人権裁判所の動きに照らして、日本の裁判所が違憲審査制の範囲内で多様な家族形態を法的に均等に取り扱うことを保障するために、対立する利益を衡量しつつ、ヨーロッパ人権裁判所が採用しているような様々な解釈ツール等を通じて解釈論を展開できる余地があることが示唆された。 また、ヨーロッパ人権裁判所の非伝統的家族の法的保護に関する判例法が締約国の国内法改正に影響を与えていることから、日本において多様な家族形態を受け入れる法制度や法律上の複数的な実親子関係を保障する法制度をどのように整備すべきかを考えていく上で、参考となる重要な示唆を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症拡大の影響に伴い、本研究課題の初年度から海外渡航が困難となったため、外国法関連の資料収集等に支障を来し、計画の進捗に遅延が生じたためである。
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今後の研究の推進方策 |
補助事業期間の延長承認により最終年度となった2024年度は、国際家族法学会(ISFL)での発表内容について「家族と法研究会」にて日本語による発表を行い、民法・家族法を専門とする国内の研究者らに助言を仰ぎながら非伝統的家族を支える法整備等について考察する予定である。 また、日本における法律上の複数的な実親子関係を保障する法制度をどのように整備していくべきかという点を含めた研究全体を総括し、課題や限界を整理する予定である。
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