研究課題/領域番号 |
20K01394
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
名津井 吉裕 大阪大学, 大学院高等司法研究科, 教授 (10340499)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 判決効の主観的範囲 / 第三者に対する判決効の拡張 / 訴訟担当 / 信義則による判決の拘束力 / 対世効 / 既判力拡張 / 団体関係訴訟 / 人事訴訟 / 反射効 / 依存関係 |
研究開始時の研究の概要 |
確定判決の効力が第三者に拡張される場合としては、訴訟担当型、対世効型、実体関係依存型等の類型があり得る。第三者に既判力を拡張するための正当性は、その内容・程度等につき当事者間の既判力とは事情が異なる。とりわけ対世効型や実体関係依存型のような特別な判決効が当事者間の既判力と同様に作用するものとすれば、その正当性も同等でなければならない。民法の改正によって新たな問題も生起している中で、判決効拡張のメカニズムおよび正当性はいまだ解明も検証も不十分なままである。本研究は、確定判決の後訴に対する通用力の本質が問われる第三者に対する判決効の拡張に着目し、上記の類型を貫く視座の獲得を目指す。
|
研究実績の概要 |
団体を当事者とする事例において訴訟担当型の判決効の第三者に対する拡張について、成果を論文にまとめた(「第三者の訴訟担当と判決効の拡張――変動する第三者に対する判決効の拡張」『次世代民事司法の理論と実務(池田辰夫先生古稀祝賀)』(法律文化社))。任意的訴訟担当により、他人の権利について訴訟を提起する場合、当事者である訴訟担当者に対する帰属者からの訴訟追行に授権について、担当者たる団体の構成員の地位を有する帰属者が団体を設立する際に行った訴訟追行の授権の意思表示がある限り、構成員たる帰属者は現実の訴訟提起に際して特に授権をしていなくても、訴訟追行の授権を認めて、判決の既判力を及ぼすことができる。実際の訴訟提起を意識しない、団体設立時の授権意思によってこの結果を肯定する以上、当該団体は少なくとも当事者能力が認められる手続主体としての要件を具備する必要があるが、他方でそうである限り、たとえ提訴に反対の構成員がいても、この帰結を受け入れる必要がある。その正当化根拠は、帰属者が当該団体の構成員として団体の規約等により拘束され、構成員間に団体的結合が認められることに求められる。他方、団体的結合のない有価証券の購入者は、同一の有価証券の購入者という共通の特徴を備えた人的集団という側面があっても、団体的な結合関係はないため、現実に訴訟追行を望まない有価証券の購入者(帰属者)は、当該証券を処分することにより、訴訟担当者との関係を断ち切り、担当者が訴訟追行をした結果としての判決の既判力の拡張から免れることを認める必要がある。 また、関連する判例の解説により(「入会団体による総有権確認請求権(最三小判平6・5・31)」潮見=道垣内編『民法判例百選Ⅰ(第9版)』(有斐閣))により、本研究の課題である、団体固有の当事者適格と団体構成員に対する判決効の拡張について考察を深めることができた。 、
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始当初、新型コロナ感染症の拡大による緊急事態宣言等により、授業その他の学務に関して本来ならば必要のない作業が増加し、余裕のない状況が続いていたが、令和4年度は、こうした状況にも慣れ、落ち着いて研究ができる機会が増えた。しかし、研究当初に予定していたフィールドワークについては、令和3年度の渡航制限等の状況から次年度の見通しを立てることができず、令和4年度になっても以前として渡航制限が続いていたことから、この面で成果を上げることについては消極的に判断せざるを得なかった。他方、文献調査については、比較的幅広く手がけることができたため、いくつもの新しい知見の獲得があったが、研究成果をまとめるには十分な時間を確保することができず、令和4年度についても、想定していたほどの成果を上げることはできなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度から継続している新型コロナ感染症の感染拡大にかかる渡航制限が、年度末になり、若干緩和された。しかし、直ちに渡航計画を立てることは困難であり、研究活動の中心を文献調査におくことになった。他方、オンライン会議システム等のオンライン・ツールの活用により、渡航せずに研究面での交流をする体制が徐々に整いつつある。本研究に特化した内容での交流はまだできていないが、引き続き新しいツールを用いて研究の進展を図りたい。
|