研究課題/領域番号 |
20K01417
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
神山 智美 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (00611617)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 野生動物 / 責任ある保護管理 / 縮減社会 / 野生動物保護管理学 / 公的助成 |
研究開始時の研究の概要 |
「鳥獣害の激化が顕在化してから20年余り。その間、鳥獣被害防止特措法の制定、鳥獣保護法鳥獣保護管理法への改正を経て、被害額を上回る膨大な対策費が投入されている。だが、改善の兆しはない。縮減社会を目前に、野生動物保護管理のためにどう法政策的に備えるべきか?」本研究は、この「問い」に解を与えるために、タイトルにある「責任ある保護管理」のための法的な仕組みと実効性ある公的資金プログラムの整備を研究対象としている。本研究の方法論上の主な特徴は、米国で発展している「野生動物保護管理学(Wildlife Management)」と「法政策学」との融合を図り、日本型の保護管理の法的仕組みを構築する点である。
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研究実績の概要 |
本研究は、野生動物の「保護管理」のための法制度として、主に北米との比較研究をすることを予定している。その内容は、①鳥獣被害防除のための管理捕獲の法的仕組み、②公的資金助成(補助金)の仕組み、③市街地に侵入する鳥獣、④感染症を媒介する鳥獣について、を4つの柱としていた。一昨年度は新型コロナウイルス感染症禍の影響も有り、東南アジアを含めて④を重点的に行った。昨年度は、米国の狩猟を含むレクリエーション法制に関連して①と③北米の外来種通報システム(公衆参加の仕組み)について研究した。加えて、米英の動物福祉の仕組みも研究した。 今年度は、これらに引き続き、主に①②③を実施できた。加えて、北米だけではなく、オーストラリア(豪州)およびニュージーランドという英米法圏についても比較検討できた点が大きな成果である。 ①米国、豪州およびニュージーランドにおける狩猟の仕組みと獣害管理の仕組みを比較検討した。特に、農業被害に対しての有害捕獲に関する制度は精緻に行った。さらに「わなについての国際協定(ロシアおよびヨーロッパ諸国との国際人道的わな猟基準協定(AIHTS)」の締約国に問われている動物福祉の観点、および「渡り鳥条約(渡り鳥協定等)」の締約国に求められつつある鉛弾による環境汚染防止については、各国の締約状況と国内執行法・州法(わな猟規制や鉛弾規制)の関わりについての調査・検討も行った。 ②公的助成制度(補助金)の仕組みを調査する中で、市場経済の中に位置づく野生動物保護管理制度やレクリエーションの仕組みを検討できた。 ③米国、豪州およびニュージーランドにおいても、市街地に侵入する鳥獣の管理については管理捕獲のみならず、啓発活動も続けられている。加えて、日本においても市街地にクマが出没した具体的な対処事例(裁判事例)における「狩猟免許」「銃砲所持許可」および「管理捕獲隊資格」等の関わりを整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年までの遅れを取り戻すべく励み、北米だけではなく、オーストラリア(豪州)およびニュージーランドという英米法圏についても比較検討できた点が大きい。 公的助成等の資金面についての調査が、文献調査からかなり進めることができたことも大きい。 また、英米圏を比較した理由は、各国の「わなについての国際協定(ロシアおよびヨーロッパ諸国との国際人道的わな猟基準協定(AIHTS)」、および「渡り鳥条約(渡り鳥協定等)」の締約状況と、それぞれの国の国内執行法・州法(わな猟規制や鉛弾規制)との関わりについての調査も行ったためであった。わなについての国際協定に加入しているカナダやカナダとロシアに挟まれているアラスカ州等も文献調査し、米国は同協定には加盟していないが、アラスカ州は輸出のためにカナダとロシアと同等の州法を有している点等は興味深く、一定の成果を得たと確信している。 さらに、狩猟の仕組みにとどまらず、豪州における野生動物保護管理領域における先住民との共生やカンガルー牧場の経営のあり方、ニュージーランドの養鹿業や狩猟を国の観光資源として活かしている施策等についても紹介し提言できたことが大きな成果と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終的な目標の一つは、日本の野生動物保護管理法への「より有益かつ実践的な提言」である。これまで比較法からの提言をしてきたため、日本法研究という形ではまとめられていない。それゆえ、研究テーマとしても「責任ある保護管理」としており、今後は、日本国内における法的仕組みとしてどのような形が望ましいのかという観点で、取りまとめ出来るよう努める所存である。
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