研究課題/領域番号 |
20K01419
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
傘谷 祐之 名古屋大学, 法学研究科, 特任講師 (70843704)
|
研究分担者 |
玉垣 正一郎 名古屋大学, 法学研究科, 学術研究員 (30814074)
レイン 幸代 名古屋大学, 法学研究科, 学術研究員 (80791003)
宮島 良子 名古屋経済大学, 経営学部, 准教授 (90534404)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 法学教育 / 日本語教育 / 留学生 / 開発途上国 / カンボジア |
研究開始時の研究の概要 |
現在、多数の留学生が日本で法を学ぼうとしている。ところが、法学教育の分野では、法学の基礎的な考え方を学習者が「自分で学び取る」ことが期待されている一方で、日本語教育の分野では、一般的な日本語教育から進んで大学・大学院での法を学ぶことを想定した専門的な日本語教育は、未成熟である。この問題を解決するために、日本語教育の専門家と法学の専門家との協働により、留学生が法学の基礎的な考え方を「自分で学び取る」ことを支援する新しい教育方法を開発する。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、開発途上国出身の留学生が、法学の基礎的な考え方、いわゆる「法的リテラシー」「リーガル・マインド」等と呼ばれるものを「自分で学び取る」ことを可能にする教育方法を開発することである。 第1年目(2020年度)には、日本とカンボジアそれぞれの国における法学教育について、文献調査・インタビュー調査等を行い、日本とカンボジアそれぞれの国の法学教育の現状と課題について知見を得た。第2年目(2021年度)には、カンボジアの学生が「論理的である」(あるいは「説得力がある」)と考える文章と日本で論理的だと考えられている文章とは異なるのではないか、という仮説を立て、その仮説を検証するため、カンボジアの学生を対象とする作文調査(構成の仕方、主張の根拠の示し方等)を実施する予定であった。しかし、新型コロナウイルスの感染状況が好転せず現地渡航が不可能であったため、断念した。代わって、カンボジアの中等教育の教科書(国語)の一部や、j高校卒業認定試験「論理的な作文」の採点基準等の資料を入手し、その一部を日本語に翻訳し、分析した。 第3年目(2022年)には、新型コロナウイルスの感染状況に改善が見られたため、9月に研究分担者(宮島)がカンボジアに渡航し、現地在住の研究分担者(レイン)とともに、作文調査を実施した。その結果、71名分のデータを収集することができた。収集したデータは、翻訳・タグづけをして分析中である。今のところ、カンボジアの教科書・指導書にある「構成」あるいは「型」にしたがって書かれていること、しかし、日本人から見ると「つながり」「根拠」が弱いように見え、また、冒頭や末尾にそれ以外の記述とは関係が無い(ように見える)提言が挿入される傾向があること、などが判明しつつある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の第2年目(2021年度)から第3年目(2022年度)にかけては、新型コロナウイルスの感染状況が悪化したことにより、研究の遂行に困難があった。予定では、(1)第1年目(2020年度)に指摘したカンボジアの法学教育の課題を「法的リテラシー」という観点からより明確化・具体化するとともに、(2)その課題を日本語での教育により克服する教育方法を検討する予定であった。しかし、感染対策のために、カンボジアの大学が閉鎖されたり、研究代表者・分担者らがカンボジアに渡航することが困難となったりしたため、(1)の核心となる仮説を検証するための作文調査が長期間にわたって実施できなかった。2022年9月に至ってようやく作文調査を実施することができ、その後の進捗は順調であるが、それ以前に生じた遅れを挽回するには至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度には、2022年度に収集した作文調査のデータを分析する。日本とカンボジアとの作文の「構成」「型」の違いを踏まえた上で、作文を書く際に指定された分量の中でバランスをどう取るか、意見とその根拠をどうつなげるか、作文の末尾によく見られる論理の飛躍と思われる部分をどう改善するか、等々を検討する。そして、カンボジア人の学生が、日本で評価される(日本人が「論理的である」と感じる)文章を書くための方法論を考案する。カンボジア人の学生が文章を書く際に、あるいは教員がそれを指導する際に、文章の「構成」「型」および内容を意識し、客観的に理解できるように、タグづけの訓練を取り入れることを考えている。以上の作業を通じて、今後の教材開発につながる方法論を提案し、その成果を共有する。最大の懸念事項であった作文調査を2022年度中に実施できたため、今後の作業は順調に進められるものと思われる。
|