研究課題/領域番号 |
20K01423
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
宗田 貴行 獨協大学, 法学部, 教授 (60368595)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 消費者団体訴訟 / 集団的被害回復 / 確約手続 / 返金命令 / 消費者被害回復 / 集団的消費者被害 |
研究開始時の研究の概要 |
多数の消費者に共通した財産的被害を生じさせる消費者の利益を侵害する行為に対し、被害者個人が提訴することには、費用・法的知識の欠如等の多くの限界がある。このため、我が国に消費者裁判手続特例法上の手続等の消費者団体訴訟制度が創設されている。しかし、それにもかかわらず、上記の行為による財産的被害はなくなっていない。 そこで、本研究は、先進国であるEU・ドイツにおける集団的消費者被害回復制度の内容とその運用を研究する。係る被害回復制度には、今日では、民事法によるものの他、行政法的手法もある。このため、これらを検討した上で、それを参考にして、我が国の集団的被害回復制度の改善を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は、EUにおいて多数の消費者に共通した財産的被害を生じさせる消費者の利益を侵害する行為に関し、被害者たる消費者個人からの提訴方法には多くの限界があるため導入されている民事法及び行政法上の集団的消費者被害回復制度を研究し、その制度における私法と公法の役割を明らかにし、それに基づいて我が国の同様の問題を検討する。 このため、本年度においては、第一に、本研究は、行政処分による集団的消費者被害回復について、競争法(日本の場合には独禁法)上の場合と、消費者法上の場合を検討する。EU、ドイツにおける制度を検討し、我が国の独禁法及び消費者法分野の行政処分による集団的消費者被害回復手法について、私的自治の原則との関係を押さえつつ、研究を行った。 第二に、本研究は、デジタルプラットフォーマーによる独禁法・消費者諸法違反事例におけるこれらの集団的消費者被害回復方法の役割を明らかにすることを目的とする。多数消費者被害の事例にも応用可能な独禁法上の確約手続について、2022年度に東京経済法研究会にて報告を行った。2023年度に、その成果を獨協法学120号(2023年)に公表する。 第三に、第一及び第二の研究を踏まえ、2022年度には、行政処分による消費者被害回復手法について、獨協大学の研究図書出版助成金を得て約400頁の単著『行政処分による消費者被害回復の理論―EUデジタルプラットフォーム規制の考察と我が国の課題』法律文化社(2023年)を出版した。 第四に、第二の研究を踏まえ、景品表示法への確約手続の導入について考察した論文「景品表示法上の行政措置の変遷と課題:課徴金制度の改善・確約手続の導入」現代消費者法58号(2023年)63-72頁を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
理由としては、まず、拙著『行政処分による消費者被害回復の理論―EUデジタルプラットフォーム規制の考察と我が国の課題』法律文化社(2023年)を公表することができたことがまず挙げられる。この出版においては、企画書提出段階・企画書採用後の編集者との打ち合わせを多数回行い、その段階での編集者からの助言によって、拙著の構成や目次の立て方等に工夫を施すことができ、内容の改善ができたといえる。 このような成果を得られた理由としては、第一に、本研究のテーマについて、ドイツにおいて滞在研究を行った際の研究成果が、公表済みのものも含め、多く存在したことが挙げられる。 第二に、本年度も、オンラインによる多くの各種研究会に積極的に参加し、デジタルプラットフォーム規制関連の最新の国内外の情報を得ることができたことが挙げられる。 第三に、EUにおけるデジタルプラットフォーム規制の立法や運用の展開が目覚ましく、それをインターネット上の資料やデータベース上の資料や上記オンラインでの研究会の際の資料及び助成金で購入した書籍等を駆使して調査することによって、第一の成果をアップデートしさらに充実させられたことが挙げられる。特に、EUにおいては、デジタルプラットフォーム規制として、デジタル市場法(DMA)及びデジタル・サービス法(DSA)が制定されるタイミングを見計らって出版することができたことが大きなものとなった。それによって、我が国の景品表示法への導入が政府において検討され、そしてまた、現時では第211回通常国会で審議中の確約手続についても考察することができたからである。この成果は、上記拙著の他に、その出版後の検討も踏まえ、論文「景品表示法上の行政措置の変遷と課題」現代消費者法58号(2023年)として公表できた。 これらに鑑みると、本研究課題は、当初の計画以上の進展しているということができる。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、次年度以降に公表するための研究成果がすでに多く見られているところである。 このようなことから、本研究課題を今後どのように推進すべきであるのかについては、以下のように考えられるところである。 第一に、上述した確約手続に関する事例研究、具体的には、アマゾンジャパン事件等についての検討結果を可及的速やかに大学紀要等の媒体において、公表することが挙げられる。これについては、獨協法学120号(2023年)に公表される予定となっている。 第二に、上記の拙著『行政処分による被害回復の法理――EUデジタルプラットフォーム規制の考察と我が国の課題――』法律文化社(2023年)と論文「景品表示法上の行政措置の変遷と課題」現代消費者法58号(2023年)公表後の確約手続の景品表示法への導入のための同法改正案の審議内容と改正された場合の改正内容の検討を行うことを予定している。 第三に、これらと並行して行わなければならないのが、消費者の集団的被害回復のための民事法上の制度の検討の継続である。これについては、上記の通り、2021年1月に単著『消費者団体訴訟の理論』信山社(2021年)を公表したが、その後、消費者庁で消費者裁判手続特例法の改正が検討され、2022年度通常国会において、同法の改正案が成立した。同法に対し上記の自著で述べた批判点の改善も含む同法案の審議及び制定法の内 容を踏まえて、その改正の評価や今後の課題についての検討を行う。このため、これについての論文をまとめ公表することが本研究課題の具体的な推進方策の重要な一つとして挙げられると考えられるところである。
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