研究課題/領域番号 |
20K01424
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
森本 直子 昭和女子大学, 全学共通教育センター, 准教授 (40350425)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 言語マイノリティ / 言語アクセス / 多言語対応 / グローバル化 / 情報コミュニケーション保障 / 言語支援 / インフォームドコンセント / 患者の権利 / 多様性 / 生命倫理 |
研究開始時の研究の概要 |
日本語の読み書きや会話による意思疎通に不自由な人々(言語マイノリティ)が医療を受ける際に保障されるべき患者の権利のあり方を明らかにする。第一に、医療におけるコミュニケーションの困難に係る古典的課題を現行法の検証から整理し、家族による代諾や本人による事前の指示といった手法を言語マイノリティの特性に照らして検証する。第二に、医療における言語マイノリティの取り扱いについて、患者の権利の観点から課題を抽出する。第三に、ヘルス・リテラシーや文化的側面に考慮した言語アクセス権としての医療通訳を検討し、多様な言語的文化的背景を持つ患者が増加する今後の日本において、あるべき患者の権利モデルを確立する。
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研究実績の概要 |
今年度の海外調査においては、米国ニューヨーク市及びボストン市における言語マイノリティ政策について、移民関連、医療・保健関連、防災・緊急事態関連の各担当部署を訪問し、そこでの言語支援の取り組みについてインタビュー調査を実施した。それぞれの部門におけるこれまでの取り組みについて知見を得ただけでなく、ボストン市とニューヨーク市の移民支援部門の担当者をつなぐことができ、また市の担当者から州の担当部署に紹介していただいたことで、今後の調査対象の拡大につながるネットワークを構築できた。また、昭和女子大学のボストンキャンパスである昭和ボストン保健室の看護師、Yale Law Schoolの大学院プログラム担当者に対して、外国人留学生及びその同伴家族の学内における医療支援体制についてインタビュー調査を行った。また、周辺領域の課題として、ニューヨーク市図書館のチャイナタウン分館において、中国語と日本語による子供向けプログラムを見学し、多文化共生と多言語支援の取り組みについて情報収集を行った。 出版に関しては、これまでに作成した日本の関連論文を統合の上、加筆し、新たに「患者の権利と医療通訳」と題して、吉田仁美編『グローバル時代の人権保障』の第6章として出版した。また、「予防接種と言語マイノリティ 新型コロナワクチンを中心に」において、日本における新型コロナワクチンの接種における言語マイノリティの取扱いを検証する論文を作成した。この他に、多文化共生につながる多様性尊重に関する研究成果として、新判例解説Watchに「性同一性障害特例法における性別変更のための生殖腺摘出要件の合憲性」と題して2023年10月25日大法廷判例の評釈を執筆した。さらに、『スタート憲法』第4版の分担執筆。『法学ダイアリー』第2版の編者・分担執筆者としてグローバル化を見据えた改訂を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍を経て、2023年度はようやく海外での調査が可能になり、行政機関を中心とする訪問調査が実現したものの、医療機関への訪問調査は依然として感染症対策の基準が厳格化したことにより、部外者・外国からの訪問について神経質になっており、訪問の調整がつかなかったため。また、円安と航空運賃・宿泊費の高騰により、渡航先での滞在期間が制限されることも先方との日程調整を難しくした。
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今後の研究の推進方策 |
各論的には、2023年夏季の訪米調査で構築できた新たなネットワークをもとに、2024年は州レベルの取り組みや、グローバルな展開に力を入れる日米の医療機関を中心とした訪問調査を実施したい。具体的にはニューヨーク州の取り組みについて前回の訪米で時間切れとなってしまったインタビュー調査を実現したい。また、フロリダ州ジャクソンビル市にあるMayo Clinicの国際部門担当者とのコンタクトがとれるようになったため、訪問調査を実施したい。また、公衆衛生分野での言語支援について、ワクチン接種に関連して母子保健領域にも研究対象を拡大したい。国内の医療機関の取り組みについても、感染症対応が落ち着いてきたため、当初の計画に従って実施したい。 総論的には、現在は障害者の権利を中心に議論されている情報・コミュニケーション保障の理論を言語マイノリティにも拡張する可能性を探りたい。
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