研究課題/領域番号 |
20K01428
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小澤 久仁男 日本大学, 法学部, 教授 (30584312)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 帝国裁判所 / 帝国宮廷顧問会議 / 社会的紛争の法現象化 / 臣民訴訟 / 警察事項 / ドイツ行政訴訟制度の歴史的展開 / 団体訴訟 / 原告適格 / ドイツ行政訴訟制度の歴史 / ベール=グナイスト論争 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ドイツにおける行政上の権利保護の歴史的展開を再検討・再検証することで、環境法上の団体訴訟論との連続性を考察することを目的とする。その際に、ベール=グナイスト論争において生じた「行政訴訟の目的を個人的権利保護とするのか、それとも客観的権利保護とするのか」といった伝統的な議論が、ドイツ環境団体訴訟論の展開の中で、どの程度継受され、また継受された上でどのように発展を遂げたのかを探っていく。そして、本研究によって、その後の環境法上の団体訴訟の導入が完全なパラダイム転換であったのかを解明していく。このような歴史的展開を踏まえることで、最終的に環境法上の団体訴訟に関する制度設計論に貢献したい。
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研究実績の概要 |
2022年度においては、本科研事業のテーマである「ベール=グナイスト論争」からドイツ環境団体訴訟を考察する手掛かりとして、ドイツ行政訴訟の歴史的展開に着目をして研究を行った。 具体的には、当該歴史的展開に着目する時期として、神聖ローマ帝国の時期であるとした上で、この時に併存して存在していた帝国カンマー裁判所(Reichskammergericht)と帝国宮廷顧問会議(Reichshofrat)という2つの最高裁判所を対象とした。そして、この2つの最高裁判所が設置された社会的状況、目的、裁判官の構成といった概要のほか、両最高裁判所の訴訟手続や利用状況についても研究した。これらの研究を通じて、両最高裁判所が第一審の裁判所となって管轄権が競合した場合、臣民はいずれの裁判所に訴訟を提起するのかについて選択権を有していたことに気付くことができた。他方で、上訴審の裁判所となる場合には、帝国レベルの手続などに限定されていたなど、第一審と比べ制約が存在しており、更に不上訴特権といった上訴を制限する制度も存在していた。けれども、領域内での上訴裁判所が整備され、そしてまたそこでは帝国法への適合が求められていたことから、臣民には領邦支配権に基づく措置に対して上訴の機会もある程度確保されていたことにも気付くことができた。また、今日の行政訴訟にあたる臣民訴訟および警察事項における原告適格についても研究を行った。とりわけ、警察事項においては、これに該当したとしても、既得権の主張の余地を探ることなどにより、訴訟の提起の余地を認めていたことが分かった。 これらの研究を通じて、2つの最高裁判所およびそこでの諸制度については、後のドイツの原告適格論や団体訴訟に直接的な影響を与えたものではないものの、後の制度設計に大きな影響を与えたものであることを解明し、これについての研究成果を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度においても、所属大学におけるオンライン授業の準備および対面授業の準備などに引き続き時間を費やすことになり、本研究に必要な時間を充てることができないこともあった。もっとも、そのような中で、研究実績の欄でも取り上げた通り、本研究遂行にとって関連性の深いテーマの研究成果を公表するに至った。また、本研究のテーマについても、研究成果の公表に向けて準備も開始をした。それゆえ、本科研事業については、所定の研究期間を延長することにした。したがって、現在までの進捗状況としては「やや遅れている」と評価を行うに至った。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度においては、2022年度研究を基礎として、本研究課題のテーマであるベール=グナイスト論争の文献収集およびその精読に努めることにする。その際には、原著およびその後の学説上の理解について、ドイツ語文献はもちろんのこと、日本語文献についても取扱いたいと考えている。 その上で、この議論が、後のドイツ環境法における団体訴訟制度の展開に、そもそも影響があったのかどうか、そして、影響があった場合にはどれほどの影響を与えたのかについて考察を進め、そして、その成果を公表できるようにしていきたいと考えている。また、本研究を更に発展できるように今後の研究についても検討をしていきたい。
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