研究課題/領域番号 |
20K01434
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
井関 涼子 同志社大学, 法学部, 教授 (30278460)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 商標法における公序良俗違反の不登録事由 / 商標ブローカーの問題 / 商標法の日英比較 / 特許権と公益の調整 / 商標法4条1項7号 / 公序良俗に反する商標登録 / 悪意の出願 / 公序良俗 / 日米比較 / 商標登録要件 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、商標登録の際に、公益に反する商標の登録を拒絶するという条項の解釈、適用について、日米のあり方を比較検討するものである。米国では、2017年、2019に連邦最高裁判決が、蔑視的、不道徳的、破廉恥な商標の登録を禁じる商標法の規定は表現の自由の保障に反し違憲であると判示した。一方、日本ではむしろ逆に、悪意の出願と呼ばれるケースについて、公益に反する商標登録を広く排除すべきであるという議論がある。本研究は、この問題を通して、「公益」概念の日米比較まで掘り下げて探究しようとするものであり、公益概念の相違が商標登録の可否につき異なる考え方を導いていることを分析する。
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研究実績の概要 |
悪意の商標登録出願について、2023年7月7日に「剽窃的な商標登録出願が公序良俗に反するとして登録が無効とされた事例〔zhiyun事 件〕」と題する商事法務知的財産判例研究会での報告をし、これに基づく判例評釈をL&T102号に寄稿して2024年1月に発行された。本件判決は、剽窃的な商標登録出願の中でも、いわゆる商標ブローカー(他人の先行使用商標を出願して、これにより金銭的利益を得ることを業とする者)による出願に基づく商標登録を、商標法4条1項7号の公序良俗違反として無効としたものであるところ、同号を適用した日本の裁判例を類型ごとに検討した上で、日本商標法が登録主義を採用している構造に鑑みれば、社会公共の利益や一般的道徳観念という同号の保護法益が害されている場合ではない、単なる私的紛争のケースについては同号を適用すべきではないが、商標ブローカーのケースにおいては、被害者は多く、公正な取引秩序を害する行為と言えるため、同号を適用すべきである旨を論じた。 2023年11月27日には、英国オックスフォード大学にて、「日本における悪意の商標登録出願」と題する講演を英語にて行った。ここでは、悪意の商標登録出願への対応につき、商標法の規定が異なり、法制度としてもコモンローに属し日本と異なる英国法と比較して論じた。日本では、不正目的出願を拒絶、無効とする4条1項19号の要件が厳しいため、かえって一般条項である7号が拡大し過ぎる問題があるが、英国では悪意の出願を規制する条文が多様な行為類型を含む形となっているという相違がある。しかし、いずれの国においても、様々な行為類型に対応するための柔軟性と予測可能性との両立について困難な課題があることを論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
商標法における公序良俗違反の不登録事由の研究について、日本法を中心として進めることができ、英国法との比較もした。しかし、本科研費での研究テーマである米国法との比較にまでは進めることができなかったのは、他の研究テーマについての研究により多忙であったためである。
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今後の研究の推進方策 |
米国法について研究を進め、日米比較を論じる。
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