研究課題/領域番号 |
20K01448
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
福井 秀樹 愛媛大学, 法文学部, 教授 (00304642)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 非実験的推定手法 / マッチング / 政策効果推定 / EBPM / モンテカルロ・シミュレーション / EBPM(証拠に基づく政策形成) / 非実験的統計的推定手法 / 自然実験 / 疑似自然実験 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、大規模観察データを利用可能な米日欧の航空政策を対象として、(1) 複数のマッチング手法による再標本抽出前後のデータ両方を用いて政策効果の因果推定を行う。その際、(2) 自然実験を活用し観察不可能な要因の影響を調整した事例での推定と、観察不可能な要因の影響は調整できない一般的な観察データを用いた事例での政策効果推定の両方を行い、結果を比較する。これにより、(3) 各種マッチング手法による一般的な観察データの均質化が、自然実験の無作為化によるバイアス除去にどの程度、近似できているのかを検証する。最後に、(4) EBPMにより効果的に応用可能な各種の非実験的手法の組み合わせを考察する。
|
研究実績の概要 |
2022年度は、観察データによる因果効果分析を行った。具体的には、米国航空宇宙局(NASA)と連邦航空局(FAA)がシャーロットダグラス国際空港(CLT)に導入した表面計測技術が、燃料とCO2の節約に与える影響を推定した。その際、差分の差分法、共変量バランス改善手法、固定効果モデルを用いた。さらに、比較ユニットを選択する際の研究者の裁量を最小化するデータ駆動型アプローチでデータセットを構築し、マッチングとパラメトリック回帰を組み合わせた二重のロバスト戦略を用いた。2015年11月から2019年11月までの米国の航空会社の日次パネルからの推計では、全フェーズにおいて単発タキシング率が75%と高い場合でも、1フライトあたり約12.241kg(95%信頼区間(CI) 19.948 - 4.358) の燃料と37.702kg(CI 61.441 - 13.422) のCO2を削減できるという示唆が得られた。同時に、この技術によるタキシングアウト時間の短縮は、時間の経過とともに減少するという懸念すべきパターンも明らかとなった。 同時に、共変量バランス改善手法による因果効果推定バイアス補正の有効性をモンテカルロ・シミュレーションにより検証する作業を継続し、改善を図っている。具体的には、生成させるデータ数を500から2500と増やし、検証対象とするマッチング等の方法も拡大することで、有限サンプルバイアスの若干の緩和を図り、マッチング推定値等をより幅広く検証している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学会報告はできているが、論文2編がいまだ査読過程にあるため。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度に行ったシミュレーションの改善を通じても、共変量バランスの改善をどの程度まで図れば推定値バイアスを最小化できるかについてはやはり明確な指針を得ることはできなかった。再び明らかになったのは、共変量バランス改善が推定値バイアス改善にもたらしうる効果の限界である。今回のシミュレーション分析でも、マッチング・重み付け手法にかかわらず、共変量バランスの改善から得られる因果効果の推定値バイアスの改善はおおむね微々たるものにとどまり、いずれのマッチング手法においても、共変量バランスの徹底的な改善を図ることは、因果効果の推定値バイアスの抑制という観点からはむしろ逆効果となった。また、シミュレーションの結果、適切な共変量を用いたOLSは、他の重み付けやマッチング方法と同様に選択バイアスを低減することが示唆された。この結果は、観察データを分析する際には、画一的な推定量を求めるのではなく、利用可能なデータの特性を十分に調査することによって、OLSやPSMを含むサンプルに適した非実験的な推定量を慎重に検討することが重要であることを示している。そこで、2022年度は引き続きシミュレーションによる検証を継続し、どのようなサンプルにどのような推定量が適切なのか、さらに検討を進める。 同時に、2022年度は実施できなかった観察データによる因果効果分析も試みる。例えば、複数空港地域内の特定空港の利用を制限するペリメーター規則がMAR内空港を利用する航空会社の輸送パフォーマンスに与えた影響等を、日米のデータも用いて推定する予定である。これらの観察データを用いた分析の際にも、比較ユニットを選択する際の研究者の裁量を最小化するデータ駆動型アプローチでデータセットを構築し、マッチングとパラメトリック回帰を組み合わせた二重のロバスト戦略を用いると同時に、PSM以外のマッチング手法の有効性も検証する。
|