研究課題/領域番号 |
20K01456
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
河野 勝 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70306489)
|
研究分担者 |
山崎 新 武蔵野大学, 法学部, 講師 (90570044)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 政治学 / アカウンタビリティ / サーベイ実験 / 消費税 / 税制改革 / 業績評価 / リーダーシップ / コロナ / 政治経済学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、2019年の消費増税時に実施したサーベイ実験データの分析を通して、政府に対する有権者の態度の変化を明らかにするとともに、 fiscal contractという古典的概念か今日においても税とアカウンタヒリティとの関係を適切に捉えうるかを批判的に検討する。租税制度が高度に複雑化した現代では、政治エリートは除外・留保措置を講じて意図的に税負担の増加や公共サービスの改善の程度を曖昧にできる。そうした不確実性により、税の使い方に対する有権者の監視や要求は弱まるのか。本研究は、現代民主主義の根幹に関わるこの重要な問題について、実証と理論の両面から独自で新しい学術的知見を提供することを目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究は、2019年の消費増税時に実施したサーベイ実験データを分析して、政府に対する有権者の態度の変化を明らかにし、fiscal contractという古典的概念が今日においても税とアカウンタビリティとの関係を適切に捉えうるかを検討することを目的でスタートした。研究代表者は、この実験の前に、同じく大きな税改革が行われたタイミングに合わせてフィリピンでもサーベイ実験を行ない、一昨年度はこのフィリピンの事例を分析した論文を査読付の国際誌で公刊した。その一方で、2020年からのコロナ禍という事態を受け、当初の消費増税との関連のみならず、政治におけるアカウンタビリティの問題全般に本研究の射程を広げて、特にコロナ禍という状況と関連して日本の政治家のリーダーシップおよびアカウンタビリティのあり方、さらにはコロナ状況での有権者の政治評価について研究を進めた。これらのテーマについて昨年度は論文4本を公刊し、そのうちの2本の論文は、特に日本のマスメディアが行なっている内閣支持率に関する調査の問題点を指摘する論文で、その内容は新聞社やテレビ局などメディア関係者が多く所属する「日本世論調査協会」でも報告した。今年度は、とりわけもともとのテーマであった消費増税関連の研究成果の発表につとめ、名古屋大学法学研究科と関西学院大学総合政策学部にて報告の機会を設けていただいた。また、American Political Science Association の年次総会にも参加して、様々な研究者たちから本研究へのコメントをいただいた。さらに、コロナ禍における日本のワクチン接種の進捗の地域的ばらつきが政権党である自民党及び公明党の国会議員数の多寡に影響されたことを示す論文を査読付の国際誌で公刊できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
日本で行なった消費増税前後のサーベイ実験の分析結果は、プレリミナリーな形で『中央公論』 134(2) 166 - 174 (2020年1月)で発表した。この分析を精緻に進め、先行研究を十全に把握した上で学術論文として刊行していくことが本研究の当初の目的であったが、上記に示したように、コロナ禍という特異な事態に対応して、消費増税との関連のみならず、政治におけるアカウンタビリティの問題全般に本研究の射程を広げて、日本の政治家のリーダーシップおよび有権者の評価に関しても研究を進めた。初年度(一昨年度)には、日本に先立ってフィリピンで行なったサーベイ実験データを分析した論文を査読付き国際ジャーナルに掲載することができたほか、コロナ関連及び政治リーダーへの評価についての論文3本と論説リポート1本を公刊した。昨年度も、アカウンタビリティ及び業績評価に関する論文4本を公刊した。そして、今年度もインパクトファクターの高い国際ジャーナルに、コロナ禍におけるワクチン接種の地域差に与党現職政治家たちが及ぼした影響を実証する論文1本を公刊することができた。オンラインでの開催も含め、研究会や学会には各年度最低2回は参加して、他の研究者から本プロジェクトにコメントをもらうことができた。特に今年度は、もともとのテーマであった消費増税関連の研究成果の発表につとめた。以上、コロナ禍という国難に立ち向かう上で、政治学の立場から学術的示唆をタイムリーに発信することができてきたと考え、そのような理由から 当初計画以上に研究業績を積み重ねることができたと評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定では、今年度が本研究の最終年度にあたるが、名古屋大学の法学研究科や関西学院大学で成果発表の機会をいただいた研究会、さらにはアメリカ政治学会などの場で得られたコメントは、非常に有益なものであり、それらを十全に踏まえると、さらにもう一段、研究を精緻化することが可能ではないかと考えている。また、今年度には、時事通信社を通じて、2019年の消費増税の前後での全国規模世論調査の月次データを購入したが、このデータを用いることで、すでに研究代表者の手元にある同時点でのサーベイ実験のデータと比較しながら、増税が有権者の態度に及ぼす効果をよりさまざまな角度から明らかにしていきたい、と考えている。
|