研究課題/領域番号 |
20K01460
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
松本 充豊 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (00335415)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | エコノミック・ステイトクラフト / 恵台政策 / 中国の影響力 / 台湾の若者 / クライアンテリズム / 習近平 / 台湾 / 中台関係 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、中国の習近平政権による「恵台政策」の事例をもとに、比較政治学の視点から台湾に対する利益誘導型の影響力行使の効果を理論的・実証的に分析し、中国による経済的手段を用いた影響力行使の可能性と限界を明らかにする。恵台政策を通じた中国の台湾に対する影響力のメカニズムを、中国と台湾にまたがって形成されたクライアンテリズムと捉え、それがいかに機能するのかを分析することによって中国の影響力行使の効果を検証する。習政権の恵台政策という個別事例の研究から、中国の諸外国に対する利益誘導型の影響力行使に関する研究の発展に資する知見を導き出し、中国の影響力をめぐる比較研究への理論的貢献を目指す。
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研究実績の概要 |
本年度の研究実施計画では、同期間中に中国で習近平政権2期目終了という節目を迎えることに鑑み、習政権の恵台政策を総括すること、および2024年1月の台湾の総統選挙の結果を踏まえた、その効果の検証を予定していた。しかし、当初計画の大幅な変更と進捗の遅れから、引き続き台湾の若者に対する中国での就業・起業支援策の考察に取り組み、習政権の実践を分析した。具体的には、中国国内の各地で設立された「海峡両岸青年就業創業基地」(創業基地)の事例をもとに、台湾の若者の中国での就業・起業支援策を「利益供与型」のエコノミック・ステイトクラフトと捉えて、それを通じた中国による影響力行使のメカニズムをクライアンテリズムの視点から分析した。特に政策実施過程に内在する要因が効果的な影響力行使を妨げた可能性を検討した。 分析の結果、以下のことが明らかにされた。第1に、創業基地をめぐる支援策では実施過程で代理人問題が発生し、それが中国による影響力行使の効果を抑制する一因となったと考えられる。第2に、習政権は利益誘導の舞台を中国に移したことで、影響力行使のメカニズムは、胡政権期の中台間にまたがる「両岸クライアンテリズム」から、中国国内でのクライアンテリズムに変わった。それにより、恵台政策は台湾社会内部の矛盾から切り離されたが、逆に中国の国内政治に埋め込まれることになった。中国の若者の就職問題が深刻化する中では、台湾の若者への支援策は中国社会に新たな矛盾を生み出す可能性がある。また、習近平の福建時代の経験と習政権の実践との関連性も見出された。台湾の総統選挙での恵台政策の効果の検証は課題として残った。 研究成果の意義として、習政権の実践について、本来的に「対外政策」であるはずの恵台政策が中国社会の新たな矛盾の契機となる可能性、および習近平の福建時代の経験に視野に入れた理解の必要性を指摘したことがあげられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題の初年度から、新型コロナウイルスの感染拡大が収束せず、現地への渡航と国内での移動や研究施設の利用が大幅に制約される事態が続いた。そのため、台湾での現地調査は困難となり、現地での文献調査やインタビュー調査が実施できなかった。本年度は感染状況が終息に向かい始めたことで、ようやく現地調査を再開することができ、国内での調査活動も相応に進めることができた。研究活動にも一定の進捗が見られたが、前年度までの活動の進捗の遅れから、本年度の研究活動も必ずしも実施計画どおりには遂行できず、依然として遅れが取り戻せていない状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は本年度(2023年度)が最終年度であったが、補助事業の期間延長を申請し承認された。ついては、2024年には国内での文献調査と、休暇を利用した台湾での現地調査を予定している。これまでの研究実施計画の遅れに鑑み、その適宜変更も視野に入れながら、文献の購入やインターネットを活用した文献調査を中心とし、調査・分析には可能な部分から柔軟に取り組んでいく所存である。現地への渡航の際には、インタビュー調査を実施できる条件が整えば、その段階で関係者への意向確認を進めて実現を目指したい。
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