研究課題/領域番号 |
20K01482
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
福田 宏 成城大学, 法学部, 准教授 (60312336)
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研究分担者 |
姉川 雄大 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (00554304)
河合 信晴 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (20720428)
菅原 祥 京都産業大学, 現代社会学部, 准教授 (80739409)
門間 卓也 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (90868291)
加藤 久子 大和大学, 社会学部, 教授 (10646285)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 東欧 / 社会主義 / 中東欧 / 権威主義 / 東ドイツ / チェコスロヴァキア / ハンガリー / ポーランド / 新自由主義 / チェコ / スロヴァキア / 民主主義 / 中・東欧 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、社会主義期の旧東欧諸国を事例として権威主義体制の強靱性を明らかにしようとするものである。従来の政治学の議論では、全ての国や地域は民主化されるべきであり、実際においても、その方向に向かっているという暗黙の了解が存在した。ところが、2010年代半ば頃より、民主主義の「後退」や権威主義体制の「しぶとさ」が盛んに議論されるようになってきている(例えば、モンク『民主主義を救え!』2019)。その点において、東欧の権威主義体制は今こそ参照すべき歴史的経験と言える。本研究では、史資料の公開やオーラルヒストリーによって急速に進みつつある歴史学上の成果を活かしつつ、当時における体制の内実に迫りたい。
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研究実績の概要 |
本研究は、社会主義期の(旧)東欧諸国を事例として権威主義体制の強靱性を明らかにしようとするものである。ただし、基盤(C)のプロジェクトを総勢6名のチームで取り組む形としているため、メンバーそれぞれにとっての最低限の研究基盤を確保するというのが本科研の主旨である。 とはいえ、本科研の期間とコロナ禍が完全に重なる状況となってしまったため、2020~21年度の2年間については、研究の根幹を成す現地調査を実施することができなかった。2022年度にはようやく現地調査ができるようになったものの、所属大学の渡航制限や航空運賃の高騰などがハードルとなり、全員が十分な期間、必要な調査ができたというわけではない。そのため、現時点においては、個々のメンバーができることを粛々と進めるという状況である。 研究代表者については、2022年度において、本研究の中心的成果となるアイデアを国際政治学会で報告し、その一部を「東欧のロック音楽と民主主義」と題する論考にすることができた(「岩波歴史講座」23巻所収、2023年6月刊行予定)。また、2022年4月に行われた東欧史研究会小シンポジウム「社会主義的人間を求めて:第二次世界大戦後の東欧における社会主義をめぐる諸相」では、分担者の加藤氏が報告者として、河合氏がコメンテータとして登壇し、その際の報告内容を『東欧史研究』にて活字化している。菅原氏は、ポーランドのディストピア映画に関する論考を『スラヴ学論集』に発表したほか、団地表象の比較研究に関する岡山大学のシンポジウムにおいて、同国のコメディ・ドラマに関する報告を行っている。なお、姉川氏と門間氏については、当該年度は他科研における業績の発表を優先せざるを得なかったが、本科研に関する研究も着々と進めて頂いている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既に述べたとおり、2020~21年度の2年間、コロナ禍により現地調査が全くできなかったため、かなり早い段階より、本研究の研究期間を当初予定である2020~22年度の3年間から20~23年度の4年間に延長することを想定して活動してきた。 言うまでもなく、コロナ禍によって研究活動そのものが完全に停滞したというわけではなく、過去の調査で得られた史資料や知見等という「貯金」を使いながら、本研究のチームは何とか成果を出し続けてきた。2022年度に入ってようやく現地調査ができるようになったものの、航空運賃の高騰により、基盤Cを6人で分担するという予算規模では、全員が満足する形で実地調査を行うことは依然として難しいというのが現状である。ともあれ、本研究が対象とする地域については、戦争によって現地に行けなくなったというわけではないため、その「利点」は「利点」として最大限活用しつつ、また、戦争そのものが現在の世界にもたらしている影響を考慮しながら、できる限りの研究をすべきだと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍により期間を一年延長した結果、2023年が本研究にとっての最終年度となる。偶然ながら、コロナ禍で延期となっていたオーストリアの研究者フィリップ・テーア氏(Philipp Ther)の訪日が2023年7月となったため、彼による国際ワークショップの開催(7月22日)を本研究における一つのクライマックスと位置づける予定である。 また、本研究の一環として進めている邦訳(既述のテーア氏による旧東欧諸国に関する著作 Die neue Ordnung auf dem alten Kontinent: Eine Geschichte des neoliberalen Europa, 2016, revised ver. 2020)を今年度中に公刊する予定である。本書は、旧東欧諸国における新自由主義化が1980年代頃より既に始まっていたことを指摘し、後期社会主義期からポスト冷戦期(現在)までを連続したものとして捉えたものである。その点では、後期社会主義における権威主義体制の強靱姓を明らかにしようとする本研究のテーマと少しずれているのだが、この時代については、権威主義から民主主義への移行だけでなく、ソ連型国家社会主義から新自由主義への移行とみる視点も必要不可欠であり、本研究を進めるうえ大きな助けとなった。 本研究は、6人による基盤Cのプロジェクトであるため、「華々しい」成果を予定しているわけではなく、個々の研究を着実に進めることを最優先にしてきたが、上記の本の翻訳は、研究期間終了後に本研究をさらに進めていく上で、非常に重要な道標になるものと考えている。
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